Ωの魔王の溺愛姫。

遊虎りん

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第一章

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目の前に湖が広がっている。透き通るほどの美しく透明な水が溢れ月を水面にうつしていた。
気がつけば辺りは真っ暗闇になっていた。
太陽は沈んで空は表情をかえて夜の顔をしている。
昼に食べたハンバーグは胃の中で消化されて跡形もない。リンは空腹を感じてた。
身も心も空っぽでリンは疲労を感じてその場に立ち尽くす。
寂しさに肩を小刻みに震わせた。
湖の水面にうつる自分の獣の姿は耳は垂れて世の中に捨てられたみすぼらしい乞食のようだ。

初めて自分から話しかけ、絆を深めようとしていたバルトの顔が脳裏に浮かぶ。
明るい声と溌剌とした少年だった。
もう、きっと彼は別の仕事仲間を見つけているだろう。彼は普通の人間なのだから。
普通が羨ましい。
リンの銀色の瞳や髪の色は印象に残る。普通ならその色彩を所持することはない。
それは特別である、印。それを知る者は一握りである。

寂しさが一層強まる。
リンはぶんぶんと勢いよく首を横に振ると湖に身を投げた。

どぼん、と大きな水音が辺りに響き渡った。

水のなかでリンは目を開けた。
ゆらゆらと水面にうつった月は黄金に輝き揺れている。
ぼんやりとそれを眺める。

冷たい水の感触が心地よい。
このまま深い眠りにつくのもいいかもしれない。

(私を生んだのは魔王……人間の、父親はどこにいったんだろう)

様々な事を教えてくれる脳内で響く声はリンが知りたいことは教えてくれない。
リンの問いかけには一度も答えたことがなかっま。
断片的で突拍子となく、意味を繋げることが難しい。
ふいに与えられる知識はパズルのひとかけらのようで、意味が分かる一枚の絵になるのは途方もない時間を必要だろう。
全てを知っているようでリンは無知だった。

身体に付着した魔蛙の唾液が流れてて消えていく。強くなる、と豪語して命を奪ったのにこの世界から逃げるように死ぬのはあまりにも卑怯だ。
ずきり、と胸が痛んだ。

強くなりたい。

死を夢見て、死を望み、死んで楽になるために生まれてきたんじゃない。沸々と腹の底から怒りに似た感情が吹き出てくる。

でも、寂しくて辛い。自分を育ててくれた老婆は眠るように天国へと旅立っていった。
あの村に戻っても誰もいない。

ひとりぼっちだ。

それを自覚した瞬間、怒りに似たエネルギーのある感情は萎んで消える。

鼻がつん、と痛み、涙が浮かぶ。
夜の匂いはリンの心の鎧を全て脱ぎ捨てさせようとする。
弱い自分をさらけ出して、そんな自分に嫌悪して新たなはらはらと涙を流す。
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