6 / 25
予章
4
しおりを挟む
「俺の愛しい娘からその穢れた手を離せ、ザイ」
不意に男のモノとも女のモノとも取れる不思議な魅力を持った声が割り込んできた。
と、同時に魂に馴染んだ温かさに包まれて銀色の獣は安堵の涙で丸い瞳を濡らした。
身が張り裂けそうな緊張が瞬時に解かれる。
「お母さん!」
喜びの声を露にして抱きつくと中性的な美しい顔立ちは少女と面差しが似ている青年は柔らかく微笑んだ。
銀色の髪から仄かに少女と同じ花の香りがする。
涙を浮かべる娘の頭を優しく撫でて慈しむ。
「ザイは性格が悪く底意地と根性が腐っている男だ。お前が俺以外のやつと会うのは仕方がないが、最初があれだとは…。さぞかし怖かっただろう、リン。可哀想に」
娘に向ける柔らかな表情とは裏腹にザイを見えないナイフで八つ裂きにしても構わないとばかりに辛辣な容赦の欠片もない言葉を投げつける。
「怖くないけど、あいつ嫌い!」
ふんす、と鼻息荒くリンはザイを指差し力強く言い切った。
「親子で私を嫌っているんですね。ありがとうございます。久しぶりの幼馴染みにリュウ様は相変わらず私に冷たい」
ザイは地面に片膝を付け恭しくリュウへと向けて頭を垂れた。
そして、顔をあげると飄々とした口調で言うと自分に向ける二人の鋭い嫌悪の視線を笑いながら受ける。
人間の形に戻ったリンはリュウにひしっと抱きついた。背中に腕を回して隙間なく密着している。
母親の抱きついている安堵感に満たされていると、初めて見て声を聞いて数分で大嫌いになったザイから意外な事実を告げられて驚いた。
幼馴染み、ということはザイとリュウは知り合い。そして、様つけされるほどの高い身分なのだ。
身分がどうとかリンは興味ないし、どうでもよかった。ただ、ザイと大好きな母親が幼馴染みであることが堪らなく嫌だ。
「お母さんとあいつが幼なじみとかいや!幼なじみやめて!」
初めての我儘。そして、癇癪。それほどリンは自分の意見を通したかった。
「俺もあいつと幼馴染み辞めたい。出来ることなら一生他人がいい。腐れ縁をたちきりたい」
リュウは眉を下げて人生においてザイと幼馴染みであることが唯一の汚点である、という表情で娘の言葉に寄り添った。
「はいはい、生まれてきてすみません。私は悲しくて涙で今夜は枕を濡らしそうです」
ザイは目元に指を添えて泣き真似をする。
それをリュウが冷たい瞳でザイを見る。
「お前にも目から水を流せる機能が備わっていたのか」
「機能とか。私をポンコツの機械かなんかみたいに言わないでくれますか。」
不意に男のモノとも女のモノとも取れる不思議な魅力を持った声が割り込んできた。
と、同時に魂に馴染んだ温かさに包まれて銀色の獣は安堵の涙で丸い瞳を濡らした。
身が張り裂けそうな緊張が瞬時に解かれる。
「お母さん!」
喜びの声を露にして抱きつくと中性的な美しい顔立ちは少女と面差しが似ている青年は柔らかく微笑んだ。
銀色の髪から仄かに少女と同じ花の香りがする。
涙を浮かべる娘の頭を優しく撫でて慈しむ。
「ザイは性格が悪く底意地と根性が腐っている男だ。お前が俺以外のやつと会うのは仕方がないが、最初があれだとは…。さぞかし怖かっただろう、リン。可哀想に」
娘に向ける柔らかな表情とは裏腹にザイを見えないナイフで八つ裂きにしても構わないとばかりに辛辣な容赦の欠片もない言葉を投げつける。
「怖くないけど、あいつ嫌い!」
ふんす、と鼻息荒くリンはザイを指差し力強く言い切った。
「親子で私を嫌っているんですね。ありがとうございます。久しぶりの幼馴染みにリュウ様は相変わらず私に冷たい」
ザイは地面に片膝を付け恭しくリュウへと向けて頭を垂れた。
そして、顔をあげると飄々とした口調で言うと自分に向ける二人の鋭い嫌悪の視線を笑いながら受ける。
人間の形に戻ったリンはリュウにひしっと抱きついた。背中に腕を回して隙間なく密着している。
母親の抱きついている安堵感に満たされていると、初めて見て声を聞いて数分で大嫌いになったザイから意外な事実を告げられて驚いた。
幼馴染み、ということはザイとリュウは知り合い。そして、様つけされるほどの高い身分なのだ。
身分がどうとかリンは興味ないし、どうでもよかった。ただ、ザイと大好きな母親が幼馴染みであることが堪らなく嫌だ。
「お母さんとあいつが幼なじみとかいや!幼なじみやめて!」
初めての我儘。そして、癇癪。それほどリンは自分の意見を通したかった。
「俺もあいつと幼馴染み辞めたい。出来ることなら一生他人がいい。腐れ縁をたちきりたい」
リュウは眉を下げて人生においてザイと幼馴染みであることが唯一の汚点である、という表情で娘の言葉に寄り添った。
「はいはい、生まれてきてすみません。私は悲しくて涙で今夜は枕を濡らしそうです」
ザイは目元に指を添えて泣き真似をする。
それをリュウが冷たい瞳でザイを見る。
「お前にも目から水を流せる機能が備わっていたのか」
「機能とか。私をポンコツの機械かなんかみたいに言わないでくれますか。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる