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予章
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しおりを挟む「お前はポンコツだろう。」
眉を寄せ真顔でリュウは断言する。
ザイは軽く肩を竦めた。
「はいはい、私はポンコツですよ。しかし、残念です。もう少し早くここを見つけられたならリュウ様の女体の姿を拝められたのに」
ザイは心底残念、という顔を作りわざとらしくため息を洩らした。
そのザイの表情を見ていら、と苛立ちを隠さず鋭く舌打ちをした。
「…お前の減らず口はどうすれば止められるんだ。上唇と下唇を隙間なく密着させるか、舌を引っこ抜くか。顎を粉砕させるか」
リュウは眉間に深い皺を刻んで低く唸った。物騒な事を羅列して本気で考え込む。
腕の中のリンの体温が高い、と感じてザイに対しての不愉快を露にしていた表情が一変して我が子を心配する親の顔になった。
先程まで元気にザイを嫌っていたリンだったが、今はぐったりと全身の力を抜かし額にうっすらと汗を浮かべ苦しそうに胸を上下させ熱く濡れた呼吸を繰り返している。
今まで母親と二人きりで穏やかな時を過ごしていたリンにとっては感情を掻き乱すザイは身体や心を蝕む毒と同じだ。
リンはザイを受け入れる事を拒絶している。
「おや、知恵熱ですかね。誰かを嫌ったのは初めてでしょう?」
何処か嬉しそうな声の調子でザイは近寄ってリンの真っ赤になり魘されている顔を覗き込む。そして、林檎のように赤くなった頬を指でつっついて遊んでいる。嫌がりリンは眉に皺を刻む。その不機嫌を露にした顔はリュウにそっくりだ。
「やめろ。俺の愛しいリンで遊ぶな殺すぞ」
殺気が皆切る視線をザイに向けるが、ザイは機嫌よさそうな様子を崩さない。だが、素直に指を引っ込めた。
「すみません。私は可愛い子を見ると虐めたくなるんです」
「ああ、知っている。俺も可愛かったからお前によく虐められたな」
ふん、と鼻で笑うリュウ。
「リュウ様は私の初恋の相手でしたからね。あのくそ女……いえ、アイナ様が横からしゃしゃり出て貴方を番にしなかったら、私は貴方を無理矢理犯していましたよ」
「そうか、お前はアイナのお陰で命拾いしたんだな」
二人の間に一際不穏な空気が流れる。
「んっ、……おかあ、さん」
可愛らしく夢の中で母を呼ぶ声。
さくらんぼのような瑞々しい唇を僅かに開けて、すーすーと眠る。親指を吸い意識を手放して眠る顔は幼子のようだ。
「リンはいくつになりましたか?」
「…13歳になった」
「それにしても幼いですね。人間でも魔物でも、そのくらいの歳ならもう少し大人です。」
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