7 / 15
日向の夢1 少年のジョシュ
しおりを挟む
「起きて、お兄さん!」
声をかけられて、日向は目を開けた。
木々からの木漏れ日が降り注いできてまぶしい。何度かまぶたをしばたかせると、声の主がわかった。
目の前に、榛色の瞳の少年がいて自分を覗き込んでいる。
「ジョシュ……? えっと、きみは?」
プーカに言われるままに、ジョシュのことを考えて寝たのは確かだが、目の前にいるのは彼よりもずっと幼い。六歳くらいの少年だった。
それでも、彼の弟と言われたら信じてしまいそうに彼に似ている。
「お兄さん、なんでぼくの名前を知ってるの?」
不思議そうに少年がたずねた。
「きみは、ジョシュなの? 名字は?」
「アンダーウッド。お兄さんは?」
答えを聞いて日向は確信を持つ。やっぱりジョシュだ。
自分のことを知らないようだから、少年のジョシュなのか。
これは夢なのだろう。彼に会いたいと思って眠ったが、少年の彼に会いたいと思ったわけではないはずなのだが。
起き上がって立ち上がる。
「日向。ヒナタ・モリノだよ」
「ヒナタ! 素敵な名前だね!」
日向が名乗ると、少年ははにかむような笑顔を見せる。
「お兄さんがぼくの運命の人なんだ!」
「え?」
「だって、寝る前にぼくは運命の人に出会わせてくれってお願いしたんだよ。それで、素敵なお兄さんがぼくの前で寝ていたんだもの、間違いないよ」
少年は躊躇わず日向の手をとって、手をつないできた。その子供っぽいしぐさがかわいらしくて、日向は思わず微笑んだ。
ちょうど、アーニーズに通っていたような年頃だろうか。
「日向、ぼくたちは塔に行かないといけないんだ」
「塔?」
少年が指し示した方を見ると、森の向こうに尖塔の先端が見えた。
黒っぽい色彩のせいか、なんだか吸血鬼などの屋敷のような、不吉な雰囲気がある。森の様子も、いつも遊んでいる大学のキャンパスの森よりずっと広いようで、尖塔までがかなり遠い。
「あんな遠くまで行って、大丈夫なの?」
「さっき妖精がきて、みんなあそこに向かってるって。あそこでは知りたかったことがわかるって。急いでいく必要はないけど、あの場所を避けることは人間にはできないって」
妖精がいたのか。
じゃあプーカも夢の中に来ているのかもしれない。日向は少しほっとしている自分を感じた。夢なんだから、目を覚ませばそれで解決なのだけれど。
「ねえ日向、一緒に行ってもらえる?」
握られた手を引っ張られて、日向は我に返った。夢だってこんな、小学校に入るかどうかという年齢の子供を森に置き去りにできない。
「もちろんだよ」
少年は破顔した。
「やったあ、日向と一緒」
少年は嬉しそうに、日向にまとわりついてきた。日向も、ジョシュだと思うと気恥ずかしいが、あまりにも子供っぽいので、自然にその肩に手を置いていた。
時間はいつなのだろう。上を見上げても木々の背が高くて太陽の位置がわからないが、すがすがしい空気が、まだ朝早いような気がする。
「あ、ハート型だ」
ジョシュがしゃがみこんで、つないでいない方の手で、地面に落ちた葉を拾い上げた。ハート型の葉っぱ。
プーカの羽根を治すのに必要な葉だった。
「日向、きみにあげるよ。ハートだから。ぼくの心ハートだ」
「ありがとう」
少年の躊躇いのない告白に少し戸惑いつつも、その気持ちを傷つけたくなくて、日向は微笑んで受け取った。
それを見たジョシュも笑顔を見せる。
ふたりがしばらく森の中を歩いていくと、中年の男性が切り株に腰かけて頬杖をついていた。
声をかけられて、日向は目を開けた。
木々からの木漏れ日が降り注いできてまぶしい。何度かまぶたをしばたかせると、声の主がわかった。
目の前に、榛色の瞳の少年がいて自分を覗き込んでいる。
「ジョシュ……? えっと、きみは?」
プーカに言われるままに、ジョシュのことを考えて寝たのは確かだが、目の前にいるのは彼よりもずっと幼い。六歳くらいの少年だった。
それでも、彼の弟と言われたら信じてしまいそうに彼に似ている。
「お兄さん、なんでぼくの名前を知ってるの?」
不思議そうに少年がたずねた。
「きみは、ジョシュなの? 名字は?」
「アンダーウッド。お兄さんは?」
答えを聞いて日向は確信を持つ。やっぱりジョシュだ。
自分のことを知らないようだから、少年のジョシュなのか。
これは夢なのだろう。彼に会いたいと思って眠ったが、少年の彼に会いたいと思ったわけではないはずなのだが。
起き上がって立ち上がる。
「日向。ヒナタ・モリノだよ」
「ヒナタ! 素敵な名前だね!」
日向が名乗ると、少年ははにかむような笑顔を見せる。
「お兄さんがぼくの運命の人なんだ!」
「え?」
「だって、寝る前にぼくは運命の人に出会わせてくれってお願いしたんだよ。それで、素敵なお兄さんがぼくの前で寝ていたんだもの、間違いないよ」
少年は躊躇わず日向の手をとって、手をつないできた。その子供っぽいしぐさがかわいらしくて、日向は思わず微笑んだ。
ちょうど、アーニーズに通っていたような年頃だろうか。
「日向、ぼくたちは塔に行かないといけないんだ」
「塔?」
少年が指し示した方を見ると、森の向こうに尖塔の先端が見えた。
黒っぽい色彩のせいか、なんだか吸血鬼などの屋敷のような、不吉な雰囲気がある。森の様子も、いつも遊んでいる大学のキャンパスの森よりずっと広いようで、尖塔までがかなり遠い。
「あんな遠くまで行って、大丈夫なの?」
「さっき妖精がきて、みんなあそこに向かってるって。あそこでは知りたかったことがわかるって。急いでいく必要はないけど、あの場所を避けることは人間にはできないって」
妖精がいたのか。
じゃあプーカも夢の中に来ているのかもしれない。日向は少しほっとしている自分を感じた。夢なんだから、目を覚ませばそれで解決なのだけれど。
「ねえ日向、一緒に行ってもらえる?」
握られた手を引っ張られて、日向は我に返った。夢だってこんな、小学校に入るかどうかという年齢の子供を森に置き去りにできない。
「もちろんだよ」
少年は破顔した。
「やったあ、日向と一緒」
少年は嬉しそうに、日向にまとわりついてきた。日向も、ジョシュだと思うと気恥ずかしいが、あまりにも子供っぽいので、自然にその肩に手を置いていた。
時間はいつなのだろう。上を見上げても木々の背が高くて太陽の位置がわからないが、すがすがしい空気が、まだ朝早いような気がする。
「あ、ハート型だ」
ジョシュがしゃがみこんで、つないでいない方の手で、地面に落ちた葉を拾い上げた。ハート型の葉っぱ。
プーカの羽根を治すのに必要な葉だった。
「日向、きみにあげるよ。ハートだから。ぼくの心ハートだ」
「ありがとう」
少年の躊躇いのない告白に少し戸惑いつつも、その気持ちを傷つけたくなくて、日向は微笑んで受け取った。
それを見たジョシュも笑顔を見せる。
ふたりがしばらく森の中を歩いていくと、中年の男性が切り株に腰かけて頬杖をついていた。
10
あなたにおすすめの小説
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
連理の枝と約束~あなたと月の下で
夏目奈緖
BL
真面目青年×妖艶系天使。明治の世。武家の名残を持つ黒崎家は、海運業と機織り工場を営んでいた。16歳の冬、秀悟の前に現れたのは、月から来たと語る美貌の青年・アンリ。機織りに魅せられた彼は黒崎家に住み込み、やがて家族同然の存在となる。しかし、アンリは、この星を観測する軍人であり、故郷には婚約者がいるという。10年の歳月の中で、秀悟は決して口にできぬ想いを募らせていく。やがて訪れる帰還の時。天では比翼の鳥に、地では連理の枝に。月の光の下、二人が選ぶ未来とは。「青い月の天使~あの日の約束の旋律」に少し出てくるカップルです。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
愛と猛毒(仮)
万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。
和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。
「……本当、バカだよな。お前も、俺も」
七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。
その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる