Ωの魔王の溺愛姫。

遊虎りん

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第一章

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ザイの屋敷に身を寄せるようになってから数日がたった。
初めは狩り人になるためあの静寂の村を飛び出たのに今はザイの飼い猫だ。
情けない。

そろそろここを出よう。

リンは退屈な生活に飽きていた。ザイが猫可愛がりをするので何の苦労もない。何も考えずにゃーにゃーと可愛らしく鳴いていれば餌を貰える。
しかし、それはリンの迷子の気持ちは埋められない。

自分は何者なのか。
どうやって生まれたのか。
親はどういう人物なのか知りたい。

(私には何もない。だから、時々すごく死にたくなるんだ。どうでもよくなるんだ。何かを手に入れる。とりあえず、私を捨てた親を倒す)

美しい銀色の毛並みはザイの手によって丁寧にブラッシングされている。
色とりどりの女達に言い寄られている男が飼い猫である自分の世話を甲斐甲斐しくするのはリンにとって少し気分が良いものだった。
猫として生まれたのなら、幸せな日々を送れたであろう。
猫目線ならザイはいいご主人様だ。
しかし、リンは猫ではない。

(私は人間だ。人間だから)

ここ数日間はザイがやりたいことをさせた。
猫として立派に可愛がられてやった。
もういいだろう
ザイも猫を可愛がるの飽きたのか、昨日の夜は他の女のところへと行った。
リンを置いて、女を抱きに行ったのだ。
リンは置いてきぼりされてすごく心細い気持ちになった。
生まれて初めて目を開いたときには両親が消えていたのが、1人にされるのが人一倍寂しく悲しくさせる。

昼食をたっぷり食べてからリンは屋敷を飛び出た。人目がない場所で久しぶりに人の形をとる。視線が高くなり、五感が鈍る。魔物の身体は身体能力に長けているが人間の姿だと、どんなに優れていても魔物の時と比べると劣る。

ここは、魔界か。

リンが住んでいた村と随分と違う。活気があり、機械という無機質な動くものがあった。
数年で爆発的に発達した。
飢餓で苦しんでいたが、人間と協定を結び空腹を満たせるだけの食糧が手に入り元々優れた能力を持ってた魔物は暮らしを豊かにするものを発明するようになったのだ。

「あら、美しい銀の髪ね」

声をかけられてリンは振り向いた。
黒い髪の女が立っていた。

「あなたは人間かしら?観光できたのならここは少々治安が悪いわ。可愛らしいお嬢さんが1人で歩くのは危険よ」

ザイの屋敷でたくさんの女性を見ていたが、この
女性は随分と綺麗だと思った。

「観光じゃない。魔王を探しているの」

「え、魔王様を?昔はあの城に住んでいたけれど今はいないわ」

女性は細く美しい指を城へと指差して言った。
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