悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

175.悪役令嬢は錬金術について知る

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「錬金術とは一種の魔法だと言い伝えられているわ。現在には残っていない一種の【失われた遺産《アーティファクト》】のようなモノね」

 と、お母様は【失われた遺産《アーティファクト》】の一種という言葉にそういう使い方のある言葉だったの? と、少し感心したりしちゃったりする。

「では、技術的にどういったモノと、いうのは――」
「ええ、全く分からないわ。一部の【失われた遺産《アーティファクト》】は錬金術によって造られていると伝わっているから、実際にあるのだと多くの者知っているわ」

 お母様はそう言いながら微笑む。伝わっていると言う場合、多くは何かの書物に書かれている事が多いのだけど、私が読んだことが無い物なのかしら。

「何かの書物に書かれているのですか?」
「ええ、そうよ。聖イーフレイ帝国の貴族が書いたのは分かっているけれど、年代は幾つか予想みたいなのはあるんだけどね。『リンラッドのつまらない日記』という書物よ」

 つまらない日記と書かれている――いや、呼ばれているのかもしれない。内容が本当につまらなかったらヤバそう。

「この書物はとある女性が日々の生活について、あれこれ書いた物になるんだけど――まぁ、エステリアには退屈な書になるかもしれないわね。正直、私も本当は読むつもりも無かったくらいだもの」
「でも、お母様は読んだのですね?」
「ええ、読んだわ。そうね、エステリアが読みたいというのなら用意しましょう。バネッサ、『リンラッドのつまらない日記』を書倉から出しておいて」

 と、お母様が言うと控えていたバネッサの気配がスッと現れて彼女は「畏まりました」と、一礼して、再び気配が消える。うん、やっぱり彼女は『忍者』みたいだわ。最近はエルーサも気配を消す練習をしているようだけど、気配を感じないのは少し嫌なんだけどね。

「ただ、恐ろしく退屈かもしれないわよ」
「まぁ、もしかすると嵌ることがあるかもしれませんよ? 一応、歴史的な価値がある書物なのでしょう?」
「一応、そうとも言えるわ。書かれた年代は不明なのだけど、確実に千年ほど前なのは確かではあるのよ」

 千年ほど前の書物が残っているところが凄いけど、たまにあるのよね。かなり古い書物なのに凄く綺麗に残っているヤツ。我が家の図書室でもそういったブツを読んだことがあるもの。

「さすがに千年とは凄いですね」
「ええ、現在の紙質でも、それだけの長い期間を普通は保存出来ませんからね。ただ分かっているのは魔法が付与されているから保存出来ていると考えられているわ。まぁ、実際に魔法の形跡がある物も存在しているわ」
「お母様でも解析出来ないようなものなのですか?」

 私がそう言うと少し困ったような表情を見せてお母様は苦笑するのであった。うーん、お母様が苦笑するほどの高度――いや、不可解な物ということかな?

「エステリアは魔法の形跡について覚えているかしら?」

 お母様がそう言う。どんな魔法でも、必ず魔力が多少残ったりするのだけど、これは魔法によって形跡が変わる――だったハズ。でも、普段魔法を使ったとて、その魔法の痕跡が残っているような感じが無いので、実のところあまり実感が無い。

「はい、覚えてはいますが、実のところを言えば、あまり実感がありません」
「――まぁ、そうよね。長期間継続する魔法特有の反応とも言える現象よ。そうね――」

 と、お母様は単純な魔法である灯火トーチの魔法を使う。柔らかい光の球がお母様の掌にフワリと現れ、お母様はそれをそっとテーブルに置く。なんとも器用な魔力操作だけど、灯火トーチとしては少しおかしい。

「持続効果――ですか?」
「そうよ。普通に使うよりも多くの魔力を使うけれど、長時間魔力を使わずに効果が続く魔法技術の一つね。こういった魔法というのは、残留魔力と呼ばれる魔力の痕跡が残るのよ」

 そう言っている今に灯火トーチの光が消える。確かにお母様の言う通り、魔力が散って行きながらも、そこに魔力が微かに残っていた。

「不思議な感じがしますね。でも、こういった微かな魔力というのはどれくらいの期間残るのでしょう?」
「魔法によるわね。例えば、長期的に保存するような魔法であれば、数年や数十年持つ事もあるし、古い時代のモノであれば数千年というモノも存在するそうよ。残念ながら、私も見たことはありません。でもね、遺跡などではたまに魔法が使われた形跡が残っている事があるのよ」
「それも、不思議な話ですね。これって魔術では起こらない現象と思っていいのですか?」

 と、私がそう言うとお母様は「そうね」と、さやしく答えた。

 やはり、魔法というのは分からない部分が多いと感じつつも、魔法と魔術の組合せというのはより複雑で多面的な効果を造りだす事が出来るのでは無いかと思うのであった。

「そして、不思議な話になるのだけど、錬金術に関するモノは魔力の形跡が分かりにくい、もしくは感じられない。と、いうのが定説となっているわ」
「と、いうことはどう考えても魔法的なモノなのに、一見では魔力が感じられないと?」
「ええ、だからこそなのよ」

 なるほど、と、感心しつつ私は目の前にある端末である板を魔力的に見る。確かに不思議な物体だという事がよく分かる。現在はお母様が使った後なので、お母様の魔力の痕跡が薄っすらと感じられるけど、それもすぐに霧散してしまいそうだ。しかし、魔術のみで作られているとは言えないコレは妙な魔力的気配――にも似た何とも言えない感じがある。

 だから、お母様も『分からない』と、言ったのだ。考えれば考えれるほど、これは分からない物体と表現せざるを得ないわね。でも、逆にその違和感が錬金術によるモノと判別できる。と、いうことかもしれない。

 お母様と共に色々な魔道具を作ってきたけれど、当然中には魔法と魔術を組み合わせたモノはあるけれど、魔法と魔術は一つの魔石には入らない。当然、魔石に入れれるのは一つの魔法か一つの魔術となるから、その作りを考えるとこの板はどう考えてもオカシナ物体だ。

魔導洞窟ダンジョンの解析を行っていく過程で錬金術の一面も理解出来るようになるかもしれませんね」

 と、お母様はそんなことを言った。確かにこの複雑で魔法と魔術が絡み合ったようなモノは術式で見ても巨大な迷宮のようで、様々な枝葉に多くの要素が組み入れられているのに間に魔法的要素が組み合わさっている所為で、どこまでが魔術でどこまでが魔法かが凄くわかりにくい。

 そして、これだけのモノが遠隔で複数の端末とも連携出来、動かせる――まさにロストテクノロジーと言わんばかり、私的にはすっごくSFちっくな物体なんだけどね。
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