5 / 20
第一部
新たな関わり
しおりを挟む
1度目の人生で初めてナタリアに会った時も、ミリアリアに虐げられていた。
その時も仲裁に入り止めたのだが、仲裁後に彼女から述べられた感謝の言葉を今でも覚えている。
言葉自体はありふれたものであったが、誰かから感謝の念を送られた経験に乏しい俺にとってそれは心を照らすような印象深い出来事となった。
「大丈夫か?」
俺はナタリアの方へ目線を合わせながら、尋ねる。
この後彼女は柔らかく微笑みながら謝意を示すはずだが、
「チッ」
帰ってきたのは心底気に入らないと言った表情で舌打ちをする姿だった。
そして、振り返ることなく去っていった。
想定との差異にしばらく呆然と立ち尽くしていると、リーナが隣に立つ気配を感じる。
「嫌われたみたいですね」
「きらっ」
「でもまあ、彼女を僻んでる貴族は多いですから仕方ないかもしれません。それに学園中で兄上殿は嫌われてるんですから、いちいち気にしても仕方がないですよ」
「・・・学園中で?」
「庶民ぶってるくせに税率一向に下げないとか、大して能力高くないくせに家柄だけで偉そうにしやがってとか、言い方がいちいち上から目線でいらつくとか、他にも・・・」
「ストップ。謝るからやめてくれ」
そうか、嫌われてたのか。
まあ、学園在籍中は誰にも話しかけられなかったし、聞こえるか聞こえないかの範囲で女子が何やらコソコソ話していた時点で察しは付いていたが、それでも事実を突き付けられるとくるものがあるな。
分かりやすく肩を落とし、俯く俺を気の毒に思ったのかリーナが励ましの言葉を送る。
「まあ、兄上殿の性格なら嫌われてもしょうがないですよ」
「それはフォローのつもりなのか?」
「もちろん」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は校舎前の花壇に座り込み、このまま帰ろうかどうか真剣に考えていた。
決意して学校に来たもののさすがにこれは、傷がでかすぎる。一周間くらい療養した後、また来ればいいよな。
そんなことを考えていると、トントンと肩を叩かれる。
振り向くと、大きな瞳に桃色の唇、桃色のショートカットをしている少女が経っていた。
彫の浅い顔立ちはこれまで会って来た中でも最上級に可愛いのだが、それよりも注目すべきはその全身から溢れ出る雰囲気。
ナタリアもミリアリアも、そしてリーナも少し人を寄せ付けないような、威圧にも近い雰囲気を醸し出していた。しかし、目の前の少女はそんな雰囲気とは反対の溌剌としたパアっと明るい雰囲気を醸し出している。
「ごめんね~!うちのナタリアが失礼なことしちゃったみたいで!」
そう言って、手を体の前で合わせる。
「悪気があったわけじゃないんだよ~。ただ、ちょ~とだけ貴族様が苦手でさ」
「ほ、ほんとうにすみませんでした」
申し訳なさそうな表情をする少女の後ろから、さらに申し訳なさそうな顔をする小柄な男子が顔を出した。
短い黒髪に寝起きのような癖を付け、ひょっとしたら女子よりも小柄なのではないかと思うほどの体型をした少年が伏目がちにこちらの反応を伺っている。
「あ、ああ。別に構わないよ」
「「よ、よかった~」」
俺が気にしていないことを確認すると、少年と少女は心底安心したというような表情を見せる。
「あ!」
と、何かを気付いたような表情をする少女。
「そういえば、自己紹介がまだだったね!私はフレイ。で、こっちの暗いのがアーサー」
「た、確かに暗いけど、ひ、人前で言うことないじゃないか」
どうやら、ずいぶんと仲が良いようだ。さっき、ナタリアのことも親しげに読んでいたしナタリアを含めたこの3人は友人関係なのかもしれない。
「俺はロイ、よろしく」
「この国の王子と同じ名前なんだ、珍しい。よろしくね!」
手を指し出し、握手を求めるフレイ。そして、それに呼応するようにロイも手を差し出す。
「・・・そうだね。でも、名前以外もどこか似てたりしない?顔とか」
「う~ん。似てないかなぁ。王子様はもっと綺麗な金髪だった気がするし、もっと整った顔だった気がする」
「そっか」
・・・そういえば王子は嫌われ者だって言ってたな。なら、良いことだ。だって、嫌われ者に思われないってことだもん。
「でも、同じ名前だと分かりずらいね。下の名前、家名はなんて言うの?」
ここで王家の名前ディアゼルを出そうものなら、萎縮どころか卒倒ものだろうな。
何か適当な名前を答えておかないと。
「・・・ロベールだよ」
ロベールとはこの国の一般貴族において、非常によく見られる家名である。
大貴族になると、家名を自身の所属派閥に変更しなくてはならないようだが。
「う~ん、ロベールも一杯いるしなー。《ロベっち》っていうのはどう?」
「あだ名?」
人によっては侮蔑されたと勘違いして、その場で処断しかねない。
それをするっと言えてしまうとは、、、胆力が凄いな。
それとも何か、意図があるのか。
「そう!そっちの方が分かりやすいでしょ!どうかな?」
「まあ、別に良いけど」
「よし、じゃあ決まり!改めてよろしくね!」
「よろしく」
周囲を照らすような笑顔をフレイが見せながら、改めて握手を交わす。
ここまで明るい人間は周りにいなかったから、新鮮だ。
でも、何だろう光の中に一筋の影が見えたようなそんな違和感を感じる
それにあだ名を提案した時、いや正確にはその後にあだ名受け入れた際彼女は少し複雑そうな表情をしていた気がする。だが、目の前のパアっとした太陽のような笑顔を見る限り、おそらく気のせいだろう。
「ふ、フレイ」
アーサーが遠慮がちにフレイを小突きつつ、何かぼそぼそと話す。
「そうだった!あ、あのさ」
と、先ほどの明るさとはかけ離れた、か細い声でためらいがちに話を続ける。
「謝りに来た相手に頼み事をするのは筋違いだし、第一聞く義理もないって分かってるんだけどさ。ほんとによかったらでいいから、・・・あーし達の部活を手伝ってくないかな??」
その時も仲裁に入り止めたのだが、仲裁後に彼女から述べられた感謝の言葉を今でも覚えている。
言葉自体はありふれたものであったが、誰かから感謝の念を送られた経験に乏しい俺にとってそれは心を照らすような印象深い出来事となった。
「大丈夫か?」
俺はナタリアの方へ目線を合わせながら、尋ねる。
この後彼女は柔らかく微笑みながら謝意を示すはずだが、
「チッ」
帰ってきたのは心底気に入らないと言った表情で舌打ちをする姿だった。
そして、振り返ることなく去っていった。
想定との差異にしばらく呆然と立ち尽くしていると、リーナが隣に立つ気配を感じる。
「嫌われたみたいですね」
「きらっ」
「でもまあ、彼女を僻んでる貴族は多いですから仕方ないかもしれません。それに学園中で兄上殿は嫌われてるんですから、いちいち気にしても仕方がないですよ」
「・・・学園中で?」
「庶民ぶってるくせに税率一向に下げないとか、大して能力高くないくせに家柄だけで偉そうにしやがってとか、言い方がいちいち上から目線でいらつくとか、他にも・・・」
「ストップ。謝るからやめてくれ」
そうか、嫌われてたのか。
まあ、学園在籍中は誰にも話しかけられなかったし、聞こえるか聞こえないかの範囲で女子が何やらコソコソ話していた時点で察しは付いていたが、それでも事実を突き付けられるとくるものがあるな。
分かりやすく肩を落とし、俯く俺を気の毒に思ったのかリーナが励ましの言葉を送る。
「まあ、兄上殿の性格なら嫌われてもしょうがないですよ」
「それはフォローのつもりなのか?」
「もちろん」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は校舎前の花壇に座り込み、このまま帰ろうかどうか真剣に考えていた。
決意して学校に来たもののさすがにこれは、傷がでかすぎる。一周間くらい療養した後、また来ればいいよな。
そんなことを考えていると、トントンと肩を叩かれる。
振り向くと、大きな瞳に桃色の唇、桃色のショートカットをしている少女が経っていた。
彫の浅い顔立ちはこれまで会って来た中でも最上級に可愛いのだが、それよりも注目すべきはその全身から溢れ出る雰囲気。
ナタリアもミリアリアも、そしてリーナも少し人を寄せ付けないような、威圧にも近い雰囲気を醸し出していた。しかし、目の前の少女はそんな雰囲気とは反対の溌剌としたパアっと明るい雰囲気を醸し出している。
「ごめんね~!うちのナタリアが失礼なことしちゃったみたいで!」
そう言って、手を体の前で合わせる。
「悪気があったわけじゃないんだよ~。ただ、ちょ~とだけ貴族様が苦手でさ」
「ほ、ほんとうにすみませんでした」
申し訳なさそうな表情をする少女の後ろから、さらに申し訳なさそうな顔をする小柄な男子が顔を出した。
