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第二部
第25話 召喚、黒い魔法陣
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――ギルド『我々の中に裏切り者ガイル』
この奇妙な名前のギルドの扉をノックし、訪ねて来る者がいた。
「はーい」
と、ドアを開き、応対するリノ。
そこには、シスター風の娘が立っていた。
「あの……、こちらのギルドで、よろしいでしょうか?」
「えっと、何でしょうか?」
「あっ、すいません。ウィグラフさんの紹介で、相談に乗ってもらえるかと……」
その名前を知らないわけではない。
とりあえず、リノは彼女に席を勧め、紅茶をだした。
間もなく食堂に五人が揃い、それぞれ名乗った。
「はい、あの、私、僧侶の『ソフィア』という者です」
「それで、話というのは? ソフィアさん」
クロウは、いやに乗り気だ。
「私、その……、回復魔法が苦手なのです……。それで、旅の途中で知り合ったウィグラフさんにここを紹介されて……」
「なるほど、あのおっさんの紹介か」
「何かいけなかったのでしょうか……?」
「いや、あのおっさんの全身キノコ姿思い出してね……」
「そうなのですか? あの方は旅の途中で顔が赤紫に腫れていたので……」
「何食ったんだろ……」
「じゃあさ、試しにここのクロにかけてみなよ、回復魔法」
「はい、それでは、失礼して……。癒しの光……」
〝ボンッ!〟
突然、クロウの右肩に小さな爆発が起こった。
椅子から転げ落ちるクロウ。彼の耳はキーンと鳴っていた……。
「なんだ? 今の……?」
彼は驚いてソフィアをじっと見つめた。
「あっ、すいません。私、回復魔法を使ったつもりでも、何故かそこが爆発してしまうのです……」
五人はそれを聞くと、驚いてソフィアを見る。
(回復魔法で爆発?)
(どうしてそうなる……)
(どんな魔法使ってるのかしら……?)
(回復魔法……でしたよね?)
(苦手どころではないな……)
それぞれ異なった反応を示すも、彼女の悩みが奥深いことが分かった。
「えっと、これ、どうしたらいいんだろう?」
クロウはリノに聞いた。
「私はそういう経験無いので……」
リノも困っているようだ。
「そうですよね、すいません。私にもどうしていいか分からなくて……」
ソフィアはうつむいてしまった。
「俺は魔法使えないしな……」
「あたしも……」
「……そうね、一つアイディアがあるわ」
フェイが何か思いついたようだ。
五人は一斉にフェイの顔を見つめる。
「回復魔法が弱点のモンスターとかで練習するのよ」
「それでいけるのか……?」
「ウチも分からないけど、練習すれば良くなるかな? と思って」
「えっ!? そうなのですか? 私、いつも爆発させてしまうので、練習は……」
「じゃあさ、やってみようか」
「そうですね、練習すればうまくなるかもしれませんし」
「毎日の鍛錬は大事だぞ」
「どこで練習しようか?」
「ウチがいいとこ知ってるよ」
フェイがそう言い、一行は彼女の案内でその場所へ向かった。
一行は目的の場所、森の中の洋館へ着いた。だがこの場所は見覚えがある……。
そこにある洋館は森の奥深い所にあり、外からの訪問者を拒んでいるように見えた。
建物は二階建てで、外観には蔦が絡んでおり、とても人が住んでいるとは思えない。
やはり見たことがあるというか、以前来たことがある場所だ。
「あれ、ここって……」
「昔壊した洋館?」
「そうみたいですね……」
「これは……、ちょっと、怖そうなのだが……」
「ここだわ。ここに幽霊がいっぱい出るから、それを回復魔法で倒すのよ!」
「幽霊!?」
ヒナが怯んでしまう。
「分かりました、ここの幽霊で練習ですね」
ソフィアはそう言って、心に決意した。
