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第一部
新たな決意
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「では、私はこれで」
「ちょっと待ってくれ」
席を立ち帰ろうとするリーナを呼び留め、足早に自室へ向かうと甘い香りが立ち昇っている白い包装を持参し手渡した。
「これは、シュトレンといってパンの中に果実を塗し外側から粉砂糖を振りかけた隣国の菓子らしい。きっと、紅茶にも合うと思う。話を聞いてくれたお礼に」
「ありがとうございます」
俺の話を聞いている時も、自ら言葉を発している時も、リーナにはあまり表情の変化が見られなかった。
しかし、包装から香る甘い匂いが彼女の鼻孔を刺激した瞬間、少しだけ頬を緩ませたように見えた。
1月程前、つまり死に戻る前の小遣い2年分をはたいて買った至極の一品だが、喜んでもらえたなら何よりだ。
悩みが解消したわけではないが、それでも道筋が見えたのは確かである。
今俺が持つ金銭を全てでも、十分過ぎるほどの対価だ。
さすがに、金銭面での謝礼は絵面的に不味いだろうからしないが。
「本当にありがとう」
包装を手渡した後、俺は彼女の目を見て深々と頭を下げた。
「・・・・・・」
その行動を、リーナは驚いた様子で見つめている。
「素直に相談したことも意外でしたが、こんなに真正面から感謝されるとは思いませんでした」
確かにそうだ。今までの俺だったら、苦難があったとしても意地を張り誰にも打ち明けず独力で乗り越えようとしただろう。
しかし、今は自身の無力を知っている。
コホンと咳払いしつつ、リーナは真剣な眼差しでロイを射貫く。
「人の上に立つ者に必要なのは結果です。例え不貞を繰り返す色狂いでも、独裁者でも、打ち出した策が確かな成果を生んでいるのなら何の問題もない。
ですから、分家の者に頭を下げてでも結果を得ようとしたその貪欲さを私は評価します。
強欲なまでの成果主義、その姿勢をどうか忘れずに」
・・・
「この国を理解する、か」
俺は寝台の上に全身を放り出しながら、彼女の言葉を思い出す。
言うのは簡単だが、具体的にどうすればいいんだ?
あるべき姿勢というか、方向性は見えた気がするが結局行動に移さなければ結果は同じだろう。
課題はなお残されたままだ。
でもまあ、道筋が見えただけでも原因も分からず立ち往生していた頃より確実に前進している。
リーナに感謝だな。
それにしても、彼女の言葉はどれも芯を突いていたなと思う。
これまで、立場の垣根無く様々な交流をしてきたつもりだった。王族、貴族、平民。しかし、俺がその人達について知っていることは好きな食べ物とか景色とかそういうものだけだ。どんな思いを抱えているのか、どんな過去を過ごしていたのか、そういう根本の部分については何一つ知らない。いや、知ろうとしてこなかった。表面的なことを知って、分かった気になって。
結局、俺が見ていたのは自分自身だ。弱い者に手を差し出す自分、立場を気にしない自分、
そういう優れた自分を見せつけたかっただけ。
上手くいかないのも当然だ。己しか見えていない人間が、何かを変えられるはずがない。
・・・そういえば彼女の言葉を受けて、とある出来事を思い出した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
小さい頃、よく王宮を抜け出しては城下町に繰り出していた。子供にとって、王宮はただの鳥籠に等しく城下町こそが遊び場であり、繁華街もスラムも貴族も平民も境はなく色んな遊びをした。
たぶん、人生で一番楽しかったと思う。そんな中で、出会ったのがアレンという少年だった。
今でこそ友人と呼べる程心の内を見せ合った人間は居ないが、アレンとは互いに何を考えているのか分かってしまう程の仲、親友だった。
アレンは正義感が強く、少しでも理不尽な出来事があれば相手が大人であろうと意の一番に突っかかっていく。俺もそれに付き合わされ、怪我をすることも度々。傷を負う度にこんな奴とは縁を切ると思ったのだが、それでも付き合っていたのはきっと楽しくもあったからだろう。
やがて、数年が経ち少年と呼ぶには少し顔立ちが大人びた頃になってもアレンは変わらず理不尽に突っかかっていたし、俺もそれに付き合っていた。しかし、二人とも気付くことになる。これまで、怪我で済んでいたのは自分達が子供であったからだと。
