悪役令嬢同盟 ―転生したら悪役令嬢だった少女達の姦しい日々―

もいもいさん

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第三章 悪役令嬢は学院生活を送る

236.悪役令嬢は武闘大会の決勝に挑む

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 昨日はあの後、いろい色とあったけれど、今日はウィンディとの決勝戦となる。

 あさイチから会場に行くと控室に案内されて、試合が始まるまで待機だそうだけど、ついてきて当然という感じでエルーサが私の後ろについて来るのに思わず小さく笑ってしまう。

 そして、控室でゆったりとしていると、来客が来たことを見張りの騎士から伝えられ、客としてやって来た者を通すように指示する。

「お邪魔いたします」

 と、現れたのはルアーナだった。

「いらっしゃい、どうせまだ試合が始まるまで時間があるのでしょう? ゆっくりしていきなさいな」
「エステリア様は落ち着いてらっしゃるのですね」

 まぁ、確かに緊張感という意味で言えば全く緊張していないのよね。色々と理由はあるのだけど、敢えて口にする必要は無いと私は思っている。

「まぁね。昨日の準決勝を見ている時の方が緊張感はあったかもしれないわね」
「――そうなのですね」

 ルアーナはそう言いながら、何かを私に伝えたいのか言い出しにくいのか分からないけど珍しくモジモジしていた。

「で、何か言いたいことがあるのかしら?」

 私がそう言うと彼女は勢いよく土下座した。

「――なんで?」
「申し訳ありませんでした! 負けてしまいました!!」
「勝つ時もあれば、負ける時もあるわよ。それにウィンディが勝ったのも正直、たまたまだと私は思っているわよ。どちらが勝ってもおかしくなかった――まぁ、私としては貴女と戦うよりウィンディの方がやりやすいけどね」

 と、私が言うとルアーナは不思議そうに首を傾げた。

「ウィンディ嬢の方がやりやすい?」
「ええ、その通りよ。正直、相手から攻めて来てくれるタイプの方が楽なのよ。これは貴女もなんとなく分かるでしょ?」

 そう言うと、ルアーナは暫く考え込むように唸ってから「確かにそうかもしれません」と、呟くように言った。

「確かにウィンディみたいな子は猛烈な攻撃を繰り出して来る分、受けるには胆力や集中力が必要ではあるけど、私の場合耐えるだけならそこまで大変では無いわ。回避という点で考えればウィンディは素早いから大変ではあるけど、こちらは相手の隙に入り込むようなカウンター攻撃が得意であれば、相手は回避どころの話でもないわけで」
「――なんとも意外です。エステリア様が私の方が戦いにくいと思っているというのは、複雑な気持ちです」
「とりあえず、立ちなさい。貴女が私と決勝戦を戦いたかったという気持ちも分かるけど、ウィンディだって私と戦う為に今回の大会に参加しているのだから、お互いの気持ちのぶつかり合いで少しだけウィンディの方が強かっただけよ」

 私の言葉に彼女はシュンとしてしまう。大型犬のような雰囲気がなんとも可愛らしい。ウィンディも小動物っぽい感じはあるけど、あれは見た目だけだしなぁ。

「それでも、私はエステリア様と戦って――」
「何度も言っているけれど、私の護衛騎士にはなれないわよ。まだ、貴女はアリエルをよく知らないだけで、私はあの子を支える為の陣営を作る事を目的としているのよ」
「――り、理解しています。しかし、私は貴女の護衛騎士として貴女に仕えたいのです」
「もう、そんな真っ直ぐ見ないで。ルアーナの良いところではあるけれど、未来のミストリアを
支える為には貴女の力が必要なのよ。私を守るよりもアリエルを支える者にならねばならないのよ」

 すぐには納得出来ないのも分かるんだけどね。うーん、もっとアリエルと交流させる必要があるかしらね。

 そんな事を考えていると、控室の扉が叩かれ、試合の準備が整ったとの知らせで私はスッと立ち上がる。

「さて、ルアーナ。観覧席で見ていなさい。私ってば、とても意地悪だから、ウィンディの勝ち方を見せてあげるわ」

 そう言って、私はエルーサを伴って控室を出るのであった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


『楽しみな決勝戦が始まります!』

 会場に司会の子の声が響く。私の目の前には少し緊張――いいえ、ワクワクいっぱいのウィンディがフンワリとしたツインテールをピコピコと動かしつつ、試合開始を待っている。

 そして、審判役の騎士がスッと右手を上げて試合開始を宣言する。

 それと同時にウィンディは弧を描くようにこちらに向けて駆ける。そして、私はウィンディの駆ける軌道を見極めつつ、ギリギリまで動かずに彼女が傍に来るまで待ち、スッと軸をずらしながら半歩だけ踏み込み。ウィンディの攻撃の隙間に向かって棒を真っ直ぐ打ち込む。

 ウィンディは不意を突かれたような攻撃をまともに食らって吹き飛び闘技場の壁まで吹き飛ばされ、ドサリと地面に落ちる。

 会場は静まり返り、この静寂はあまり好きでは無いな。と、思いながらチラリと審判役の騎士を見れば、あまりの一瞬の出来事だった所為か、彼もポカンとした雰囲気で固まっていたが、私の視線に気が付いたのか、焦ったようにスッと両手を上げて試合終了を宣言した。

『な、な、なんと、あのウィンディ・リンガロイ伯爵令嬢を一瞬で倒してしまっぁぁぁぁ!!! なんという強さ! これがハーブストの妖精姫!!! 凄い! 凄いとしか言いようがありません!!!』

 少し、ウィンディには悪い事をした気持ちになってしまうけれど、初弾で相手を打ち負かすというのがベストなのよね。まぁ、見ていて楽しいモノではないでしょうけどね。
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