「ソフィアは前に出ないでね、あたしらが幽霊追い回すから、回復魔法かけてみて」
「そうだな、前方は俺達で守ろう」
「……」
ヒナは尻込みしている。
「よしじゃあ行こう!」
フェイはそう言ってヒナを引っ張りつつ、六人は洋館の中に入って行った。
洋館の正面の扉を開けて、中へ入って行く一行。
その中は吹き抜けの広間になっており、奥には二階への階段が二つ見える。
広間の左右に扉があり、以前来た時と同じ間取りのようだ。
「それじゃソフィっち、天井のシャンデリアを落としてみて、あそこにいるはずよ」
フェイはそう言って、天井を指差した。
「はい、やってみます」
ソフィアはそう言って、回復魔法をかける。
「癒しの光」
〝ボンッ!〟
天井のシャンデリアで爆発がおこり、シャンデリアが落下してきた。
〝ガシャーン!〟と大きな音を立てて広間の床に落ちる。
「ひぃっ」
ヒナは怯えた声を上げるも、戦いが始まる。
シャンデリアの上には幽霊が三匹いて、こちらを睨んでくる。
「癒しの光」
再びソフィアの回復魔法で幽霊を一匹爆破した。
残りの二匹の幽霊がこちらへ向かって来る。
クロウは名剣『フルティン』を振り回し、幽霊たちを追い払おうとした。
ヒナはしゃがんで目を閉じ耳を塞いで震えている。
三度、四度とソフィアの回復魔法で幽霊を爆破し、広間に静けさが戻った。
「ソフィっち、どう?」
フェイが聞いた。
「どうかと言われましても……」
ソフィアはまだ手ごたえを感じていないようだ。
「まだ三匹だし、次行こう」
エリーが催促した。
「ヒナさん、大丈夫ですか?」
「う……、うむ……」
ヒナはやはり幽霊が苦手どころか、顔が真っ青になってしまった。
「ヒナの顔色が悪いな。次から事前に説明しよう」
クロウはそう言って、ヒナを気遣って進む事にした。
クロウはヒナに説明するように進んで行く。
「次は、こっちの扉を開けると、窓から黒い犬が飛び出してくる」
そう言って、広間の左の扉を開け、廊下を進む。
やはりここも同じで、窓ガラスを割って黒い犬が飛び込んで来た。
その二匹もソフィアの回復魔法で倒す。
「次は、包丁を持った人形が襲ってくる」
そう言って扉を開けると、包丁を持った人形が襲ってきた。
そしてそれもソフィアの回復魔法で倒してしまう。
どうやらヒナとソフィアに少し余裕が出てきたようだ。
広間に戻り、入り口の右側の扉を開け、そちら側の幽霊も倒した。
一階の幽霊を倒し終わり、次は二階へと足を進める。
一行は二階へ登り、階段の左手の扉の前に立つ。
「ここは……、首の無い自分だっけ?」
「そうだね、あの悪趣味な奴」
「そうね、あれは結局何だったのかしら?」
「六人で入ったら、敵も六人になるのでしょうか?」
「ううっ……、聞いてるだけでも怖いな……」
「はい、私もがんばります」
六人はそう話し、その部屋の扉を開けた。
以前のように、壁には絵画や装飾された剣が飾られ、ベッドやソファーもある。
そしてもちろん、部屋の中央には赤い水たまりがあった。
「剣が襲ってくるぞ!」
クロウはそう叫んで、皆に注意を促した。
やはり、壁に掛かっていた六本の剣が襲ってきた。
事前に分かっていれば怖くはない。あっさりと撃ち落とす。
そして彼らは、部屋の中央の赤い水たまりの方へ目を向ける。
そこにはやはり、六体分の彼らと同じ格好の首無し死体があった。
何度見ても気持ちのいいものではない。が、
「あの死体、床から浮かび上がってくるのが見えました」
どうやらリノは床から目を離さず、見張っていたようだ。
「へぇ~、そういう仕掛けだったのか……」
「でも分かっていても襲われるような……」
仕掛けが分かっていてもどうにかなるものでは無かった。
六人は六体の首なし死体に襲われ、戦い始める。
……数分の戦いの後、ソフィアの回復魔法とヒナに倒されてしまった。
「済まない……、怖くて思うように手加減できなかった……」
「気になさらないで下さい、私は皆さんに手伝ってもらえて感謝してます」
ソフィアがヒナを気遣って言った。
そして次の場所、階段の右手にある扉だ。
ここは以前、死神みたいな影によって四人の首と胴が入れ替えられた所だ。
「ここは、どうしよう……?」
「ここに六人で入ったら、六人分入れ替わるのかしら?」
「そうですね、でもここの先へ行かないと……」
「よし、ここは俺一人に任せてくれ」
クロウはカッコつけてそう言った。
「大丈夫なのか?」
エリーが心配して言った。
「一人で入れば、首と胴が入れ替わることも無いはずだ」
「そうかもしれませんが……」
リノも心配してそう言ったが、クロウは自信ありそうな顔で言う。
「大丈夫だ、この『白い烏』の力、見ていてもらおうか!」
そう言って、クロウは勇敢にも一人で扉を開け、中に入って行った。
その数秒後……、
「うわっ!?」
クロウの悲鳴が聞こえた。急いで扉を開ける五人。
そこにいる者は、脚の部分に腕があり、腕の部分に脚があり、股間にクロウの顔がある、そんな珍妙な生き物だった……。
〝ブホッ〟
フェイが思わず吹き出し、一瞬アヘ顔を見せて顔を隠し、笑いをこらえうずくまる。
他の四人は唖然として立っていた……。
「これはちょっと……」
「どうしましょう……?」
「なんと……」
「大変なことに……」
「あのさ、タスケテ……」
クロウの股間の顔が喋った。
さらに肩を震わせて笑いをこらえるフェイ。
「これはちょっとかわいそうな……。でもとにかく先へ進むしかないね……」
エリーと四人と一匹は、ここで立ち止まっても仕方ないので、先へ進むことにした。
次の小部屋。以前と同じようにピアノがあり、女性の幽霊が演奏を始めた……♪。
「この曲は……ヒゲダンスか?」
フェイは顔を隠して笑っている。
「聞いたことある気がしますね」
「踊り出しそうな曲だな」
「何かの挑戦したくなりますよね」
「手で歩くの大変なんだけど……」
クロウは両腕でひょこひょこ歩く。
その姿を見て、さらに笑いのツボにはまってしまうフェイ。
「とにかく、地下へ向かおう」
エリーと四人と一匹は、隠し扉を開け、地下へ降りて行く。
地下の部屋も以前と同じだった。
部屋の中央に魔法陣があり、その周りの燭台がロウソクの火で部屋を照らしている。
その魔法陣の上に、ゆっくりと死神の影が浮かび上がってきた。
「こいつの鎌は本物だぞ!」
エリーはそう皆に注意をし、戦闘が始まる。
ヒナは怯えつつも刀で鎌を払い、エリーが短剣で斬りつける。
ソフィアは回復魔法で攻撃し、リノは補助魔法を全員にかけた。
クロウは珍妙な姿でぴょんぴょん跳ね回り、フェイは顔を隠して肩を震わせる。
そうしているうちに一行は、死神を祓うことに成功したようだ。
しかし死神を倒したものの、クロウの姿は元に戻らない。
「前回はどうやって元に戻ったんだっけ?」
フェイはまだ笑いをこらえている。
「クロさんが『雷神剣』を暴走させて、館ごと壊してましたね」
「建物ごと壊すのか?」
「そのようなことが出来るのでしょうか?」
「今は『雷神剣』持ってないんだよな~」
クロウが股間の顔から言った。
「とりあえず前回みたいに、一階の広間に戻ってみるか」
エリーはそう言って、皆を連れて一回の広間へと戻って行った。
「ここに何か手がかりがあればいいんだけど……」
エリーはそう言って、五人と一匹で広間を調べ始めた。
そこでクロウが絨毯に手を引っかけて転んでしまう。
「あっ! これ!」
クロウが転んだついでに何か見つけたようだ。
彼は広間の床に敷いてある絨毯の角をめくり、そこを脚で指差す。
一行がそこを見ると、黒い魔法陣の外縁らしきものが見えた。
「これ、魔法陣か?」
エリーが問いかけた。
「そう……、みたいね……」
フェイは笑いをこらえつつ、言った。
「ここから何かを呼び出すのでしょうか?」
リノも調べ始めた。
「なんでもいい、斬ってやる!」
ヒナはそう言っているものの、膝が震えていて、無理をしているのが分かる。
「これは……、どうしましょうか……?」
ソフィアは困って言った。
フェイが懐から何かを取り出し、ソフィアに渡す。
「ソフィっち、これ持ってて」
「これは何でしょうか?」
「魔法の巻物よ。ここぞという時に使ってみて」
「はい」
ソフィアはよく分かっていないようだが、その巻物を手にした。
「絨毯全部めくってみようか?」
クロウがそう言った。
「とりあえず、やってみようか」
そうして五人と一匹は絨毯をめくり、その下の魔法陣を見えるようにした。
するとどうだろう、黒い魔法陣が青く光りだし、勝手に発動したようだ。
「これって……」
エリーがそう言うと、黒い魔法陣の中央に何かが呼び出された。
その不気味な姿が徐々に浮かび上がってくる……。
天使のような体、背中に黒い羽を持ち、その頭には黒い鳥の頭が二つあった。
これは悪魔だろうか、堕天使だろうか、その姿は異様な雰囲気に包まれていた。
その者が片手を上げると、その手に黒い球が渦巻き始めた。
(まずい、何かしてくる……!)
皆がそう思った、その時である。
「あっ!」
ソフィアがフェイから受け取った巻物をうっかり落としてしまう。
それは転がりつつ、悪魔らしき生き物の足に当たった。
悪魔はその巻物を拾い上げると、ソフィアがその巻物を目で追ってしまう。
その時偶然にも、その巻物の中を彼女は見てしまったのだ。
――突然、大爆発が起こった。
その爆音と爆風と共に、五人と一匹は吹き飛ばされてしまった……。
彼らは何が起きたのか分からないまま、それぞれ体中についた破片や砂埃を払いながら立ち上がった。
先ほどまでいた広間は、壁も屋根もすっかり無くなっていた。
館らしきものは土台しか残っておらず、頭上には雲がかかった空が見える。
一体何が起きたのだろうかと、六人は周囲を見回した。
「いてて、何が起きたんだ……」
「クロ、体が戻ってるぞ!」
エリーがクロウを見て言った。
「あれ!? そうか?」
クロウは自分の体を確認する。
「さっきのがボスだったのかしら……」
フェイも辺りを見廻す。
「皆さん、大丈夫でしょうか?」
リノは仲間の怪我を心配して、怪我の様子を見始める。
「何だ、さっきのは……」
ヒナも無事なようだ。
「すいません、私が巻物を見たらこうなってしまったみたいで……」
ソフィアが皆に謝った。
「フェイ、ソフィに何を渡したんだ?」
「えっ? 爆発の魔法が書かれた巻物だよ」
「なんでよ?」
「回復魔法で爆発が起こるなら、爆発魔法で回復するかと思って……」
「それで出てきたのは大爆発だったな……」
「一番弱い爆発の魔法だったんだけどね……」
「本当にすいません、こうなるとは……」
ソフィアは平謝りした。
「まあ、フェイのせいだしね……」
六人は怪我の手当てをしてから、街へと戻った。
結局、ソフィアの悩みを解決することができなかったのである……。
街へ戻ると、ソフィアは『王都ルティア』の『大図書館』でその原因を調べると言って、五人に謝りつつ、街から去って行った。
五人は今回の出来事に反省しつつ、休息を取った。
いずれ、彼女の爆破体質も治るかもしれない。そう願いながら……。
この奇妙な名前のギルドの扉をノックし、訪ねて来る者がいた。
「はーい」
と、ドアを開き、応対するリノ。
そこには、シスター風の娘が立っていた。
「あの……、こちらのギルドで、よろしいでしょうか?」
「えっと、何でしょうか?」
「あっ、すいません。ウィグラフさんの紹介で、相談に乗ってもらえるかと……」
その名前を知らないわけではない。
