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(早く母さんのところに帰ろう。薬草は駄目だったけど、母さんの側にいて安心させてあげよう)
キリトは母親が待つ巣穴へ戻ろうと急いだ。息を切らして全力疾走する。
「ただいま!」
大木の根本を掘った穴へと身をく潜らせて横たわる母親の元へと近寄るが、ぴたりと足を止めた。
息子が帰ってきたのにぴくりとも動かない。嫌な予感がする。
心臓が早鐘打つ。
「ごめん。心細かったよね……もう、心配かけさせないからさ。怒ってるの?ごめんって。こっちを向いてよ、母さん」
くうん、と鼻を鳴らすとキリトは母親に身をすり寄せる。
いつも怒っていても甘えながら謝ると最後は仕方ない子だね、とため息を吐いて毛を舐めて許してくれる。
大丈夫。今日は疲れて寝ているだけ。もうすぐ目を開けてくれる。
ころり、と顔がこちらを向いた。キリトは母親の顔を嬉しそうに見たが、その瞳は濁っていて何もうつしてはいなかった。
キリトは後退り首を横に振った。
母親の死が信じられなかった。
まさか、一人寂しく死なせるなんて思ってもいなかった。
暗い巣穴で誰のぬくもりを感じず孤独でさぞや、心細く何度も息子の名前を呼んだであろう。母親の最後を思うと胸が苦しい。息が出来ない。キリトは巣穴を飛び出した。
キリトは母親が待つ巣穴へ戻ろうと急いだ。息を切らして全力疾走する。
「ただいま!」
大木の根本を掘った穴へと身をく潜らせて横たわる母親の元へと近寄るが、ぴたりと足を止めた。
息子が帰ってきたのにぴくりとも動かない。嫌な予感がする。
心臓が早鐘打つ。
「ごめん。心細かったよね……もう、心配かけさせないからさ。怒ってるの?ごめんって。こっちを向いてよ、母さん」
くうん、と鼻を鳴らすとキリトは母親に身をすり寄せる。
いつも怒っていても甘えながら謝ると最後は仕方ない子だね、とため息を吐いて毛を舐めて許してくれる。
大丈夫。今日は疲れて寝ているだけ。もうすぐ目を開けてくれる。
ころり、と顔がこちらを向いた。キリトは母親の顔を嬉しそうに見たが、その瞳は濁っていて何もうつしてはいなかった。
キリトは後退り首を横に振った。
母親の死が信じられなかった。
まさか、一人寂しく死なせるなんて思ってもいなかった。
暗い巣穴で誰のぬくもりを感じず孤独でさぞや、心細く何度も息子の名前を呼んだであろう。母親の最後を思うと胸が苦しい。息が出来ない。キリトは巣穴を飛び出した。
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