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Season 3
第二十一話:魔法学園の朝と森の影
しおりを挟むエリクサの朝は、柔らかな陽光が街路を照らし、学園の鐘が遠くに響く頃に始まる。アリスは雑貨屋クロノスの裏庭から、エリクサンダルを履いて軽くストレッチをし、深呼吸をする。 「よし、今日も走って通学だ!」と気合を入れ、軽快なペースで学園へと向かう。
学園までの道のりは森の小道を抜け、約1時間のランニング。馬車を使う金銭的余裕がないアリスにとって、これは毎日の鍛錬でもある。汗を流しながら、風魔法の練習を兼ねて周囲の空気を操り、抵抗を減らしてスムーズに進む。息が上がる頃には、学園の門が見えてくる。
学園には立派な寮があるのだが、アリスの自宅である雑貨屋クロノスは学園から比較的近く、通いが特別に認められた。ミャウが店番を引き受けてくれているおかげで、心置きなく学園生活を送れている。 「アリス、行ってらっしゃい! お店は私に任せて!」と毎朝、猫耳をピクピクさせて見送ってくれるミャウの姿が、アリスの背中を押す。
雨の日はデイジーが作ってくれた防水魔法のカバンが役立つ。水を弾く不思議な布地で、教科書も服もびしょ濡れにならずに済む。「デイジー、ありがと! これで雨の日も走れるよ!」とアリスは感謝の言葉を胸に、今日も学園へ。
到着したアリスは、汗だくの体を学園の裏手にある簡易更衣室へ向かう。走って通学するアリスの学園の朝は、シャワーで汗を流し着替えることから始まる。
最初は学園内の普通のシャワーを使っていたが、いつの間にかルビーとエマが巻き込まれ、三人で独自のルーチンが出来上がっていた。ルビーが火魔法で水を温め、エマが水魔法で柔らかなシャワーを生成。アリスは最後に風魔法でブワッと一気に体を乾燥させる。それが3人の日課になっていた。
ある朝、更衣室でルビーが手を挙げ、「よし、私の『ファイア・ウォーム』で熱々のお湯に! 父さんが鍛冶は火加減が命だって言ってたわ。最初は温度が安定しなくて熱すぎたりぬるかったりしたけど、だんだん精度が上がってきたわよ!」と炎を操る。
エマは本を抱えたまま、静かに呟く。「…『アクア・シャワー』…」。 水の流れが優しく降り注ぎ、温水シャワーになる。 アリスは笑いながら、「じゃあ、最後に『ウィンド・ドライ』で仕上げ!」と風を呼び、体全体を包む。 ブワッと心地よい風が吹き、髪も服も一瞬でサラサラに。
「ふふ、みんなの魔法のおかげで、朝からスッキリ!」とアリスが言うと、ルビーは満足げに頷く。「当然よ! 庶民パワーで、貴族のシャワーより豪華だわ!」エマは前髪を直し、小さく頷く。「…便利…また明日も…」。
授業が始まる前に、三人は学園の庭で軽くおしゃべり。リアノンが通りかかり、「アリス、今日も走ってきたの? 競技会が近づいてるわよ。私のトレッドミルで一緒に練習しない?」と誘う。
アリスは目を輝かせ、「いいですね! 風魔法で加速して、絶対上位を狙いますよ!」
ルビーが割り込み、「私も参加しますわ! 火魔法で勢いづけちゃいます!」
エマは本から顔を上げ、「…応援…します…」。そんな和やかな朝が、アリスの学園生活を彩っていた。
ある日の課外授業は、森での実地訓練。ドクター・スパークル教授が率いるクラスで、魔法の応用を学ぶものだ。
「ふははは! 今日は森でモンスター観察だぜ! 雷魔法でビリビリ体験もいいけど、安全第一だ!」と教授が雷冠をピカピカさせながら説明。
先輩たちが下級生をリードし、アリス、ルビー、エマの三人組も森の奥へ進む。 木々が密集する中、突然の異変が起きた。地面が揺れ、巨大な影が現れる――ジャイアントトードだ! 体長3メートルはあろうかという巨大なカエルで、毒々しい緑色の皮膚がぬめり、大きな口から粘つく舌を伸ばす。
「みんな、逃げろ!」先輩たちが叫び、下級生を後ろに下げ、教授が雷魔法を構える。 だが、ジャイアントトードはアリスたちに向かって跳躍してきた。 ルビーが火魔法を放とうとするが、舌が絡みつき動きを封じられる。エマは本を落とし、水魔法でバリアを張ろうとするが、間に合わない。
アリスは咄嗟に手を伸ばし、乾燥魔法を唱える。「『ウィンド・ドライ・エンハンス』!」 風が渦を巻き、ジャイアントトードの体に集中。一瞬で水分が抜け、巨大な体がカサカサの干物のように縮み、動かなくなった。
みんなが息を吐き、安心の表情を浮かべる。先輩の一人がアリスに駆け寄り、「すごい! アリスの魔法で一撃だよ!」
ルビーは舌を解き、「アリス、ナイス! 私の火より速かったわ!」
エマは本を拾いながら、「…ありがとう…アリス…」。
教授のドクター・スパークルは雷を抑え、感心したように頷く。
「ふはは、風魔法の乾燥応用か。実戦向きだぜ!」みんながアリスを讃え、拍手が起きる。
アリスは照れ笑いし、「えへへ、ただの保存食のテクニックだけど、役立ってよかった!」。
だが、教授は干物のジャイアントトードを調べ、眉をひそめる。 「こんなところに生息していないはずのジャイアントトードが現れるなんて…。この森は安全区域のはずだぞ。誰かが放ったのか?」
周囲を見回すが、異常はない。遠くの木陰で、こちらを見ている人物の影が一瞬見えた。黒いローブをまとい、すぐに姿を消す。
教授は気づかぬまま、「まあ、偶発事故だな。みんな、帰るぞ!」と声を上げるが、 アリスはかすかな違和感を覚える。 「あれ、誰かいたような…?」。
森から学園に戻る道中、リアノンが心配げに迎えに来ていた。 「アリス、大丈夫? 噂で聞いたわ。ジャイアントトードを干物にしたって!」
アリスは笑って、「風魔法のおかげです! でも、教授のおっしゃる通り、変ですよね…」。
デイジーは後で連絡を受け、「父の魔道具で、森の監視装置を作ろうか?」と提案。
ミャウは店で待っており、「アリス、無事でよかった! 冒険続きだね」。
その夜、アリスは雑貨屋のベッドで考える。星見の塔の黄金の輝き、森の影…何かが繋がり始めている気がする。だが、今は学園の競技会に集中だ。
「風のように駆け抜けて、みんなを守るよ!」 エリクサンダルがベッドサイドで輝き、明日への決意を固めた。エリクサの春は、謎と冒険を孕みながら、穏やかに続いていた。
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