短い黒髪に寝起きのような癖を付け、ひょっとしたら女子よりも小柄なのではないかと思うほどの体型をした少年が伏目がちにこちらの反応を伺っている。
「あ、ああ。別に構わないよ」
「「よ、よかった~」」
俺が気にしていないことを確認すると、少年と少女は心底安心したというような表情を見せる。
「あ!」
と、何かを気付いたような表情をする少女。
「そういえば、自己紹介がまだだったね!私はフレイ。で、こっちの暗いのがアーサー」
「た、確かに暗いけど、ひ、人前で言うことないじゃないか」
どうやら、ずいぶんと仲が良いようだ。さっき、ナタリアのことも親しげに読んでいたしナタリアを含めたこの3人は友人関係なのかもしれない。
「俺はロイ、よろしく」
「この国の王子と同じ名前なんだ、珍しい。よろしくね!」
手を指し出し、握手を求めるフレイ。そして、それに呼応するようにロイも手を差し出す。
「・・・そうだね。でも、名前以外もどこか似てたりしない?顔とか」
「う~ん。似てないかなぁ。王子様はもっと綺麗な金髪だった気がするし、もっと整った顔だった気がする」
「そっか」
・・・そういえば王子は嫌われ者だって言ってたな。なら、良いことだ。だって、嫌われ者に思われないってことだもん。
「でも、同じ名前だと分かりずらいね。下の名前、家名はなんて言うの?」
ここで王家の名前ディアゼルを出そうものなら、萎縮どころか卒倒ものだろうな。
何か適当な名前を答えておかないと。
「・・・ロベールだよ」
ロベールとはこの国の一般貴族において、非常によく見られる家名である。
大貴族になると、家名を自身の所属派閥に変更しなくてはならないようだが。
「う~ん、ロベールも一杯いるしなー。《ロベっち》っていうのはどう?」
「あだ名?」
人によっては侮蔑されたと勘違いして、その場で処断しかねない。
それをするっと言えてしまうとは、、、胆力が凄いな。
それとも何か、意図があるのか。
「そう!そっちの方が分かりやすいでしょ!どうかな?」
「まあ、別に良いけど」
「よし、じゃあ決まり!改めてよろしくね!」
「よろしく」
周囲を照らすような笑顔をフレイが見せながら、改めて握手を交わす。
ここまで明るい人間は周りにいなかったから、新鮮だ。
でも、何だろう光の中に一筋の影が見えたようなそんな違和感を感じる
それにあだ名を提案した時、いや正確にはその後にあだ名受け入れた際彼女は少し複雑そうな表情をしていた気がする。だが、目の前のパアっとした太陽のような笑顔を見る限り、おそらく気のせいだろう。
「ふ、フレイ」
アーサーが遠慮がちにフレイを小突きつつ、何かぼそぼそと話す。
「そうだった!あ、あのさ」
と、先ほどの明るさとはかけ離れた、か細い声でためらいがちに話を続ける。
「謝りに来た相手に頼み事をするのは筋違いだし、第一聞く義理もないって分かってるんだけどさ。ほんとによかったらでいいから、・・・あーし達の部活を手伝ってくないかな??」
10
あなたにおすすめの小説
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ!
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
美しく才能あふれる侯爵令嬢ジェニエルは、幼い頃から王子セオドールの婚約者として約束され、完璧な王妃教育を受けてきた。20歳で結婚した二人だったが、3年経っても子供に恵まれず、彼女には「問題がある」という噂が広がりはじめる始末。
そんな中、セオドールが「オリヴィア」という女性を王宮に連れてきたことで、夫婦の関係は一変し始める。
※改定、追加や修正を予告なくする場合がございます。ご了承ください。
代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです
天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。
その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。
元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。
代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる