孤独なもふもふ姫、溺愛される。

遊虎りん

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第九章

☆2

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「…つーかお前は、姉上の何なんだよ。一体どーいう関係だ!」

俺の姉上なのに、まともにまだ姉弟として会話もしてないのに、狡い!姉上は俺の!的な子供じみた嫉妬心と独占欲が滲んだ声で単刀直入な言葉でレミィに切り込む。
うーうー!と無意識に威嚇の唸りが喉から響く。

音もなく塔の窓から下へと降り立ちレミィはロゼの前に立つ。
漆黒の髪と瞳。
涼しげな目元で氷の化身の如く血の気が通っていなような整っている顔立ち。
人間離れしている雰囲気。
こいつ普通の人間ではない、とロゼの本能がそう告げる。警戒する。

「…俺は今までゴミの中にいた。臭い者汚ない者が当たり前、俺自身もそうだから気にも止めていなかった。だが、ティアと出会ってこの世の中で真っ白で無垢で綺麗な者が在ると、感動した。愛しいと思った」

レミィの声は淡々とした低い声だが、ロゼはその顔を見てつり目ぎみな瞳を丸くしてレミィを凝視した。
何だか、レミィの顔が赤く見える。
気のせいではなく赤い。
しかも、内容が姉に対する告白のようなものでロゼも思わずムズムズする。芝生があったらゴロゴロ寝転がり草に身体を擦り付けたいくらいだ。


「……お前さ顔、すっげぇ赤いけど?」

ロゼが指摘するとレミィは視線を外して背中を向けた。耳まで赤い。感情が読めない表情をしている男だと、ロゼはレミィに対してそう思っていたが、今は分かる。
こいつは、照れている。

「……自分でも驚いている」

ぽつりと呟いた困惑が露なレミィの言葉を聞いてロゼは思わず声を出して笑った。肩を小刻みにぷるぷると震わせる。
城の中や外でも、自分に本音を言ってくれる者はそういない。
腹黒い連中ばかりでロゼは『大人』に不信感を持っていた。
だが、レミィは自分で『臭く汚い』と認めている。そして、姉に好意を持っている。何だか親近感が沸いた。

「レミィも姉上が好きなんだな」

レミィの事をお前呼びから名前で呼ぶ。

「ああ、好きだ」

照れているが、それを隠さず好意を認めて肯定する言葉が返ってきた。

それを聞いてロゼは安心した。
孤独だと思っていた、大切な人に温かな眼差しを向ける人が自分だけではないということに。

レミィはティアを探しに歩き始める。
にぃ、とロゼは口元に笑みを滲ませティアの横に並ぶと背中をぱし、と叩いた。

「早く見つけようぜ。俺だって姉上を可愛がりたいんだ。もうレミィに姉上を独り占めさせねぇよ」

「シスコン、か」

「ああ!」

ふ、とレミィは微笑んだ。ロゼはシスコンを認めて笑った。

兎に角ティアを探さないと。
二人は歩き始めた。
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