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第一章
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赤い衣をまとったいち花の表情は凛としている。日陰にひっそりと咲く一輪の美しく儚い花ではない。赤く存在を主張する、燃えるように命を輝かせる火のような花だ。
薄く紅をひいた、いち花は実際の年齢より上に見える。
癖のない真っ直ぐな黒髪を高く一つに束ねている。
「……行きましょう。貴方のこころが乱れないうちに…わたしは、未熟者ですが、参を苦しめたくないです。」
いち花は参に視線を向ける。いつも不安に揺れている瞳は一つに定まり、決意が見て取れた。
無駄な心配をして声をかけてしまったと参は喉を鳴らした。
大柄な鬼の身体は人間が住む家だと狭い。
もとは人間だった感覚はもうなく、記憶も真っ赤な血でぬられて読み取れない。
それは昔、いち花と出会う前は苛立ちの原因の一つであったが今は気にならない。むしろ、忘れてしまった方がいいと参は思っている。
すべてを覚えている必要はないし、いつまでも過去にとらわれて苦しんでいる必要もない。
「いち花様のご配慮、感謝致します。」
父親を亡くして悲しんでいる暇を自らに与えず背筋を伸ばすいち花の背中を見て参は目を細めた。
指を握られた瞬間、繋がった小さな命が頼もしい。
薄く紅をひいた、いち花は実際の年齢より上に見える。
癖のない真っ直ぐな黒髪を高く一つに束ねている。
「……行きましょう。貴方のこころが乱れないうちに…わたしは、未熟者ですが、参を苦しめたくないです。」
いち花は参に視線を向ける。いつも不安に揺れている瞳は一つに定まり、決意が見て取れた。
無駄な心配をして声をかけてしまったと参は喉を鳴らした。
大柄な鬼の身体は人間が住む家だと狭い。
もとは人間だった感覚はもうなく、記憶も真っ赤な血でぬられて読み取れない。
それは昔、いち花と出会う前は苛立ちの原因の一つであったが今は気にならない。むしろ、忘れてしまった方がいいと参は思っている。
すべてを覚えている必要はないし、いつまでも過去にとらわれて苦しんでいる必要もない。
「いち花様のご配慮、感謝致します。」
父親を亡くして悲しんでいる暇を自らに与えず背筋を伸ばすいち花の背中を見て参は目を細めた。
指を握られた瞬間、繋がった小さな命が頼もしい。
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