サンダルで駆け抜ける異世界ライフ

medaka

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Season 2

第十三話:トレッドミルの冒険、冬の鼓動

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エリクサの冬は容赦なく訪れていた。雪が石畳を白く覆い、冷たい風が市場の屋台を震わせていた。エネルギー・フルーツの香りが漂う朝も、凍てつく寒さにランナーたちの足音は途絶えがちだった。アリスは雑貨屋クロノスのカウンターで、窓から降り積もる雪を見つめていた。エリクサンダルの青とオレンジのストライプが棚に並ぶが、彼女の心は落ち着かない。「こんな寒さじゃ、公園の小道も走れない…。でも、走ることを諦めたくない。」

ランウェル博士の『Running & Being』の言葉が胸に響く。「走ることは、自己探求…。どんな環境でも、心と対話する時間だ。」エリクサンダルの成功でエリクサにランニングブームを巻き起こしたアリスだが、冬の到来は新たな試練だった。ブラック企業での過労の日々を思い出す。締め切りのプレッシャー、栄養ドリンクの動悸。あの頃、走るなんて想像もできなかった。今、走ることは彼女の生きがいだ。

クロノスの鍵が金色に光った。棚の奥、非売品の青白磁の茶碗や室町時代の刀が魔法のランタンに照らされ、鍵の輝きと共鳴する。「クロノス…冬でも走る方法を教えて。」アリスは鍵を握り、壁に現れた鍵穴に差し込んだ。光の渦が広がり、ポータルが開く。彼女はバッグにエリクサンダルとマタタビ茶を詰め、躊躇なく飛び込んだ。

ポータルの向こうは、雪に覆われた広大な平原だった。冷たい風が頬を刺し、アリスはエリクサンダルの紐を締め直した。遠くに煙突から煙が上がる建物が見え、凍える手を擦りながら歩き始めた。そこはランウェル博士の研究室だった。暖炉の火が部屋を暖かく照らし、棚には医学書や古いランニングシューズが並ぶ。博士は書類の山から顔を上げ、眼鏡の奥で目を細めた。

「アリス! こんな寒い日にクロノスの鍵か。何か面白い挑戦か?」博士は興味深そうに尋ねた。
アリスはコートを脱ぎ、暖炉に手を近づけた。「博士、エリクサも冬本番で、外で走るのが厳しくて…。ランニングを続ける方法を教えてください!」
博士は顎を撫で、考え込んだ。「冬のランニングか。私も若い頃、雪の中で走って風邪を引いたよ。だが、ランニングの精神は季節を問わない。トレッドミルという装置を知ってるか?」

アリスは首を振った。「トレッドミル? 初めて聞きました。それって何ですか?」
博士は立ち上がり、研究室の奥へ案内した。そこにはベルト状の表面が回転する機械が置かれていた。金属の枠に固定され、制御盤が淡く光る。「これがトレッドミルだ。室内で走るための装置で、ベルトの動きでランニングを再現する。天候に左右されない。私がフルマラソンの研究で使ってるんだ。」

アリスの目が輝いた。「これならエリクサの冬でも走れる! どんな効果があるんですか?」
博士は微笑み、トレッドミルの制御盤を指した。「トレッドミルの効果は多岐にわたるよ。まず、心肺機能を強化する。屋外と同じように心拍数を上げ、持久力を鍛えられる。私の患者で、心不全の老人がトレッドミルで歩き始め、半年で屋外の短距離を走れるようになった。次に、関節への負担が少ない。ベルトは地面より柔らかく、膝や足首への衝撃を軽減する。特に冬の凍った道での転倒リスクを避けられる。」

アリスはメモを取りながら頷いた。「エリクサの冒険者にも良さそう! 怪我の予防になるんですね。」
博士は続けた。「それだけじゃない。トレッドミルは自己探求の場でもある。速度や傾斜を調整して、自分のペースで走れる。走りながら考える時間は、ストレスを軽減し、精神的な強さを育む。私の研究では、定期的にトレッドミルを使った患者のストレスホルモンが20%低下したデータもある。君がエリクサで広めたランニングブームに、トレッドミルは新たな次元を加えるだろう。」

