君の言葉を聞かせて

こうめちゃづけ

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カゾクノコト

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「そういえば、桜庭さ…。あっ、いや、違くて、結貴さん。……すみません。」


きのこと柚子のパスタを頬張りながら、彼女が口を開く。

先程まで美味しい!と感想を口にしてくれていたのに、改まって口を開いたので、なにか話したいことがあったのだろう。

そういえば、僕自身も忘れかけていた。外では結貴零太…そうだったじゃないか。


「いやいや、いいんですよ。そんなに人も多くないですし、それに…」


ここは奴らのホームじゃないし。

そう言おうと思ったが、少しでも彼女を危険な目に合わせたくないので黙っておくことにした。


「…すみません。」


僕の沈黙に怒っているか、あるいは困っているとでも思ったのか、申し訳なさそうにする彼女に
別に大丈夫だ。とだけ伝えると、彼女は少しだけほっとしたような表情を浮かべ、会話を再開した。


「えっと、前に自己紹介した時に、お兄さんのことを仰っていたと思うんですけど…。
その、うちの大学、さく…じゃなくて、その苗字の先生が二人いるもので…どっちなのかなと。」


ああ、そういえば兄貴が「珍しく同じ苗字の人がいた」とか言ってたっけ。

「あー、そうでしたね。嶺の方ですよ。僕の零太ってのも兄貴からとったんです。」


すると彼女はぱあっと顔を輝かせて、


「そうだったんですか…!嶺准教授の方なら私のゼミの先生です…!」


…マジでか。


「え、思葉さん考古学科なんですか?…なんか意外。」


「え?そうですか…?昔から好きなんです。歴史って。なんか小説みたいじゃないですか。」

…まあ、確かに…?僕は歴史…というか社会科は兄と違って人並みだったからよく分からないけど。

「うーん、分からなくはないですけど。思葉さんは歴史のどんなところが好きなんですか?」


「えーっと、流れがあるところですかね。漫画とか、アニメとか、小説とかと一緒で。

だいたい連ドラとかって、週一じゃないですか。それが週2とか週3とかになって…おまけに小学…5年生くらいから、大学でも学べば大学4年まで。

えーと、12年間…?とか、ずっと続いてくれてるイメージですかね。

大学院まで行けばさらに続くと思いますけど。」

なるほどそうか…それなら歴史はストーリーだっていうのも納得が行くかもしれない。

歴史のドラマとかやってるもんな。

「でも、そしたら史学科とかでも良かったじゃないですか。松橋大学は確か史学科も有名でしょう?」


「あー、それはそうなんですけど、やってる内容が違って。学校にもよるんですけどうちの学校は、
考古学はどちらかと言うと遺品とかを見て学ぶんです。史学科は昔の文献…。

分かりやすくいうと、歴史という一つのアニメーションを見たとして、考古学科はそのグッズとかキャラクタービジュアルとか、そういうのを見るんです。

対して、史学科になると原作の小説を読むんですよね。

だから私はなんか違うなって。」


なるほど。歴史のことになると饒舌だ。

でも不思議と嫌ではなかった。自分から聞いたことだから当たり前といえば当たり前かもしれないけど、
何より今まであまり自分のことを話してくれなかった彼女が、好きなものについてこんなに語ってくれている。

彼女のことをまた一つ知ることが出来たようで、嬉しかった。
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