とりあえず、リノは彼女に席を勧め、紅茶をだした。
間もなく食堂に五人が揃い、それぞれ名乗った。
「はい、あの、私、僧侶の『ソフィア』という者です」
「それで、話というのは? ソフィアさん」
クロウは、いやに乗り気だ。
「私、その……、回復魔法が苦手なのです……。それで、旅の途中で知り合ったウィグラフさんにここを紹介されて……」
「なるほど、あのおっさんの紹介か」
「何かいけなかったのでしょうか……?」
「いや、あのおっさんの全身キノコ姿思い出してね……」
「そうなのですか? あの方は旅の途中で顔が赤紫に腫れていたので……」
「何食ったんだろ……」
「じゃあさ、試しにここのクロにかけてみなよ、回復魔法」
「はい、それでは、失礼して……。癒しの光……」
〝ボンッ!〟
突然、クロウの右肩に小さな爆発が起こった。
椅子から転げ落ちるクロウ。彼の耳はキーンと鳴っていた……。
「なんだ? 今の……?」
彼は驚いてソフィアをじっと見つめた。
「あっ、すいません。私、回復魔法を使ったつもりでも、何故かそこが爆発してしまうのです……」
五人はそれを聞くと、驚いてソフィアを見る。
(回復魔法で爆発?)
(どうしてそうなる……)
(どんな魔法使ってるのかしら……?)
(回復魔法……でしたよね?)
(苦手どころではないな……)
それぞれ異なった反応を示すも、彼女の悩みが奥深いことが分かった。
「えっと、これ、どうしたらいいんだろう?」
クロウはリノに聞いた。
「私はそういう経験無いので……」
リノも困っているようだ。
「そうですよね、すいません。私にもどうしていいか分からなくて……」
ソフィアはうつむいてしまった。
「俺は魔法使えないしな……」
「あたしも……」
「……そうね、一つアイディアがあるわ」
フェイが何か思いついたようだ。
五人は一斉にフェイの顔を見つめる。
「回復魔法が弱点のモンスターとかで練習するのよ」
「それでいけるのか……?」
「ウチも分からないけど、練習すれば良くなるかな? と思って」
「えっ!? そうなのですか? 私、いつも爆発させてしまうので、練習は……」
「じゃあさ、やってみようか」
「そうですね、練習すればうまくなるかもしれませんし」
「毎日の鍛錬は大事だぞ」
「どこで練習しようか?」
「ウチがいいとこ知ってるよ」
フェイがそう言い、一行は彼女の案内でその場所へ向かった。
一行は目的の場所、森の中の洋館へ着いた。だがこの場所は見覚えがある……。
そこにある洋館は森の奥深い所にあり、外からの訪問者を拒んでいるように見えた。
建物は二階建てで、外観には蔦が絡んでおり、とても人が住んでいるとは思えない。
やはり見たことがあるというか、以前来たことがある場所だ。
「あれ、ここって……」
「昔壊した洋館?」
「そうみたいですね……」
「これは……、ちょっと、怖そうなのだが……」
「ここだわ。ここに幽霊がいっぱい出るから、それを回復魔法で倒すのよ!」
「幽霊!?」
ヒナが怯んでしまう。
「分かりました、ここの幽霊で練習ですね」
ソフィアはそう言って、心に決意した。
「ソフィアは前に出ないでね、あたしらが幽霊追い回すから、回復魔法かけてみて」
「そうだな、前方は俺達で守ろう」
「……」
ヒナは尻込みしている。
「よしじゃあ行こう!」
フェイはそう言ってヒナを引っ張りつつ、六人は洋館の中に入って行った。
洋館の正面の扉を開けて、中へ入って行く一行。
その中は吹き抜けの広間になっており、奥には二階への階段が二つ見える。
広間の左右に扉があり、以前来た時と同じ間取りのようだ。
「それじゃソフィっち、天井のシャンデリアを落としてみて、あそこにいるはずよ」
フェイはそう言って、天井を指差した。
「はい、やってみます」
ソフィアはそう言って、回復魔法をかける。
「癒しの光」
