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「かお兄様、ただいま!」
琉美は台所に立ち鍋のなかをお玉でぐるぐる、と円を描くようにしてかき混ぜている兄の芳の足元に抱きついた。
芳は怜悧な顔立ちをしている。縁なしの眼鏡をかけて、スーツ姿である。食べることに執着しない人間味がない、ロボットのようだと陰で囁かれていた。
料理をするような外見ではない。台所に立っていることですら異様な光景だが、より一層違和感を働かせる要因があった。
フリルのレースがふんだんに使われている可愛らしいエプロンを着けていることだ。
そのエプロンは母親の形見であり、エプロンがあるのに新しいエプロンを買う必要はないだろう、という考えで女装趣味の片鱗を見せているわけではない。
もちろん、この姿で外に出るわけがなく千比絽と琉美だけが知る姿である。
「お帰りなさい、琉美さん。もうすぐカレーライスが完成するから手を洗って食事の準備をしていただけませんか?」
「カレーうどんじゃないの?」
見るからに妹がしょぼんと顔を曇らせる。
「断然します。各ご家庭で初日にカレーうどんを提供することはまずありません。2日目がセオリー。私は普通を愛している。楽な方に私は逃げます」
一日目カレーを作り、2日目カレーうどんにすれば何を食べようかなと悩む必要がないし、うどんを作り少量のカレーがあれば買い物に出かける必要がない。
「うどんのストックあったんだ」
千比絽は洗面所で手を洗ってから兄と妹がいる台所にひょっこりと顔を出した。
「千比絽さん、後で私とじゃんけんです」
芳の言葉で千比絽は理解する。冷蔵庫の中にうどんのストックは2つしかないということを。
「負けないよ」
「のぞむところです」
別に千比絽はお使いに行くのは嫌ではないが、兄との勝負には全力で勝ちに行く。兄はそんな弟には手加減をしない。そんな兄二人に見向きもせず、妹は自分の分のカレーを皿によそい黙々と食べていた。
それが美魅城家兄妹の日常だった。
琉美は台所に立ち鍋のなかをお玉でぐるぐる、と円を描くようにしてかき混ぜている兄の芳の足元に抱きついた。
芳は怜悧な顔立ちをしている。縁なしの眼鏡をかけて、スーツ姿である。食べることに執着しない人間味がない、ロボットのようだと陰で囁かれていた。
料理をするような外見ではない。台所に立っていることですら異様な光景だが、より一層違和感を働かせる要因があった。
フリルのレースがふんだんに使われている可愛らしいエプロンを着けていることだ。
そのエプロンは母親の形見であり、エプロンがあるのに新しいエプロンを買う必要はないだろう、という考えで女装趣味の片鱗を見せているわけではない。
もちろん、この姿で外に出るわけがなく千比絽と琉美だけが知る姿である。
「お帰りなさい、琉美さん。もうすぐカレーライスが完成するから手を洗って食事の準備をしていただけませんか?」
「カレーうどんじゃないの?」
見るからに妹がしょぼんと顔を曇らせる。
「断然します。各ご家庭で初日にカレーうどんを提供することはまずありません。2日目がセオリー。私は普通を愛している。楽な方に私は逃げます」
一日目カレーを作り、2日目カレーうどんにすれば何を食べようかなと悩む必要がないし、うどんを作り少量のカレーがあれば買い物に出かける必要がない。
「うどんのストックあったんだ」
千比絽は洗面所で手を洗ってから兄と妹がいる台所にひょっこりと顔を出した。
「千比絽さん、後で私とじゃんけんです」
芳の言葉で千比絽は理解する。冷蔵庫の中にうどんのストックは2つしかないということを。
「負けないよ」
「のぞむところです」
別に千比絽はお使いに行くのは嫌ではないが、兄との勝負には全力で勝ちに行く。兄はそんな弟には手加減をしない。そんな兄二人に見向きもせず、妹は自分の分のカレーを皿によそい黙々と食べていた。
それが美魅城家兄妹の日常だった。
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