きみと探す妖精物語

楢川えりか

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日向の夢1 少年のジョシュ

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「起きて、お兄さん!」

 声をかけられて、日向は目を開けた。
 木々からの木漏れ日が降り注いできてまぶしい。何度かまぶたをしばたかせると、声の主がわかった。
 目の前に、榛色の瞳の少年がいて自分を覗き込んでいる。

「ジョシュ……? えっと、きみは?」

 プーカに言われるままに、ジョシュのことを考えて寝たのは確かだが、目の前にいるのは彼よりもずっと幼い。六歳くらいの少年だった。
 それでも、彼の弟と言われたら信じてしまいそうに彼に似ている。

「お兄さん、なんでぼくの名前を知ってるの?」

 不思議そうに少年がたずねた。

「きみは、ジョシュなの? 名字は?」
「アンダーウッド。お兄さんは?」

 答えを聞いて日向は確信を持つ。やっぱりジョシュだ。
 自分のことを知らないようだから、少年のジョシュなのか。
 これは夢なのだろう。彼に会いたいと思って眠ったが、少年の彼に会いたいと思ったわけではないはずなのだが。
 起き上がって立ち上がる。

「日向。ヒナタ・モリノだよ」
「ヒナタ! 素敵な名前だね!」

 日向が名乗ると、少年ははにかむような笑顔を見せる。

「お兄さんがぼくの運命の人なんだ!」
「え?」
「だって、寝る前にぼくは運命の人に出会わせてくれってお願いしたんだよ。それで、素敵なお兄さんがぼくの前で寝ていたんだもの、間違いないよ」

 少年は躊躇わず日向の手をとって、手をつないできた。その子供っぽいしぐさがかわいらしくて、日向は思わず微笑んだ。
 ちょうど、アーニーズに通っていたような年頃だろうか。

「日向、ぼくたちは塔に行かないといけないんだ」
「塔?」

 少年が指し示した方を見ると、森の向こうに尖塔の先端が見えた。
 黒っぽい色彩のせいか、なんだか吸血鬼などの屋敷のような、不吉な雰囲気がある。森の様子も、いつも遊んでいる大学のキャンパスの森よりずっと広いようで、尖塔までがかなり遠い。

「あんな遠くまで行って、大丈夫なの?」
「さっき妖精がきて、みんなあそこに向かってるって。あそこでは知りたかったことがわかるって。急いでいく必要はないけど、あの場所を避けることは人間にはできないって」

 妖精がいたのか。
 じゃあプーカも夢の中に来ているのかもしれない。日向は少しほっとしている自分を感じた。夢なんだから、目を覚ませばそれで解決なのだけれど。

「ねえ日向、一緒に行ってもらえる?」

 握られた手を引っ張られて、日向は我に返った。夢だってこんな、小学校に入るかどうかという年齢の子供を森に置き去りにできない。

「もちろんだよ」

 少年は破顔した。

「やったあ、日向と一緒」

 少年は嬉しそうに、日向にまとわりついてきた。日向も、ジョシュだと思うと気恥ずかしいが、あまりにも子供っぽいので、自然にその肩に手を置いていた。
 時間はいつなのだろう。上を見上げても木々の背が高くて太陽の位置がわからないが、すがすがしい空気が、まだ朝早いような気がする。

「あ、ハート型だ」

 ジョシュがしゃがみこんで、つないでいない方の手で、地面に落ちた葉を拾い上げた。ハート型の葉っぱ。
 プーカの羽根を治すのに必要な葉だった。

「日向、きみにあげるよ。ハートだから。ぼくの心ハートだ」
「ありがとう」

 少年の躊躇いのない告白に少し戸惑いつつも、その気持ちを傷つけたくなくて、日向は微笑んで受け取った。
 それを見たジョシュも笑顔を見せる。
 ふたりがしばらく森の中を歩いていくと、中年の男性が切り株に腰かけて頬杖をついていた。
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