〝ボンッ!〟
天井のシャンデリアで爆発がおこり、シャンデリアが落下してきた。
〝ガシャーン!〟と大きな音を立てて広間の床に落ちる。
「ひぃっ」
ヒナは怯えた声を上げるも、戦いが始まる。
シャンデリアの上には幽霊が三匹いて、こちらを睨んでくる。
「癒しの光」
再びソフィアの回復魔法で幽霊を一匹爆破した。
残りの二匹の幽霊がこちらへ向かって来る。
クロウは名剣『フルティン』を振り回し、幽霊たちを追い払おうとした。
ヒナはしゃがんで目を閉じ耳を塞いで震えている。
三度、四度とソフィアの回復魔法で幽霊を爆破し、広間に静けさが戻った。
「ソフィっち、どう?」
フェイが聞いた。
「どうかと言われましても……」
ソフィアはまだ手ごたえを感じていないようだ。
「まだ三匹だし、次行こう」
エリーが催促した。
「ヒナさん、大丈夫ですか?」
「う……、うむ……」
ヒナはやはり幽霊が苦手どころか、顔が真っ青になってしまった。
「ヒナの顔色が悪いな。次から事前に説明しよう」
クロウはそう言って、ヒナを気遣って進む事にした。
クロウはヒナに説明するように進んで行く。
「次は、こっちの扉を開けると、窓から黒い犬が飛び出してくる」
そう言って、広間の左の扉を開け、廊下を進む。
やはりここも同じで、窓ガラスを割って黒い犬が飛び込んで来た。
その二匹もソフィアの回復魔法で倒す。
「次は、包丁を持った人形が襲ってくる」
そう言って扉を開けると、包丁を持った人形が襲ってきた。
そしてそれもソフィアの回復魔法で倒してしまう。
どうやらヒナとソフィアに少し余裕が出てきたようだ。
広間に戻り、入り口の右側の扉を開け、そちら側の幽霊も倒した。
一階の幽霊を倒し終わり、次は二階へと足を進める。
一行は二階へ登り、階段の左手の扉の前に立つ。
「ここは……、首の無い自分だっけ?」
「そうだね、あの悪趣味な奴」
「そうね、あれは結局何だったのかしら?」
「六人で入ったら、敵も六人になるのでしょうか?」
「ううっ……、聞いてるだけでも怖いな……」
「はい、私もがんばります」
六人はそう話し、その部屋の扉を開けた。
以前のように、壁には絵画や装飾された剣が飾られ、ベッドやソファーもある。
そしてもちろん、部屋の中央には赤い水たまりがあった。
「剣が襲ってくるぞ!」
クロウはそう叫んで、皆に注意を促した。
やはり、壁に掛かっていた六本の剣が襲ってきた。
事前に分かっていれば怖くはない。あっさりと撃ち落とす。
そして彼らは、部屋の中央の赤い水たまりの方へ目を向ける。
そこにはやはり、六体分の彼らと同じ格好の首無し死体があった。
何度見ても気持ちのいいものではない。が、
「あの死体、床から浮かび上がってくるのが見えました」
どうやらリノは床から目を離さず、見張っていたようだ。
「へぇ~、そういう仕掛けだったのか……」
「でも分かっていても襲われるような……」
仕掛けが分かっていてもどうにかなるものでは無かった。
六人は六体の首なし死体に襲われ、戦い始める。
……数分の戦いの後、ソフィアの回復魔法とヒナに倒されてしまった。
「済まない……、怖くて思うように手加減できなかった……」
「気になさらないで下さい、私は皆さんに手伝ってもらえて感謝してます」
ソフィアがヒナを気遣って言った。
そして次の場所、階段の右手にある扉だ。
ここは以前、死神みたいな影によって四人の首と胴が入れ替えられた所だ。
「ここは、どうしよう……?」
「ここに六人で入ったら、六人分入れ替わるのかしら?」
「そうですね、でもここの先へ行かないと……」
「よし、ここは俺一人に任せてくれ」
クロウはカッコつけてそう言った。
「大丈夫なのか?」
エリーが心配して言った。
「一人で入れば、首と胴が入れ替わることも無いはずだ」
「そうかもしれませんが……」
