悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

212.悪役令嬢は圧倒的な力を見せつける

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 正直、ここで一度ちゃんと私の腕前を見せた上でアリエルの方が剣技は上だと喧伝した方がいいわよね。などと思いつつ、眼前のおバカさんを見る。

 模擬戦と言わなかったかしら? こんなところで殺し合いをするくらいの気持ちでやるということなのか、相手はどう見ても魔剣――と、いうふうな誂えの剣を持ち出している。

 魔剣に使われる魔白金ヒヒロカネは赤みが掛かった銀――いいえ、角度によって金にも見える変わった金属で製作過程によって仕上がる色が変わるのも特徴ではあるのだけど、薄っすらと魔力を帯びているのでその存在感だけですぐに判別がつく。

「あら? 訓練用の剣か木剣で行うのでは無いの?」

 と、私が言うと、何故か立ち会いの教師がドヤ顔で口を開く。

「おや? 自信がないのかねぇ? ハーブスト家の方が怖気づくなんてことはないでしょう?」

 この教師、なんだか凄く嫌な感じよね。全く――と、私は敢えて大きな溜息を吐いて見せる。そして、無言でルアーナのいる場所までゆっくりと移動してニッコリ微笑んで――

「ルアーナ、申し訳ないけれど、訓練用の剣を貸してくれないかしら?」

 そう言うと彼女はスッと自身の剣を渡そうとしてくる。

「ルアーナ、貴女の剣ではなく、訓練用の剣を課して欲しいと言っているのよ」
「で、ですが――相手はどうみても魔剣ですよ? 練習用の剣も持ってはいますが、それでは打ち合うことも難しいと思うのですが……」
「何度も言うのは嫌なの。早くして」

 私は笑顔でそう言うと彼女は仕方ないと言わんばかりに訓練用の剣を取り出して渡して来るのを「ありがとう」と、言って私は鞘を抜き剣を確かめる。

 訓練用の剣というのは刃の部分を潰しているもので、切れ味は無いに等しいけれど、さすがグラファス侯爵家の所有物で剣自体の出来はかなりいいモノで、魔力の通りも悪く無い。

「少し、手間を頂き申し訳なかったわね。さて、開始して貰ってもいいかしら?」

 と、私がそう言うと立ち合い人? の教師はイラっとしたのか私を睨みつけるが、小さく咳ばらいをしてから再びニヤリと笑って開始の合図を出す。

 それと同時にオーリオー伯爵令息が大きな声を張りながら身体強化を行い、なかなかの速度で突きを繰り出して来る。

 因みにだけど、武闘大会でも適応されているルールとして、魔法や魔術、魔道具の禁止なのだけど、身体強化や魔力を纏うなどの行為は許可されており、相手を即死させるような攻撃も禁止――なんだけど、彼の攻撃は場合によると禁止になりえる攻撃で、なんとも物騒な事をするものね。と、私は思いつつ魔力を纏わせた剣で彼の魔剣にコツンと剣を当てながら、私は身体を少しだけ逸らして相手の攻撃をいなす。

「なっ!?」

 自身のある攻撃だったのか、彼は驚きの声をあげる。けれど、戦っている時に声をあげるのはバカのすることだと私は思っている――と、いうよりもお母様なら確実に説教確定よ。

「最上級生の剣の腕というのはその程度なのかしら?」
「くっ、うるさい! 何をした、魔女めっ!!!」

 と、彼は動きの分かりやすい大ぶりな振りで剣を振るう。私はそれをいなしながら距離を確かめつつ、相手に対して半歩踏み込んでから剣の柄で相手の鳩尾に軽く押し込んでやる――けれども、思ったより相手は派手に後方へ吹き飛んで私は思わずポカンとしてしまう。

 派手にゴロゴロ転がった後にフラフラと立ち上がるオーリオー伯爵令息は怒りに顔を歪め、悔し気に吠えた。

「くそぉぉぉぉ、何をした! ぐっ……ふぅぅぅぅぅっ。ゆるさん! ゆるさないぞ!!!」

 うーん、怒り心頭で雑な攻撃を私は躱しつつ悩んでいた。身体強化の加減を考えないといけないということを考えていた。かなり手を抜いた攻撃だったのにあそこまで吹き飛ぶのはハッキリ言って想定外で、下手をすると殺してしまう可能性もあった。もう少し、魔力を絞らないと力が出過ぎてしまうのは大問題ね。お母様やお父様、エルーサなどもそうだけど、優秀過ぎる人達と手合わせしてもらうと、こういう弊害が起こるという事がよく分かるわ。

 これに関してはアリエルにも伝えておかないと事故が起こる可能性高いわ。

「ちょこまかとっ! くっ! なぜ当たらんっ!!!」

 まぁ、速度も遅いし、攻撃も雑だし、逆に自分で当たりにいかないと当たりそうにないくらいの攻撃なのだから、どうしようもないでしょうに……まぁ、かといって当たってあげるなんて事は絶対にしてあげないし、このおバカさんが思っていることを覆す。

 そして、再び雑な攻撃を繰り出して来るのを確認しつつ、数振りを敢えてギリギリで躱して、少し引き気味に対応して相手の大振りを誘う。そして、相手は多分だけどあまり考えていないようななりふり構わないだろう動きで私の誘いに乗って上段から剣を力いっぱい振り下ろした。

 と、同時に悲鳴もあるけれど、それは周囲で見ている少女の誰かだろう。しかし、それ以上に剣を振るった彼は驚愕の表情を見せる。

「ぐぅっ、な、なぜ!?」

 彼の驚き――と、いうよりも周囲からどよめくような声が聴こえて来る。まぁ、普通はこうはならないのかもしれない。でも、魔力の使い方や上位の騎士達の戦い方を知っていれば、これくらい出来なくはないだろうと、私は思っている。

「あら? 練習用の剣で受け止められたのが意外だったのかしら?」

 と、私はそう言いながらも上手く魔力を絞りつつ、受け止めていた剣を押し返す――って、それで吹き飛ぶの? うーん、もっと魔力を絞らないとダメなの?

 とりあえず、そろそろ終わらせたかったので、即座に吹き飛んで転がる彼に追いついて、なんとか身体を起こそうとする彼の首元に剣を突き付けておく。

「くっ……」
「これで私の勝ちよ」

 そして、周囲から驚きの声と妙な静けさが騎士訓練場に広がるのであった。
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