うまれたよ、ぴよぴよ。

遊虎りん

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第一章 ナッツ

第四羽、ぴー、と。

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「第一回、家族会議だ。議題はお前の名前を何にするか。堅苦しいの好きだろ?お前のパパがこーゆうの、好きだし」

敷きっぱなしの布団の上にあぐらをかいて座る。だらしない、もう少し大きくなったら毎日布団を畳んでしまおう、と心の中で誓う。今、何か気になる事があった。家族会議のテーマは、名前を決めるなのは分かる。なんだっけ、まだ、ひよこだから言葉を理解するのが遅いのだ。歯痒い。とても歯痒い。歯はまだ生えてないが。

「ちなみにアタシの名前はミリルだよ。ママって呼ばれるの嫌じゃないけど、ミリルって呼んでよ。名前、呼んでくれる人いないし」

あ、そうだ。父親の事が気になったのだ。なんで、側に父親がいないのだろう。ミリルがこんなに寂しそうなのに。

「みぃる!」

そんな寂しそうな顔するな、ひよこがいるだろう。と、名前を呼ぶとありがと、と笑うミリル。ミリルが笑ったので安心してひよこも笑った。

「…で、お前の名前なんだけどさ。アタシ、考えるの苦手なんだよね」

ビールの摘まみのピーナッツを指で挟むの転がし始める。

名前の希望は特にないが、ぴよ助とかぴよことか安直な名前は遠慮したい。ひよこはほ乳類ではないが、神、なのでさまざまな生き物の影響を受けている。故に、親指しゃぶりは仕方ないのだ。

「よし、ナッツにしよう!」

ピー…


「……なちゅ?」

決まり、決まり!と指で摘まんでいたピーナッツを食べると肩の荷が降りたと布団に寝転ぶミリル。抗議しようとするが、ナッツおいで、と微笑んで笑うミリルを見ると何だかその響きはしっくり来た。

ひよこの名前は、ナッツになった。

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