リノも心配してそう言ったが、クロウは自信ありそうな顔で言う。
「大丈夫だ、この『白い烏』の力、見ていてもらおうか!」
そう言って、クロウは勇敢にも一人で扉を開け、中に入って行った。
その数秒後……、
「うわっ!?」
クロウの悲鳴が聞こえた。急いで扉を開ける五人。
そこにいる者は、脚の部分に腕があり、腕の部分に脚があり、股間にクロウの顔がある、そんな珍妙な生き物だった……。
〝ブホッ〟
フェイが思わず吹き出し、一瞬アヘ顔を見せて顔を隠し、笑いをこらえうずくまる。
他の四人は唖然として立っていた……。
「これはちょっと……」
「どうしましょう……?」
「なんと……」
「大変なことに……」
「あのさ、タスケテ……」
クロウの股間の顔が喋った。
さらに肩を震わせて笑いをこらえるフェイ。
「これはちょっとかわいそうな……。でもとにかく先へ進むしかないね……」
エリーと四人と一匹は、ここで立ち止まっても仕方ないので、先へ進むことにした。
次の小部屋。以前と同じようにピアノがあり、女性の幽霊が演奏を始めた……♪。
「この曲は……ヒゲダンスか?」
フェイは顔を隠して笑っている。
「聞いたことある気がしますね」
「踊り出しそうな曲だな」
「何かの挑戦したくなりますよね」
「手で歩くの大変なんだけど……」
クロウは両腕でひょこひょこ歩く。
その姿を見て、さらに笑いのツボにはまってしまうフェイ。
「とにかく、地下へ向かおう」
エリーと四人と一匹は、隠し扉を開け、地下へ降りて行く。
地下の部屋も以前と同じだった。
部屋の中央に魔法陣があり、その周りの燭台がロウソクの火で部屋を照らしている。
その魔法陣の上に、ゆっくりと死神の影が浮かび上がってきた。
「こいつの鎌は本物だぞ!」
エリーはそう皆に注意をし、戦闘が始まる。
ヒナは怯えつつも刀で鎌を払い、エリーが短剣で斬りつける。
ソフィアは回復魔法で攻撃し、リノは補助魔法を全員にかけた。
クロウは珍妙な姿でぴょんぴょん跳ね回り、フェイは顔を隠して肩を震わせる。
そうしているうちに一行は、死神を祓うことに成功したようだ。
しかし死神を倒したものの、クロウの姿は元に戻らない。
「前回はどうやって元に戻ったんだっけ?」
フェイはまだ笑いをこらえている。
「クロさんが『雷神剣』を暴走させて、館ごと壊してましたね」
「建物ごと壊すのか?」
「そのようなことが出来るのでしょうか?」
「今は『雷神剣』持ってないんだよな~」
クロウが股間の顔から言った。
「とりあえず前回みたいに、一階の広間に戻ってみるか」
エリーはそう言って、皆を連れて一回の広間へと戻って行った。
「ここに何か手がかりがあればいいんだけど……」
エリーはそう言って、五人と一匹で広間を調べ始めた。
そこでクロウが絨毯に手を引っかけて転んでしまう。
「あっ! これ!」
クロウが転んだついでに何か見つけたようだ。
彼は広間の床に敷いてある絨毯の角をめくり、そこを脚で指差す。
一行がそこを見ると、黒い魔法陣の外縁らしきものが見えた。
「これ、魔法陣か?」
エリーが問いかけた。
「そう……、みたいね……」
フェイは笑いをこらえつつ、言った。
「ここから何かを呼び出すのでしょうか?」
リノも調べ始めた。
「なんでもいい、斬ってやる!」
ヒナはそう言っているものの、膝が震えていて、無理をしているのが分かる。
「これは……、どうしましょうか……?」
ソフィアは困って言った。
フェイが懐から何かを取り出し、ソフィアに渡す。
「ソフィっち、これ持ってて」
「これは何でしょうか?」
「魔法の巻物よ。ここぞという時に使ってみて」
「はい」
ソフィアはよく分かっていないようだが、その巻物を手にした。
「絨毯全部めくってみようか?」
クロウがそう言った。
「とりあえず、やってみようか」
そうして五人と一匹は絨毯をめくり、その下の魔法陣を見えるようにした。
するとどうだろう、黒い魔法陣が青く光りだし、勝手に発動したようだ。
「これって……」
エリーがそう言うと、黒い魔法陣の中央に何かが呼び出された。
その不気味な姿が徐々に浮かび上がってくる……。
天使のような体、背中に黒い羽を持ち、その頭には黒い鳥の頭が二つあった。
これは悪魔だろうか、堕天使だろうか、その姿は異様な雰囲気に包まれていた。
その者が片手を上げると、その手に黒い球が渦巻き始めた。
(まずい、何かしてくる……!)
皆がそう思った、その時である。
「あっ!」
ソフィアがフェイから受け取った巻物をうっかり落としてしまう。
それは転がりつつ、悪魔らしき生き物の足に当たった。
悪魔はその巻物を拾い上げると、ソフィアがその巻物を目で追ってしまう。
その時偶然にも、その巻物の中を彼女は見てしまったのだ。
――突然、大爆発が起こった。
その爆音と爆風と共に、五人と一匹は吹き飛ばされてしまった……。
彼らは何が起きたのか分からないまま、それぞれ体中についた破片や砂埃を払いながら立ち上がった。
先ほどまでいた広間は、壁も屋根もすっかり無くなっていた。
館らしきものは土台しか残っておらず、頭上には雲がかかった空が見える。
一体何が起きたのだろうかと、六人は周囲を見回した。
「いてて、何が起きたんだ……」
「クロ、体が戻ってるぞ!」
エリーがクロウを見て言った。
「あれ!? そうか?」
クロウは自分の体を確認する。
「さっきのがボスだったのかしら……」
フェイも辺りを見廻す。
「皆さん、大丈夫でしょうか?」
リノは仲間の怪我を心配して、怪我の様子を見始める。
「何だ、さっきのは……」
ヒナも無事なようだ。
「すいません、私が巻物を見たらこうなってしまったみたいで……」
ソフィアが皆に謝った。
「フェイ、ソフィに何を渡したんだ?」
「えっ? 爆発の魔法が書かれた巻物だよ」
「なんでよ?」
「回復魔法で爆発が起こるなら、爆発魔法で回復するかと思って……」
「それで出てきたのは大爆発だったな……」
「一番弱い爆発の魔法だったんだけどね……」
「本当にすいません、こうなるとは……」
ソフィアは平謝りした。
「まあ、フェイのせいだしね……」
六人は怪我の手当てをしてから、街へと戻った。
結局、ソフィアの悩みを解決することができなかったのである……。
街へ戻ると、ソフィアは『王都ルティア』の『大図書館』でその原因を調べると言って、五人に謝りつつ、街から去って行った。
五人は今回の出来事に反省しつつ、休息を取った。
いずれ、彼女の爆破体質も治るかもしれない。そう願いながら……。
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それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
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だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
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自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
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2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
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