孤独なもふもふ姫、溺愛される。

遊虎りん

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第八章

☆5

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広々とした浴槽。ルミテルの父、アルテミスはお風呂でゆっくり寛ぐのが大好きで、邸は質素な造りであるが浴室は豪華だった。
サウナや水風呂、泡風呂、露天風呂等々。
ちょっとした健康ランドのようである。
メイド達や執事、邸で働いている者なら誰でも利用できる。
男風呂、女風呂に分かれているので安心だ。

浴室は檜の造りで温かみがある。ほんのりとした明るすぎない照明。居心地がよい。

薔薇の香りのする入浴剤を入れる。ほんのりとピンク色になり、赤い入浴剤が溶けて薔薇の花びらのようにとけていく。

「あかい、はなびらみたい!きれいね」

ティアはルミテルに頭や背中をシャンプーしてもらい、ティアもルミテルの背中を洗った。
ルミテルが座れるように浴槽の中に腰掛ける場所がある。そこにティアがルミテルを抱っこして座らせて、一緒に湯船に浸かる。

「ええ、きれいですわね」

ティアの言葉にルミテルは微笑んで頷く。シャンプーして濡れたティアの毛並みはぺったんこで面白い。お風呂から出たらドライヤーで念入りに乾かそう、でも熱いのは嫌いかしら。やはり、自然乾燥がいいのかしら、とティアを見てルミテルはのんびりと考える。
湯船に浸かると心地がよい。気持ちがゆっくりできる。

「…ティア、ルミテルのこえすき。やわらかい、なでなでしてもらっているみたい」

「わたくしも、ティアちゃんの声好きですわ。ヒヨコが餌を催促しているときみたいに必死にピヨピヨ囀ずってる感じで可愛らしいと思いますわ」

「ピヨピヨ?」

「ええ。ピヨピヨですわ」

猫と兎が顔を見合わせてくすくす、と笑い合う。鳥の子供の鳴き真似を二人でするとまたくすくすと笑う。

「たのしい!」

「楽しいですわね」

ティアは瞳を細める。声が明るく弾んでいる。レミィやエメラルドと話すのも楽しいが、同じ年頃の女の子同士だと楽しさは格別だ。
ルミテルも同じように思っていて大きく頷いて同意する。

「ティア、レミィとあうまで、ずっとひとりだった。さっきね、ひとりになったら、まえより、ずーっとさみしいの。ティア、よわくなった」

「いいえ、それは違いますわ。ずっと強いままなんて疲れてしまいます。強い時と弱い時があるのが当たり前です。だって、わたくし達は女の子ですのよ。泣くのも気分転換ですわ」

「ティア、ルミテルのかんがえ、かた、すき」

自分にはなかった考え方だ。ティアの中に新しい風が吹いたような気がした。

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