3人play。

遊虎りん

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21 ランジュ①

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***

数分の遅れが人生を大きく左右したって思わない。
ただ、母親の腹から出る順番がジュランの後だったからこの国の王にはなれない、なんて悲観してジュランを恨んで生きるのなんて馬鹿らしい。
僕は人生楽して暮らせる身分だ。
精々、僕はジュランの傍らで他人事のように楽しむだけ。

だけど、手首に結ばれる青い紐がたまに重く感じる事があった。
城のものはまず僕の顔を見ないで手首の紐を見る。
それから僕の顔を見る。
それが苛立つ。
見分けなくてもいい、僕をまっすぐ見ろ。
間違ってもいい、許してやるから。
僕を見てくれ。

僕らしくもない事を大声で叫びたくなる時があった。

それは僕が今より少し幼かった頃の話だ。

「可哀想なランジュ様、もう少し早く生まれたなら貴方が次の王様でしたのに」

もう、名前を忘れたが何処ぞのお姫様だったと思う。僕の気を引こうとしてか同情するような顔でそんな事を言ってきた。
何故、僕が王様になれないから可哀想なんだろう。
僕が王様になりたかったなら、ジュランを殺せばいいだけの話だ。

心の中が冷たくなる。

「ありがとう、君だけだよ。僕の気持ちを分かってくれるのは」

僕は微笑んだ。心にもないことは笑って話せた。
そうすると決まって相手は頬を赤く染めて恥じらうようにして微笑む。
身を寄せて甘えてくる。二人っきりの部屋。
僕の雄は早熟で酷く飢えていたから、獲物を捕獲して定期的に食っていた。

女はこう思う。どちらの子供を生んでも、ジュランとの子供だと言い張ればそうなる。
顔は同じだから、血は同じだから。

「わたくし、ランジュ様のお嫁さんになりたいですわ」

こいつも僕を見ていない。僕がジュランの代わりをやってるときは、ジュランの嫁になりたいと甘えていた。
どいつもこいつも僕よりも王様が欲しいらしい。
次の王様に取り入って、自分の欲望を満たしたいらしい。

誰も僕を見てくれない。

大人になろうと自分で自分に言い聞かせていた事はは、その時の幼い僕にはまだ少しだけ早かった。溜まっていたモノがある時爆発してしまった。

僕は誰にも何も言わずに城を飛び出た。
雨が降っていたけど、全身ずぶ濡れになったけど、どうでも良かった。
僕を心配してくれる人は何処にもいない。
大声を出して泣いても雨がそれを掻き消してくれた。
服に雨が染み込んで重くなる。荒れ狂った川が目の前にあった。

死ぬつもりはなかった。
だけど、暗く渦巻く川の流れを見ているうちにそこへと誘われて僕は身を投げ出していた。

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