その日は雨がひどく降っていたことを覚えている。いつもの通り王宮を抜け出すと、繁華街の隅にあるアレンの家へと向かい鼻歌交じりに走った。
アレンの家は酒場を経営しており、雨の日は外で遊べない代わりだと言って親父さんがまかないを作ってくれるのだ。
今日は何の料理が出てくるのだろうと考えつつ走っていると、あっという間に家の近くまで着いてしまった。さっそく入ろうと通りを真っすぐ進んでいると、端道にアレンの姿が目に入る。
話掛けようと近づくと、アレンの他の奥に何人かいるようだった。その内の1人、ガタイが良くいかにも代表格という感じの男が下卑た笑い声を上げながら誰かを殴っている。ぼろぼろの服にかびた皮膚、たぶん近くのスラム街の人だろう。自分より体格が劣っている人間を痛ぶり、嘲笑う。許されざる行為だ。
アレンに目配せをすると、彼もこちらを向き頷き合う。代表格っぽい男は満足したのか、奥にいる奴らに声を掛けた。仲間らしき男達は身長も体格もリーダーの男に比べると普通であったが、それでも自分達より少なくとも倍はある。だが、そんなことは関係ないといわんばかりにアレンは飛び出していき、俺もそれに続く。
結果、幸い大けがはしなかったものの、ぼこぼこにやられてしまった。当たり前だ。でも、1人の人間を助けることはできた。アレンの家で治療を受けつつ親父さんに大目玉を食らったが、しかし二人とも笑顔だった。
翌日も雨がザーザーと降っていた。今日は何のまかないだろう。でも、怒られたばかりだし、まかないはなし、なんてことはないよな。と、祈るような気持ちで家に向かう。
しかし、アレンの家に辿り着くことはできなかった。迷ってしまったとか、途中で事故に巻き込まれたとかそういうわけじゃない。ただ、なかったのだ。酒場が、家が、アレンの家族が。
いつもまかないを食べさせてくれた場所は、ただの空き家になっていた。道を間違えてしまったのだろうか。しばらく周辺をうろうろしてみるがアレンの姿も家族の姿も一向に見つからない。
日が傾きかけ王宮に戻ろうと繁華街を横切っていると、大きな荷車を引いた集団が遠くに見えた。どこか見覚えがあるその集団と数メートルの距離になり、やっとさっきまでさんざん探していたアレン一家だと気付く。
しかし気付いたはいいが、話しかけるどころか目を合わせることもできなかった。アレンの目の焦点が定まっておらず、口も半開きだったからである。
どうやら、スラム街で暴行を加えていた男達は貴族で、裁判所に訴え出たらしい。アレンが暴行を加えており自分達が止めようとした所反撃された、と。アレン達ももちろん抗議したが受け入れられないどころか聞きもされず、たった一週間で判決が出た。
多額の賠償命令が下り、その日の内に店も家財道具も差し押さえられたようだ。
その話を聞いた瞬間、俺は急いでスラム街に赴いた。
そして、何日も掛け暴行されていた人と事件の目撃者を何とか見つけ出し、裁判所に訴えたが結局受け入れられることはなかった。
どうしても諦めきれず、何日も何日も彼は何も悪くないのだと訴え続けついには現国王である父にも頼んだが、結局再審は叶わなかった。
あの時決意したのだ、この国を変えなければならない、と。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その思い自体はやはり間違ってはいないと思う。
だが、アレンという少年を助けたかったのは別に彼が平民だからというわけではなかったはずだ。
彼が友人であったから。
だから、助けたかったし、理不尽な目にあったことが許せなかった。
救うという言葉は、目線が上に過ぎる。
分かっていたはずなのに、理解できていたはずなのに、いつの間にか俺も人を区分けしてしまっていた。
たぶん、リーナが言った国や民を知るというのは色眼鏡を付けず同じ目線で接しろということなんだろう。
立場や身分という枠組みを通して見るのではなく、その人自身を見ること。大げさに言ってしまえば、本質に触れること。
思い返せば、平民と話し触れ合った記憶は確かにあるはずなのに相手の名前どころか顔も朧気だ。それは、貴族にも当てはまり多くの人間と接してきたはずなのにやはり相手の身分や立場しか思い出せない。
きっと、これは俺が人を身分や立場でしか捉えていなかった何よりの証拠だろう。
彼女の言ったことは、何も難しいことではない。
子供の頃できていたことを、もう一度繰り返せばいいだけなのだから。
そう思うと、具体的な行動方針も見えた気がする。
意識を内から外に移すと、気温が少し下がったのを感じる。
そして、窓に目を向けるとちょうど朝日が昇っているところであった。
「ちょっと待ってくれ」
席を立ち帰ろうとするリーナを呼び留め、足早に自室へ向かうと甘い香りが立ち昇っている白い包装を持参し手渡した。
「これは、シュトレンといってパンの中に果実を塗し外側から粉砂糖を振りかけた隣国の菓子らしい。きっと、紅茶にも合うと思う。話を聞いてくれたお礼に」
「ありがとうございます」
俺の話を聞いている時も、自ら言葉を発している時も、リーナにはあまり表情の変化が見られなかった。
しかし、包装から香る甘い匂いが彼女の鼻孔を刺激した瞬間、少しだけ頬を緩ませたように見えた。
1月程前、つまり死に戻る前の小遣い2年分をはたいて買った至極の一品だが、喜んでもらえたなら何よりだ。
悩みが解消したわけではないが、それでも道筋が見えたのは確かである。
今俺が持つ金銭を全てでも、十分過ぎるほどの対価だ。
さすがに、金銭面での謝礼は絵面的に不味いだろうからしないが。
「本当にありがとう」
包装を手渡した後、俺は彼女の目を見て深々と頭を下げた。
「・・・・・・」
その行動を、リーナは驚いた様子で見つめている。
「素直に相談したことも意外でしたが、こんなに真正面から感謝されるとは思いませんでした」
確かにそうだ。今までの俺だったら、苦難があったとしても意地を張り誰にも打ち明けず独力で乗り越えようとしただろう。
しかし、今は自身の無力を知っている。
コホンと咳払いしつつ、リーナは真剣な眼差しでロイを射貫く。
「人の上に立つ者に必要なのは結果です。例え不貞を繰り返す色狂いでも、独裁者でも、打ち出した策が確かな成果を生んでいるのなら何の問題もない。
ですから、分家の者に頭を下げてでも結果を得ようとしたその貪欲さを私は評価します。
強欲なまでの成果主義、その姿勢をどうか忘れずに」
・・・
「この国を理解する、か」
俺は寝台の上に全身を放り出しながら、彼女の言葉を思い出す。
言うのは簡単だが、具体的にどうすればいいんだ?
あるべき姿勢というか、方向性は見えた気がするが結局行動に移さなければ結果は同じだろう。
課題はなお残されたままだ。
でもまあ、道筋が見えただけでも原因も分からず立ち往生していた頃より確実に前進している。
リーナに感謝だな。
それにしても、彼女の言葉はどれも芯を突いていたなと思う。
これまで、立場の垣根無く様々な交流をしてきたつもりだった。王族、貴族、平民。しかし、俺がその人達について知っていることは好きな食べ物とか景色とかそういうものだけだ。どんな思いを抱えているのか、どんな過去を過ごしていたのか、そういう根本の部分については何一つ知らない。いや、知ろうとしてこなかった。表面的なことを知って、分かった気になって。
結局、俺が見ていたのは自分自身だ。弱い者に手を差し出す自分、立場を気にしない自分、
そういう優れた自分を見せつけたかっただけ。
上手くいかないのも当然だ。己しか見えていない人間が、何かを変えられるはずがない。
・・・そういえば彼女の言葉を受けて、とある出来事を思い出した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
小さい頃、よく王宮を抜け出しては城下町に繰り出していた。子供にとって、王宮はただの鳥籠に等しく城下町こそが遊び場であり、繁華街もスラムも貴族も平民も境はなく色んな遊びをした。
たぶん、人生で一番楽しかったと思う。そんな中で、出会ったのがアレンという少年だった。
今でこそ友人と呼べる程心の内を見せ合った人間は居ないが、アレンとは互いに何を考えているのか分かってしまう程の仲、親友だった。
アレンは正義感が強く、少しでも理不尽な出来事があれば相手が大人であろうと意の一番に突っかかっていく。俺もそれに付き合わされ、怪我をすることも度々。傷を負う度にこんな奴とは縁を切ると思ったのだが、それでも付き合っていたのはきっと楽しくもあったからだろう。
やがて、数年が経ち少年と呼ぶには少し顔立ちが大人びた頃になってもアレンは変わらず理不尽に突っかかっていたし、俺もそれに付き合っていた。しかし、二人とも気付くことになる。これまで、怪我で済んでいたのは自分達が子供であったからだと。
その日は雨がひどく降っていたことを覚えている。いつもの通り王宮を抜け出すと、繁華街の隅にあるアレンの家へと向かい鼻歌交じりに走った。
アレンの家は酒場を経営しており、雨の日は外で遊べない代わりだと言って親父さんがまかないを作ってくれるのだ。
今日は何の料理が出てくるのだろうと考えつつ走っていると、あっという間に家の近くまで着いてしまった。さっそく入ろうと通りを真っすぐ進んでいると、端道にアレンの姿が目に入る。
話掛けようと近づくと、アレンの他の奥に何人かいるようだった。その内の1人、ガタイが良くいかにも代表格という感じの男が下卑た笑い声を上げながら誰かを殴っている。ぼろぼろの服にかびた皮膚、たぶん近くのスラム街の人だろう。自分より体格が劣っている人間を痛ぶり、嘲笑う。許されざる行為だ。
アレンに目配せをすると、彼もこちらを向き頷き合う。代表格っぽい男は満足したのか、奥にいる奴らに声を掛けた。仲間らしき男達は身長も体格もリーダーの男に比べると普通であったが、それでも自分達より少なくとも倍はある。だが、そんなことは関係ないといわんばかりにアレンは飛び出していき、俺もそれに続く。
結果、幸い大けがはしなかったものの、ぼこぼこにやられてしまった。当たり前だ。でも、1人の人間を助けることはできた。アレンの家で治療を受けつつ親父さんに大目玉を食らったが、しかし二人とも笑顔だった。
翌日も雨がザーザーと降っていた。今日は何のまかないだろう。でも、怒られたばかりだし、まかないはなし、なんてことはないよな。と、祈るような気持ちで家に向かう。
しかし、アレンの家に辿り着くことはできなかった。迷ってしまったとか、途中で事故に巻き込まれたとかそういうわけじゃない。ただ、なかったのだ。酒場が、家が、アレンの家族が。
いつもまかないを食べさせてくれた場所は、ただの空き家になっていた。道を間違えてしまったのだろうか。しばらく周辺をうろうろしてみるがアレンの姿も家族の姿も一向に見つからない。
日が傾きかけ王宮に戻ろうと繁華街を横切っていると、大きな荷車を引いた集団が遠くに見えた。どこか見覚えがあるその集団と数メートルの距離になり、やっとさっきまでさんざん探していたアレン一家だと気付く。
しかし気付いたはいいが、話しかけるどころか目を合わせることもできなかった。アレンの目の焦点が定まっておらず、口も半開きだったからである。
どうやら、スラム街で暴行を加えていた男達は貴族で、裁判所に訴え出たらしい。アレンが暴行を加えており自分達が止めようとした所反撃された、と。アレン達ももちろん抗議したが受け入れられないどころか聞きもされず、たった一週間で判決が出た。
多額の賠償命令が下り、その日の内に店も家財道具も差し押さえられたようだ。
その話を聞いた瞬間、俺は急いでスラム街に赴いた。
そして、何日も掛け暴行されていた人と事件の目撃者を何とか見つけ出し、裁判所に訴えたが結局受け入れられることはなかった。
どうしても諦めきれず、何日も何日も彼は何も悪くないのだと訴え続けついには現国王である父にも頼んだが、結局再審は叶わなかった。
あの時決意したのだ、この国を変えなければならない、と。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その思い自体はやはり間違ってはいないと思う。
だが、アレンという少年を助けたかったのは別に彼が平民だからというわけではなかったはずだ。
彼が友人であったから。
だから、助けたかったし、理不尽な目にあったことが許せなかった。
救うという言葉は、目線が上に過ぎる。
分かっていたはずなのに、理解できていたはずなのに、いつの間にか俺も人を区分けしてしまっていた。
たぶん、リーナが言った国や民を知るというのは色眼鏡を付けず同じ目線で接しろということなんだろう。
立場や身分という枠組みを通して見るのではなく、その人自身を見ること。大げさに言ってしまえば、本質に触れること。
思い返せば、平民と話し触れ合った記憶は確かにあるはずなのに相手の名前どころか顔も朧気だ。それは、貴族にも当てはまり多くの人間と接してきたはずなのにやはり相手の身分や立場しか思い出せない。
きっと、これは俺が人を身分や立場でしか捉えていなかった何よりの証拠だろう。
彼女の言ったことは、何も難しいことではない。
子供の頃できていたことを、もう一度繰り返せばいいだけなのだから。
そう思うと、具体的な行動方針も見えた気がする。
意識を内から外に移すと、気温が少し下がったのを感じる。
そして、窓に目を向けるとちょうど朝日が昇っているところであった。
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