アリスは目を丸くした。「ストレス軽減にそんな効果が! エリクサンダルで走る喜びを広めたけど、冬は室内でそれが続けられるなんて…。博士、雑貨屋クロノスでトレッドミルを売りたいんです。どうすれば導入できますか?」
博士は椅子に腰を下ろし、眼鏡を外して拭いた。「素晴らしい意気込みだ、アリス。君ならエリクサのランニング文化をさらに広められる。だが、トレッドミルはただの機械じゃない。走る哲学を室内に持ち込むものだ。自己探求や健康を支える道具として、適切に使ってほしい。設計には精密な技術が必要だ。エリクサに機械に詳しい職人はいるか?」

アリスは少し考えた。「冒険者ギルドで探せば、魔道具師が見つかるかも。博士、どんな技術が必要ですか?」
博士は制御盤の仕組みを説明した。「速度や傾斜を滑らかに調整するには、安定したエネルギー源が要る。私のトレッドミルは電気だが、エリクサなら魔石や魔法の結晶が適しているだろう。心拍数を測るセンサーや、走行距離を表示するスクリーンも、魔法で再現可能だ。安全装置も忘れずに。急停止機能や転倒防止の仕組みは、ユーザーの信頼を得るために不可欠だ。」

アリスはメモをびっしり書き込み、興奮を抑えきれなかった。「魔石を使った魔道具なら、エリクサの技術で作れそう! 博士、ありがとう! これでエリクサにトレッドミルを広める第一歩が踏めそうです。」
博士は手を振った。「頑張れ、アリス。冬のエリクサを走る街に変えるんだ! もし設計で困ったら、またポータルで戻ってきなさい。」

アリスはクロノスの鍵を握り、ポータルを開く準備をした。鍵が温かく脈打ち、彼女の決意を後押しするようだった。
エリクサに戻ったアリスは、雑貨屋クロノスでミャウと話した。カウンターでマタタビ茶を飲むミャウが、尾を揺らしながら尋ねた。「アリス、どこ行ってたの? またポータル?」
「ランウェル博士のところ! 冬でも走れるトレッドミルって装置を学んできた。これ、クロノスで売ったらランナーたち喜ぶよ!」アリスは興奮気味に話した。
ミャウは目を丸くした。「室内で走る機械? 猫族にはマタタビ茶で十分だけど…面白そう! どんな効果があるの?」

アリスはメモを見ながら説明した。「心肺機能を鍛えたり、膝への負担を減らしたり、ストレスも軽減するんだって。博士の患者がトレッドミルで健康を取り戻した話、すごかったよ!」
ミャウは尾を振って笑った。「それ、猫族の昼寝にも良さそう! でも、どうやって作るの?」
「それが問題。魔道具の専門家が必要だよ。冒険者ギルドで探してみる。」アリスはバッグを手に、ギルドへ向かった。

冒険者ギルドのホールは賑わっていた。討伐や探索の依頼が並ぶ掲示板に、技術者の情報も掲示されている。アリスは「魔動機械」「魔法工学」「自動化装置」のキーワードを探した。そこへ、ギルドマスターが近づいてきた。
「おや、アリス! 雑貨屋クロノス好調だな。何か面白い依頼か?」彼は恰幅のいい笑顔で尋ねた。
「ギルドマスター、トレッドミルって装置を作りたいんです。室内で走れる魔道具で、冬のランニングを支えるもの。魔道具師を探してるんですけど…」アリスは熱く説明した。

ギルドマスターは顎を撫でた。「トレッドミルか。健康ブームにぴったりだな。それなら、デイジーって若い魔道具師を推薦する。亡魂の父が高名な魔道具師で、彼女は魔法と機械の融合に才能がある。少しシャイだが、腕は確かだ。」
「デイジーさん? 彼女ならトレッドミル作れるかな?」アリスは期待を込めて尋ねた。
「君の情熱を伝えれば、絶対乗ってくる。工房の場所を教えてやるよ。」ギルドマスターは地図を渡し、デイジーの工房を指した。
アリスは礼を言い、工房へ向かった。静かな路地に佇む工房は、花の香りが漂う小さな建物だった。ドアをノックすると、眼鏡をかけた若い女性が顔を出した。緑色の肩までの髪はややボサボサで、作業着に油汚れ。彼女がデイジーだった。
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