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第2話。
しおりを挟む前世の記憶がある。僕は猫だった。生まれて間もなく母猫とはぐれた。何匹かの兄弟がいたと思うけど、目が開く前には見当たらなかった。
毛皮で覆われていた獣の身体だったけど、いつも寒さに震えていた。
ざらついた大きなものに包み込まれた。
あったたかい。
うっすらと目を開けるとシワだらけの顔で真っ白な毛が頭に集中している人間の男だった。
「なつみ、俺の家に帰ろうな」
涙がまじった声だ。低く掠れた声。
そしてたばこ臭いジャンパーの匂い。
寂しい気持ちが流れてくる。
命の鼓動が弱くて、頼りない。
顔を引っ掻いて逃げるのは簡単だ。でも、それができない。
僕は一週間、なつみの代わりになった。
なつみと僕を呼ぶ男は一週間たった朝。
新聞を取りに行こうと立ち上がり、そして倒れた。
そして、そのまま冷たくなって動かなくなった。
僕はその横にまるまって目を閉ざした。
しんしんと白い雪が降っている。
窓は雪が積もって光を遮っている。
ぼんやりとした暗い部屋。
なつみ、と頭を撫でる男の手はもう動かない。
人間だったら、この可哀想な男の頭を撫でてあげることができたのに。
それが前世の記憶だ。
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