きみと探す妖精物語

楢川えりか

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日向の夢6 塔への誘い

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「……嘘つき」

 日向はぼそりとつぶやいて、花冠を投げ捨てた。
 今の父親は、全然大丈夫なようには見えない。

「日向、大丈夫?」

 花冠を投げた日向の手を、まるで怪我した人の手のようにやさしくとって、不安そうにジョシュが覗き込んでくる。
 そのしぐさが頭を下げるようになっていることに気がついて、日向は彼を見た。
 日向の知っている彼より大きく、十五、六歳に見える。
 よくわからないが、彼はこの夢では誰かと出会うたびに成長しているようだった。
 大人っぽい彼に、日向はつい気を許して気持ちのままに声を荒げた。

「大丈夫なんかじゃないよ。父さんは母さんにおいていかれて、毎日落ち込んでるくせに、僕が母さんの話をしたら、いつも曖昧に話を逸らすくせに!」
「え、今のふたりって……」
「わからない、僕の夢だし。もしかしたら僕は、母さんが僕たちに会いにこないから、妖精の女王だったらまだ仕方ないなって思ってこんな夢を見てるのかも。でも母さんが妖精か人間かは問題じゃない。父さんと母さんは、変わらない愛なんかじゃなかった。それが本当なんだ」
「日向……」

 ──恋なんて一夜のお祭り騒ぎだからな。

 寝る前にプーカが言ったことを思い出す。

「恋なんて、そんないつなくなるかわからない、曖昧で壊れやすいものを、なんでみんな大切に抱えてるんだよ」

 ジョシュは真剣な顔で日向の顔をじっと見ている。やがて、決意したように言った。

「日向、一緒に塔に行こう。塔で、これから先のことを、一緒に見よう。これからのぼくたちがどんなふうに生きて、何が起きて、どんな風に最期を迎えるのか。そうしたら恋を信じられるだろう?」

 日向は息を呑んだ。
 塔。
 その言葉になぜか、背筋がひやりとする。
 塔ってなんだろう?

 ──みんな行くんだから。

 ミスター・ブラウンはそう言ったけれど、なんだか恐ろしいもののような気がする。
 これから、自分とジョシュがどうなるか。
 その未来をこれから本当に見られるとして。それが幸福に満ちたものだとして、自分は見たいだろうか。
 見たいことは見たい。だが。
 怖い。

「ごめん、ジョシュ。僕は塔が怖い……」

 そう言って、握られていた手を離す。

「日向──?」

 手を離されて何か言いたそうなジョシュの表情が、まぶしさに眩む。光が視界いっぱいに広がった。
 目が覚める──。
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