サンダルで駆け抜ける異世界ライフ

medaka

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Season 2

第十二話:高地のトレーニング、星の導き

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雑貨屋クロノスの朝、木製の看板が朝陽に輝く。マタタビ茶の香りが漂い、ミャウが棚を整理する姿が微笑ましい。
アリスはカウンターで帳簿を閉じ、クロノスの鍵を手に呟いた。「マタタビ茶は大当たりだけど、もっと冒険者の悩みを解決したい。」
その瞬間、鍵が金色に光り、壁にポータルが現れた。
「またか!今度はどこ?」
彼女はバッグにエリクサンダルを詰め、ポータルへ飛び込んだ。  

目を開けると、そこは地球の広々とした高地トレーニング基地だった。
青い空の下、遠くに雪を頂く山々がそびえる。ランナーやアスリートが集い、トレーニングウェアで準備を進める。アリスは暑さに上着を脱ぎ、「エリクサの冬と全然違う…」と戸惑った。
スタッフが叫んだ。「あなたも参加者?はやくバスに乗ってください!」
アリスは急いでバスに飛び乗り、高地への旅に出た。

バスの中、隣に座った若い男が話しかけた。「僕はケン。初めてかい?」
「ええ、アリスです。高地トレーニングってどんな感じ?」と笑顔で返す。
ケンは興奮気味に語った。「酸素が少ない高地で走ると、体が適応して持久力や酸素効率が上がる。マラソンランナーに大人気だよ。でも、慣れるまではキツイ。ゆっくり始めるのがコツ。」

アリスは興味をそそられ、「酸素が少ないと大変そう。でも、エテルニアの魔法の山脈でも似た環境があるかも。」
ケンは頷き、「最初は疲れるけど、平地でのパフォーマンスが激変する。休息と栄養も大事だ。」
バスは高度を上げ、都市の喧騒から静かな山岳地帯へ。参加者の熱気がバスを満たし、アリスは新たな挑戦に胸を躍らせた。  

高地に到着すると、涼しい風が吹き抜ける美しい山岳地帯が広がった。ランナー、自転車選手、スキーヤーなど、多様なアスリートが集まる。アリスは初心者グループでトレーニングを開始。酸素の薄さが肺に響き、ゆっくり走りながら呼吸を整えた。
「マラソン大会のスタートラインを思い出すな…」と呟き、エリクサンダルの軽さに励まされた。

座学では、講師が説明した。「高地では酸素が少なく、身体は赤血球を増やして効率を上げる。持久力が向上するが、適応に数日かかる。疲労や高山病に注意。」
アリスはエリクサでのマラソン準備を思い出し、メモを取った。

だが、初日の午後、アリスは頭痛とめまいに襲われた。高山病の初期症状だ。座学の途中で外に出ると、ケンが心配そうに近づいた。「大丈夫?」
「頭が痛くて…」とアリス。
ケンは水を渡し、「高山病だ。酸素が少ないから、最初はよくある。水分補給して休もう。」
彼女は深呼吸し、高地の澄んだ空を見上げた。

ケンが提案した。「近くに乾物店がある。涼しくて落ち着けるよ。」
アリスは頷き、彼に連れられて小さな木造の店へ。店内は乾燥肉、野菜、ハーブの香りに満ち、棚にはビーフジャーキー風の肉、乾燥ジャガイモ、ローズマリーの束が並ぶ。店主の老女が微笑んだ。
「高山病かい? 座ってな。ハーブ茶を淹れるよ。」  

アリスは椅子に座り、ローズマリー茶を飲んだ。ほのかな香りが頭痛を和らげる。
店主が語り始めた。「高地の乾物は命綱だ。乾燥気候と強い日差しで、肉も野菜も長持ちする。」
彼女はビーフジャーキー風の乾燥肉を差し出した。「高タンパクで、トレーニング後の回復に最適。ランナーや登山者に人気だ。」
アリスは一口かじり、塩気と旨味に驚いた。「これ、エリクサの冒険者にぴったり!」

