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日向の夢4 啓介
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思う存分飲み食いしたところで、ふたりはブラウン夫妻の家から旅立つことにした。
夫人が渡してくれた菓子を鞄につめる。
「じゃあね、おじさん。ぼくも自分の家を探してみるね」
夫妻に抱きついているジョシュを少し離れたところで眺めて、それから日向はふたりに会釈した。
自分の隣に駆け寄ってきたジョシュに、自然と手を差し出した。
「ジョシュ、行こうか」
「う、うん……」
少し戸惑ったような声がして、それから控えめに手が握られた。
「どうしたの、」
声をかけて気づく。ジョシュの視線が高い。
いつもの彼よりはまだ若干低い感じがするが、彼の姿は十歳くらいになっていた。
「ジョシュ、大きくなってない?」
日向が聞くと、ジョシュも戸惑ったような表情を返してきた。
「うん、なんだかそうみたい」
「夢だからかなあ」
「うん」
日向がつぶやくと、ジョシュがうなずいた。
目の前の彼は、現実のジョシュが見ている夢なのだろうか。さっき会ったときは、自分のことは知らなかったみたいだけれど。
改めて現実の彼だと思うと、手を握っているのが恥ずかしくなってきた。
なんだか控えめに、恥ずかしそうにジョシュが握っているのも、さらに恥ずかしい。
とはいえ、自分から差し出した手を離すというのも変な気がする。
なんとなく微妙な空気になりながら、ふたりは手をつないだまま森を進んだ。
しばらく歩いていると、眼鏡をかけた若者がひざまずいてうろうろしていた。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
ジョシュが早速隣で声をかけている。
「恋人に贈る花を探しているんだが。このあたりで咲いている花で、合う花はあるかな?」
「この花の花言葉は『純粋な愛』、『素朴な可愛らしさ』だから、いいんじゃないでしょうか? 棘があるから、気をつけて」
そう言ってジョシュが示した花が、昼に自分に渡したノイバラであることに気づいて、日向はドキリとする。
「そうか、ありがとう。ただ少し少ないな。もうちょっと、探してみよう」
「大丈夫? ぼくもお手伝いしましょうか?」
「大丈夫、自分でやらないとな。ありがとう」
若者はジョシュの頭の上に手をやった。
日向はジョシュの隣に立って、若者をしきじきと眺める。
(父さん……?)
その若者の笑顔は、父にそっくりだった。父に弟がいたと聞いたら信じそうだ。
「あの、……お名前は?」
日向が躊躇いつつ尋ねると、彼は微笑んだ。
「ごめん、自己紹介がまだだったね。僕は啓介。きみたちは?」
「……!」
「ジョシュです!」
「……日向です」
それは、父の名前だった。
自分の夢なのだから、そんなこともあるかもしれないけど。
ジョシュは日向が動揺していることに気づかないようで、父らしき若者と恋愛トークなどしている。
「僕はそもそも、恋愛に向いてないかも。内気だし気がきかないし」
「大丈夫、お兄さん。大事なのはちゃんと気持ちを伝えることですよ」
「そうだよね、僕もそう思う」
日向は彼らの話を聞いていて、思わず口を挟んでしまった。
「お兄さんは恋人のために色々頑張ってるみたいですが、それで別れることになったら? もちろん今はそんな気はないでしょうけど、ずっと一緒にいたって、最後はどっちかが先に死んだり、認知症になったりするじゃないですか」
夫人が渡してくれた菓子を鞄につめる。
「じゃあね、おじさん。ぼくも自分の家を探してみるね」
夫妻に抱きついているジョシュを少し離れたところで眺めて、それから日向はふたりに会釈した。
自分の隣に駆け寄ってきたジョシュに、自然と手を差し出した。
「ジョシュ、行こうか」
「う、うん……」
少し戸惑ったような声がして、それから控えめに手が握られた。
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声をかけて気づく。ジョシュの視線が高い。
いつもの彼よりはまだ若干低い感じがするが、彼の姿は十歳くらいになっていた。
「ジョシュ、大きくなってない?」
日向が聞くと、ジョシュも戸惑ったような表情を返してきた。
「うん、なんだかそうみたい」
「夢だからかなあ」
「うん」
日向がつぶやくと、ジョシュがうなずいた。
目の前の彼は、現実のジョシュが見ている夢なのだろうか。さっき会ったときは、自分のことは知らなかったみたいだけれど。
改めて現実の彼だと思うと、手を握っているのが恥ずかしくなってきた。
なんだか控えめに、恥ずかしそうにジョシュが握っているのも、さらに恥ずかしい。
とはいえ、自分から差し出した手を離すというのも変な気がする。
なんとなく微妙な空気になりながら、ふたりは手をつないだまま森を進んだ。
しばらく歩いていると、眼鏡をかけた若者がひざまずいてうろうろしていた。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
ジョシュが早速隣で声をかけている。
「恋人に贈る花を探しているんだが。このあたりで咲いている花で、合う花はあるかな?」
「この花の花言葉は『純粋な愛』、『素朴な可愛らしさ』だから、いいんじゃないでしょうか? 棘があるから、気をつけて」
そう言ってジョシュが示した花が、昼に自分に渡したノイバラであることに気づいて、日向はドキリとする。
「そうか、ありがとう。ただ少し少ないな。もうちょっと、探してみよう」
「大丈夫? ぼくもお手伝いしましょうか?」
「大丈夫、自分でやらないとな。ありがとう」
若者はジョシュの頭の上に手をやった。
日向はジョシュの隣に立って、若者をしきじきと眺める。
(父さん……?)
その若者の笑顔は、父にそっくりだった。父に弟がいたと聞いたら信じそうだ。
「あの、……お名前は?」
日向が躊躇いつつ尋ねると、彼は微笑んだ。
「ごめん、自己紹介がまだだったね。僕は啓介。きみたちは?」
「……!」
「ジョシュです!」
「……日向です」
それは、父の名前だった。
自分の夢なのだから、そんなこともあるかもしれないけど。
ジョシュは日向が動揺していることに気づかないようで、父らしき若者と恋愛トークなどしている。
「僕はそもそも、恋愛に向いてないかも。内気だし気がきかないし」
「大丈夫、お兄さん。大事なのはちゃんと気持ちを伝えることですよ」
「そうだよね、僕もそう思う」
日向は彼らの話を聞いていて、思わず口を挟んでしまった。
「お兄さんは恋人のために色々頑張ってるみたいですが、それで別れることになったら? もちろん今はそんな気はないでしょうけど、ずっと一緒にいたって、最後はどっちかが先に死んだり、認知症になったりするじゃないですか」
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