22 / 25
第一章
11
しおりを挟むザイの屋敷に身を寄せるようになってから数日がたった。
初めは狩り人になるためあの静寂の村を飛び出たのに今はザイの飼い猫だ。
情けない。
そろそろここを出よう。
リンは退屈な生活に飽きていた。ザイが猫可愛がりをするので何の苦労もない。何も考えずにゃーにゃーと可愛らしく鳴いていれば餌を貰える。
しかし、それはリンの迷子の気持ちは埋められない。
自分は何者なのか。
どうやって生まれたのか。
親はどういう人物なのか知りたい。
(私には何もない。だから、時々すごく死にたくなるんだ。どうでもよくなるんだ。何かを手に入れる。とりあえず、私を捨てた親を倒す)
美しい銀色の毛並みはザイの手によって丁寧にブラッシングされている。
色とりどりの女達に言い寄られている男が飼い猫である自分の世話を甲斐甲斐しくするのはリンにとって少し気分が良いものだった。
猫として生まれたのなら、幸せな日々を送れたであろう。
猫目線ならザイはいいご主人様だ。
しかし、リンは猫ではない。
(私は人間だ。人間だから)
ここ数日間はザイがやりたいことをさせた。
猫として立派に可愛がられてやった。
もういいだろう
ザイも猫を可愛がるの飽きたのか、昨日の夜は他の女のところへと行った。
リンを置いて、女を抱きに行ったのだ。
リンは置いてきぼりされてすごく心細い気持ちになった。
生まれて初めて目を開いたときには両親が消えていたのが、1人にされるのが人一倍寂しく悲しくさせる。
昼食をたっぷり食べてからリンは屋敷を飛び出た。人目がない場所で久しぶりに人の形をとる。視線が高くなり、五感が鈍る。魔物の身体は身体能力に長けているが人間の姿だと、どんなに優れていても魔物の時と比べると劣る。
ここは、魔界か。
リンが住んでいた村と随分と違う。活気があり、機械という無機質な動くものがあった。
数年で爆発的に発達した。
飢餓で苦しんでいたが、人間と協定を結び空腹を満たせるだけの食糧が手に入り元々優れた能力を持ってた魔物は暮らしを豊かにするものを発明するようになったのだ。
「あら、美しい銀の髪ね」
声をかけられてリンは振り向いた。
黒い髪の女が立っていた。
「あなたは人間かしら?観光できたのならここは少々治安が悪いわ。可愛らしいお嬢さんが1人で歩くのは危険よ」
ザイの屋敷でたくさんの女性を見ていたが、この
女性は随分と綺麗だと思った。
「観光じゃない。魔王を探しているの」
「え、魔王様を?昔はあの城に住んでいたけれど今はいないわ」
女性は細く美しい指を城へと指差して言った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる