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第四話
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木造は三人を連れて、防火シャッターの扉を開けて進んだ。
「こっちはサーバーが置いてある部屋だ。この先に階段とエレベーターがある」
そう言い、三人を案内しながら歩き出した。
四人は階段を上り、二十八階に着く。
木造は近くの扉の前に立ち、首に下げた社員証からIDカードを取り出し、そのカードを差込口に通して扉のロックを外した。
だが、ブザーが鳴り、緑のLEDが赤く点いてしまう。
「なんだよこれ……、僕が入れないって……」
「中に入れないのか?」
「そうみたいだ、上の事務の方まで行ってみよう」
木造はそう言うと、エレベーターの方に歩いて行った。
四人はエレベーターに乗り、三十階に向かった。
三十階には、このリバースムーン社の受付、事務室、社長室などがある。
木造は三人の先に立って、受付のある所へ入って行った。
受付の人がいるはずの机には誰もおらず、何か赤い光が点滅しているだけだった。
「なんで誰もいない……」
木造はそう呟くと、赤い光が点滅しているのが気になり、受付の机の内側に入る。
その机の下には監視カメラのようなものがあって、この場所からこの高層ビルの入り口などを見れるようになっていた。
「何だこれは!?」
木造は驚いて叫んだ。
三人が木造と一緒にその監視カメラの画像を見ると、そこにはこのビルのロビーに侵入してくるどこかの軍の兵士達の姿が映っていた。
高層ビルに入って来る兵士達は、ガスマスクを被り、小銃などの兵器を持ち、明らかにこのビルに攻め込んできたようだった。
「木造さん、これって……」
ライは木造に聞いた。
「僕がわかるわけないだろ!」
木造は怒鳴って返した。
彼は額から汗を流し、胸のポケットからハンカチを取り出し、その汗を拭った。
「ねえ、木造さん、この兵士達って本物なの?」
ルウラも木造に聞いてみた。
「クヒッ、クヒヒ……」
だが木造は不気味な笑顔で笑い始めた。
「そうだ! これはゲームの中の世界なんだよ! 全部そうさ! フゥハハハッ! みんなぶっ殺してやる! ウァ~ハハハハハッ!!」
そう叫んで、受付のある場所から出て、廊下を走って行った。
彼の変貌した姿に困惑した三人であったが、監視カメラはまだ高層ビルのロビーを映し出していた。
そのロビーの映像は、ビルの外から戦車か装甲車のような物が、高層ビルのエントランスに飛び込んできた所を映していた。
三人はお互い顔を見合わせ、どうしたらいいのか考え始めた。
「……今、俺たちがいる所はゲームの世界で間違いないよな……」
「そうだね、ライは鉄の鎧着てるしね……」
「私は魔法使えないのかしら……?」
「そういや木造さんはどこ行ったんだろ?」
「廊下を走ってどこかに行ったみたい……」
「彼、大丈夫かしら……」
そう話していると、どこからか木造の叫び声が聞こえてきた。
「お前ら、何やってる、こっちに来い!」
そんな声が聞こえてきたので、三人は廊下に出てみた。
廊下の右手、木造が走って行った方向のドアが壊されて、開いていた。
木造はそこにいるのだろうかと思い、三人はそこへ向かった。
その部屋の中に木造はいた。
だがそれだけで無く、その部屋には壁一面に様々な銃器が掛けられていて、机の上には拳銃や銃弾、さらに手榴弾らしき物まであった。
木造は三人に気づくと、
「ここは資料室だ。ここの武器を勝手に使え」
そう言いながら、壁に掛けられた銃を選び、動作を確認しだした。
「木造さん、これって本物……?」
ライは唖然として彼に問いかけるも、
「うるせぇ! 全部ゲームの中の事なんだよ! ぶっ殺し祭りだ!!」
と、木造はそう言って、ライにアサルトライフルを投げ渡した。
ライは仕方なく資料室に入り、武器を探し始め、二人もそれに続いた。
ライはアサルトライフル、拳銃、銃弾が巻かれたベルトを肩にかけて武装した。
ファルは拳銃とサブマシンガンと銃のマガジンを持った。
ルウラはどこから見つけたのか、バズーカらしき物も持っていた。
「よし、お前ら! 行くぞ! 社長をぶっ殺してやる!」
木造はそう叫んで、受付の方へ歩いて行った。
三人も未だに状況を飲み込めていないようであったが、木造の後を追った。
木造は受付の所へ着くと、いきなりマシンガンを発射し、壁や天井の至る所に穴を空けた。
「出てこい! クソ社長! ぶっ殺してやる!」
そう喚き散らしながら、受付の奥へ向かった。
三人は木造の後から受付の所へ入って来たが、別にここの社長を知っている訳でも、恨みがある訳でも無い。
奥の方からはマシンガンが銃弾を巻き散らす音と、木造の狂った声が聞こえてきた。
三人がどうしたらいいか迷っていると、突然、奥の方の銃声が止んだ。
……この場所に静寂が戻って来た。
だが、木造はどうしたのだろうと思い、三人は奥の方を覗き込んだ。
そこには、銃で撃たれて胸から大きな出血をしている、木造の姿があった。
ライは思わず彼に近づき、
「木造さん、どうしたんだよ! 誰かにやられたのか!?」
大声を抑えきれずに聞いた。
だが木造は、何かを喋ろうと、口をパクパク動かした後、全身の力が抜け、目から生命の光が消えてしまったのだ。
呆然と木造の死体を見つめるライ。
ここがゲームの中だとしたら、どこかで生き返るのだろうか、と思っていると、
「ライ、こっちに来て!」
と、ファルに大きな声で呼ばれた。
ライは木造を放置して、ファルの所へ向かう。
ファルとルウラは、受付の監視カメラを見ていた。
ファルはライに気づくと、その監視カメラを指差す。
そこのモニターは、ビルのエントランスではなく、赤い扉がある場所を映していた。
ライは、この赤い扉の所は見たことがある、と思っていると、
「ここ、VRルームの入り口……」
ルウラがそう言った。
だが、その赤い扉が急に開くと、そこから誰かが出てきたのだ。
この姿は知っている。――『ゴブリン』だ。
ゲームの中にいたはずのゴブリンが、続々とVRルームの扉を開けて、出て来たのだ。
それだけで無く、オークやコボルト、スライムなど、VRゲームの中で見た魔物達が、次々とVRルームから出て来ているのだった。
「これって……?」
ライは事態を飲み込めず、二人に聞いてみた。
「私に聞かれても……」
「どうなってるのかな……」
もちろん、二人とも事態を把握している訳は無い。
三人が呆然としていると、監視カメラに映った魔物達が、バタバタと倒れ始めた。
その直後、監視カメラに映ったのは、一階のエントランスにいた兵士達だった。
彼ら兵士達は、ゲームの中にいた魔物達を銃で一掃すると、VRルームの中に手榴弾らしき物を投げ込み、爆破した。
その兵士のうちの一人が、監視カメラを見て、そこに銃を向ける。
そこで監視カメラの映像は途切れてしまった。
「こっちはサーバーが置いてある部屋だ。この先に階段とエレベーターがある」
そう言い、三人を案内しながら歩き出した。
四人は階段を上り、二十八階に着く。
木造は近くの扉の前に立ち、首に下げた社員証からIDカードを取り出し、そのカードを差込口に通して扉のロックを外した。
だが、ブザーが鳴り、緑のLEDが赤く点いてしまう。
「なんだよこれ……、僕が入れないって……」
「中に入れないのか?」
「そうみたいだ、上の事務の方まで行ってみよう」
木造はそう言うと、エレベーターの方に歩いて行った。
四人はエレベーターに乗り、三十階に向かった。
三十階には、このリバースムーン社の受付、事務室、社長室などがある。
木造は三人の先に立って、受付のある所へ入って行った。
受付の人がいるはずの机には誰もおらず、何か赤い光が点滅しているだけだった。
「なんで誰もいない……」
木造はそう呟くと、赤い光が点滅しているのが気になり、受付の机の内側に入る。
その机の下には監視カメラのようなものがあって、この場所からこの高層ビルの入り口などを見れるようになっていた。
「何だこれは!?」
木造は驚いて叫んだ。
三人が木造と一緒にその監視カメラの画像を見ると、そこにはこのビルのロビーに侵入してくるどこかの軍の兵士達の姿が映っていた。
高層ビルに入って来る兵士達は、ガスマスクを被り、小銃などの兵器を持ち、明らかにこのビルに攻め込んできたようだった。
「木造さん、これって……」
ライは木造に聞いた。
「僕がわかるわけないだろ!」
木造は怒鳴って返した。
彼は額から汗を流し、胸のポケットからハンカチを取り出し、その汗を拭った。
「ねえ、木造さん、この兵士達って本物なの?」
ルウラも木造に聞いてみた。
「クヒッ、クヒヒ……」
だが木造は不気味な笑顔で笑い始めた。
「そうだ! これはゲームの中の世界なんだよ! 全部そうさ! フゥハハハッ! みんなぶっ殺してやる! ウァ~ハハハハハッ!!」
そう叫んで、受付のある場所から出て、廊下を走って行った。
彼の変貌した姿に困惑した三人であったが、監視カメラはまだ高層ビルのロビーを映し出していた。
そのロビーの映像は、ビルの外から戦車か装甲車のような物が、高層ビルのエントランスに飛び込んできた所を映していた。
三人はお互い顔を見合わせ、どうしたらいいのか考え始めた。
「……今、俺たちがいる所はゲームの世界で間違いないよな……」
「そうだね、ライは鉄の鎧着てるしね……」
「私は魔法使えないのかしら……?」
「そういや木造さんはどこ行ったんだろ?」
「廊下を走ってどこかに行ったみたい……」
「彼、大丈夫かしら……」
そう話していると、どこからか木造の叫び声が聞こえてきた。
「お前ら、何やってる、こっちに来い!」
そんな声が聞こえてきたので、三人は廊下に出てみた。
廊下の右手、木造が走って行った方向のドアが壊されて、開いていた。
木造はそこにいるのだろうかと思い、三人はそこへ向かった。
その部屋の中に木造はいた。
だがそれだけで無く、その部屋には壁一面に様々な銃器が掛けられていて、机の上には拳銃や銃弾、さらに手榴弾らしき物まであった。
木造は三人に気づくと、
「ここは資料室だ。ここの武器を勝手に使え」
そう言いながら、壁に掛けられた銃を選び、動作を確認しだした。
「木造さん、これって本物……?」
ライは唖然として彼に問いかけるも、
「うるせぇ! 全部ゲームの中の事なんだよ! ぶっ殺し祭りだ!!」
と、木造はそう言って、ライにアサルトライフルを投げ渡した。
ライは仕方なく資料室に入り、武器を探し始め、二人もそれに続いた。
ライはアサルトライフル、拳銃、銃弾が巻かれたベルトを肩にかけて武装した。
ファルは拳銃とサブマシンガンと銃のマガジンを持った。
ルウラはどこから見つけたのか、バズーカらしき物も持っていた。
「よし、お前ら! 行くぞ! 社長をぶっ殺してやる!」
木造はそう叫んで、受付の方へ歩いて行った。
三人も未だに状況を飲み込めていないようであったが、木造の後を追った。
木造は受付の所へ着くと、いきなりマシンガンを発射し、壁や天井の至る所に穴を空けた。
「出てこい! クソ社長! ぶっ殺してやる!」
そう喚き散らしながら、受付の奥へ向かった。
三人は木造の後から受付の所へ入って来たが、別にここの社長を知っている訳でも、恨みがある訳でも無い。
奥の方からはマシンガンが銃弾を巻き散らす音と、木造の狂った声が聞こえてきた。
三人がどうしたらいいか迷っていると、突然、奥の方の銃声が止んだ。
……この場所に静寂が戻って来た。
だが、木造はどうしたのだろうと思い、三人は奥の方を覗き込んだ。
そこには、銃で撃たれて胸から大きな出血をしている、木造の姿があった。
ライは思わず彼に近づき、
「木造さん、どうしたんだよ! 誰かにやられたのか!?」
大声を抑えきれずに聞いた。
だが木造は、何かを喋ろうと、口をパクパク動かした後、全身の力が抜け、目から生命の光が消えてしまったのだ。
呆然と木造の死体を見つめるライ。
ここがゲームの中だとしたら、どこかで生き返るのだろうか、と思っていると、
「ライ、こっちに来て!」
と、ファルに大きな声で呼ばれた。
ライは木造を放置して、ファルの所へ向かう。
ファルとルウラは、受付の監視カメラを見ていた。
ファルはライに気づくと、その監視カメラを指差す。
そこのモニターは、ビルのエントランスではなく、赤い扉がある場所を映していた。
ライは、この赤い扉の所は見たことがある、と思っていると、
「ここ、VRルームの入り口……」
ルウラがそう言った。
だが、その赤い扉が急に開くと、そこから誰かが出てきたのだ。
この姿は知っている。――『ゴブリン』だ。
ゲームの中にいたはずのゴブリンが、続々とVRルームの扉を開けて、出て来たのだ。
それだけで無く、オークやコボルト、スライムなど、VRゲームの中で見た魔物達が、次々とVRルームから出て来ているのだった。
「これって……?」
ライは事態を飲み込めず、二人に聞いてみた。
「私に聞かれても……」
「どうなってるのかな……」
もちろん、二人とも事態を把握している訳は無い。
三人が呆然としていると、監視カメラに映った魔物達が、バタバタと倒れ始めた。
その直後、監視カメラに映ったのは、一階のエントランスにいた兵士達だった。
彼ら兵士達は、ゲームの中にいた魔物達を銃で一掃すると、VRルームの中に手榴弾らしき物を投げ込み、爆破した。
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