店主は乾燥ジャガイモを手に続けた。「凍結乾燥で栄養を閉じ込める。高地の夜は冷えるから、こうやって水分を抜く。スープや携行食にいい。」
アリスはジャガイモを手に、「凍結乾燥…。日本の高野豆腐と同じようなもの?エリクサの魔法のキノコでもできるかも。」

最後に、店主がローズマリーとタイムの束を見せた。「ハーブは疲労を癒し、風味を加える。高地では体が疲れるから、茶や料理で使うんだ。」
アリスはマタタビ茶を思い出し、「これをエリクサで再現したら…高地トレーニングキットに最高だ!」
彼女は呟いた。「これはエテルニアでも生かせるかもしれない。」

店主は笑い、「乾物は高地の知恵。保存性と栄養で、どんな冒険も支えるよ。」
アリスは乾燥肉5袋、乾燥ジャガイモ3袋、ローズマリーとタイムを各1束購入。例によって現地の通貨(約100ルミネ)とエリクサンダル1足で支払い、店主のレシピメモを受け取った。
「魔法の風で乾燥させれば、エリクサでもできる」と確信した。  

乾物店で休んだアリスは頭痛が軽減し、トレーニングに戻った。ケンのアドバイス通り、ゆっくり走り、体を慣らした。夜、参加者は温泉のような浴場で疲れを癒した。温かいお湯に浸かり、アリスは筋肉の回復を実感。「ミャウにマタタビ茶を飲ませたいな」と笑った。

夕食は栄養豊富な献立だった。グリルしたサーモン(オメガ3で抗炎症)、キヌアと野菜のサラダ(抗酸化作用)、かぼちゃとニンジンのスープ(免疫力)、玄米(エネルギー補給)、バナナとヨーグルトのパフェ(カリウムとプロテイン)。

栄養士が説明した。「高地では酸素が少ない。抗酸化作用やタンパク質で体を守るんだ。」アリスは乾物店のジャーキーを思い出し、「乾燥肉もこんな食事に合う」とメモした。

食後、アリスはひとりで高地の村の広場に出て、星空を見上げた。標高2000mの澄んだ空に、無数の星が輝き、まるで手の届くところにあるようだった。南半球の夜空に浮かぶ南十字星が、十字形の光でひときわ目立っている。アリスはその輝きに導かれるような感覚を覚えた。

すると、突然足元の地面が消え、身体が浮き上がるような感覚に襲われた。目の前に広がる星空が近づき、アリスは星々に吸い込まれるような体験をした。無数の星が彼女を包み込み、クロノスの鍵がポケットの中で温かく脈打つ。星の光の中、遠くで誰かの声が聞こえた気がした。「アリス、導きに従いなさい…」

次の瞬間、アリスは再び広場に立っていた。星空は変わらず輝き、彼女は息を整えながら呟いた。「星の導き…エリクサの仲間たちと、これからも走り続けよう。」クロノスの鍵が微かに光り、次の冒険を予感させた。


翌朝、高山病が落ち着いたアリスはグループランニングに参加。強度を上げ、仲間と励まし合いながら山岳ループを走った。座学で自己管理とチームワークを学び、ケンの「体を理解すれば、高みを目指せる」という言葉が響いた。アリスは高地の乾物とトレーニングの知恵を胸に、クロノスの鍵を握った。ポータルが再び光り、エリクサへ戻る時が来た。  

雑貨屋クロノスに戻ると、ミャウがカウンターでマタタビ茶を飲んでいた。「アリス! どこ行ってたの?」
アリスは笑い、乾燥肉とジャガイモを見せた。「高地トレーニングだよ。酸素が薄くて大変だったけど、こんな乾物を学んできた!」
ミャウはジャーキーをかじり、「うまい! 高地のキャンプで食べてた味だ!」
彼女は目を輝かせ、「これ、冒険者に売れるよ。私が仲間にも広める!」

アリスは商人の知恵を思い出した。
「人を知り、商品を知り、自分を知る。」
高地のランナーや冒険者のニーズに応え、乾燥肉やハーブでクロノスを進化させる。
彼女は「高地トレーニングキット」を計画。マタタビ茶、乾燥エネルギー・フルーツ、乾燥肉、魔法のハーブをセットにし、エリクサの魔法の山脈でのキャンプ需要を狙う。

    
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