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Season 2
第十四話:虹色サラマンダーと、輝く誓い
しおりを挟む「デイジーさん? 私はアリス、ギルドマスターの紹介で来ました。トレッドミルって装置を作りたいんです。協力してもらえますか?」アリスは丁寧に切り出した。
デイジーは眼鏡を押し上げ、驚いたように目を見開いた。「トレッドミル? 聞いたことないけど…面白そう。父は魔道具で人々の生活を豊かにしたかった。私もその精神を引き継ぎたい。どんな装置か教えて!」
アリスはランウェル博士から学んだトレッドミルの概念を説明した。室内で走れるベルト式の機械で、速度や傾斜を調整でき、心肺機能を強化し、関節への負担を軽減、ストレスを軽減する。彼女の熱意に、デイジーの眼鏡が魔法のランタンの光を反射し、目が輝いた。
「挑戦だわ! ランニングを愛する人々のために、最高の魔道具を作るよ。アリス、一緒にやろう!」デイジーは決意を込めて言った。
デイジーの工房は魔法と機械が融合する空間だった。棚には魔法の結晶や金属部品、壁には設計図が貼られ、魔法のランタンが光る。
二人はトレッドミルの設計に取りかかった。アリスは「速度と傾斜を自由に変えられるように」と提案。デイジーは魔法の結晶を手に設計図に線を引いた。
「ベルトの速度は魔法で調整する。傾斜はレバーで勾配を再現するよ。」デイジーは呪文を唱え、制御盤を調整した。
アリスは「安全も大事。急停止や転倒防止の機能をつけて。」
「もちろん。急停止用の魔法陣と転倒防止のバリアを組み込むよ。」デイジーは安全装置を追加し、試作品の骨組みを組み始めた。
素材選びで、デイジーが提案した。「耐久性と軽さが必要だから、モンスターの素材が最適。ドラゴンの鱗やフェニックスの羽なら、魔法の伝導率も高い。」
アリスは顔をしかめた。「ドラゴンの鱗? 入手難易度星5じゃない…。もっと手頃な素材は?」
デイジーは考え、「ワイバーンの鱗と骨ならどう? 耐久性は十分だよ。」
「それでもレアだけど…頑張ってみるか。」アリスは苦笑した。
試作は進んだが、問題が浮上した。ベルトの動きが不安定で、ガタつき、速度がブレる。デイジーは制御盤を調べ、眉を寄せた。「魔石の出力が足りない…。安定させるには虹色サラマンダーの魔石が必要だ。」
アリスは肩を落とした。「虹色サラマンダー? ギルドの報酬で星4の難易度よね…。すぐには無理だ。」
デイジーは呟いた。「今の魔石でも動くけど、貴族が求める滑らかな動きには程遠い。父の魔道具は完璧だった。私も中途半端なものは作りたくない。」
休憩中、デイジーは自分の生活を語り始めた。「最近、朝のランニングが日課なの。アリスのエリクサンダルで走り出したんだ。研究で夜更かししてたけど、朝走るために早く寝るようになったよ。」
アリスは笑顔で頷いた。「エリクサンダル、気に入ってくれて嬉しい!」
デイジーは眼鏡を外し、続けた。「父は病気で亡くなったけど、私の健康を気にかけてた。研究に没頭する私に、散歩しなさいって。」
彼女は父親の信念を語った。「父は魔物に襲われた時、冒険者に助けられた。それから『人の命を守る魔道具を作る』が信念になったの。」
デイジーは小さな箱を取り出し、中の救命信号装置を見せた。「これ、父が作ったの。危険な時にギルドに救援を求める装置。魔法で遠くまで信号を送れる。父は冒険者の命を救うことで、多くの命を守れると信じてた。」
アリスは感心した。「こんな小さな道具で命を救えるなんて…。デイジーさんのお父さん、すごい人だったんだね。」
デイジーは頷き、「父の信念を引き継ぎ、私も命を守る道具を作る。トレッドミルもその一部よ。健康を支えて、みんなの生活を豊かにしたい。」
アリスは胸が熱くなった。「私たちのトレッドミルは健康や命を守る装置だ。博士の哲学と、お父さんの信念が繋がってる!」
費用も課題だった。アリスは呟いた。「これ、結構お金かかるね。」ワイバーンの素材や魔石、精密部品が高価だった。デイジーは笑顔で答えた。「最初は貴族向け。エリクサの貴族は新しい魔道具を競って買うよ。」
アリスは目を丸くした。「確かに、エリクサンダルも最初は高級品だった。」
デイジーは頷いた。「貴族にとって、トレッドミルは健康と技術の象徴。売れれば一般向けにも広められるよ。」
アリスは納得した。「じゃあ、紫と金の豪華なデザインにしよう!」
二人はトレッドミルの外装に魔法の花の文様を刻む計画を立て、制御盤に輝く結晶を配置した。アリスは「酸素効率を高める魔法を組み込めない? 持久力が上がるかも。」
デイジーは目を輝かせ、「いいね! 風魔法で空気を循環させるよ。」彼女は呪文を設計に追加した。
雑貨屋クロノスで、ミャウがマタタビ茶を飲みながら尾を振った。「アリス、虹色サラマンダーの魔石の噂を聞いたよ! 火炎山脈の魔獣で、星4の難易度。ギルドに討伐依頼が出てた!」
アリスは目を輝かせた。「ミャウ、最高! ギルドで確認する!」彼女は冒険者ギルドへ急いだ。
ギルドの掲示板には「虹色サラマンダー討伐:報酬5000ルミネ」とあった。
ガルドが掲示板の前で、ミャウの隣に立ち、頬を赤らめながら呟いた。「お、俺が魔石を取ってくるぜ…アリス、トレッドミルに必要だろ? ミャウも、えっと、来るよな?」
ミャウは尾をぴくっと動かし、目を逸らしてマタタビ茶をちびちび飲んだ。「…まぁ、猫族の嗅覚で魔石くらい見つけられるし? ガルドがちゃんと戦うなら、行くよ。」二人の間に妙な間が生まれ、アリスはくすっと笑った。
アリスは頷いた。「二人とも、頼りにしてる! でも、星4の魔獣は危険だよ。」
ガルドは咳払いして胸を張った。「ハーフマラソンの訓練で持久力はバッチリだ。剣技も…な、ミャウがそばにいれば、楽勝さ!」ミャウは「ふんっ」と鼻を鳴らし、頬を少し染めて尾を振った。
ギルドマスターが言った。「虹色サラマンダーは火炎山脈の洞窟にいる。魔石は魔道具に最適だが、炎と幻惑の魔法を使う。準備しろよ。」
アリスは「クロノスで何か用意できるよ。」
ガルドはミャウをちらっと見て、「エリクサメイトとマタタビ茶…ミャウの分も頼むぜ。」
ミャウは「べ、別に私が飲むわけじゃないよ! 予備!」と慌てて言い、アリスは微笑んだ。
アリスはエリクサメイトとマタタビ茶を渡し、二人を見送った。「気をつけて! 魔石、絶対手に入れよう!」ガルドはミャウに「ほ、ほら、行くぞ!」と声をかけ、ミャウは「先に走らないでよね!」と追いかけ、ぎこちない距離感で出発した。
数日後、ガルドとミャウが戻った。ガルドは煤にまみれ、ミャウは尾を誇らしげに振っていた。ガルドが布袋から虹色の魔石を取り出し、ミャウをちらっと見て呟いた。「魔石ゲットだ。ミャウの嗅覚が…いや、すげぇ助かったぜ。」
ミャウはマタタビ茶を飲んで目を逸らし、「ふ、ふん! ガルドの剣がなかったら、私だけで十分だったけど?」と強がったが、尾の先が小さく揺れた。
アリスは二人を抱きしめた。「ありがとう! これで完成する!」彼女は魔石を手に工房へ急いだ。
デイジーは魔石を見て、眼鏡を光らせた。「完璧な輝き! 制御盤が安定するわ。」二人は深夜まで作業に没頭した。工房は魔石の虹色で輝き、金属音と呪文が響いた。
アリスはワイバーンの鱗をベルトに固定し、デイジーは魔石を制御盤にはめ込んだ。心拍センサーとスクリーンを調整し、風魔法を刻む。アリスが呟いた。「デイジーさん、父さんの信号装置みたいに、このトレッドミルも命を守る道具になるよね。」
デイジーは微笑んだ。「父の信念と君の情熱が詰まってる。完璧にするよ。」
深夜、時計塔の鐘が鳴る中、二人は最後の調整を終えた。虹色サラマンダーの魔石が光り、トレッドミルのベルトが滑らかに動き始めた。ガタつきは消え、紫と金の文様が輝く。試作品一台が完成した。
アリスは笑みを浮かべた。「やった…! 一台、できた!」
デイジーは汗を拭った。「父も喜んでくれる。スタートラインに立てたね。」
二人は工房の床に座り、マタタビ茶を飲んだ。アリスはクロノスの鍵を手に呟いた。「走る喜びをどんな季節でも届けること…。」鍵が金色に光り、次の冒険を予感させた。トレッドミル一台の完成は、エリクサの冬を照らす第一歩だった。
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