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第一章
気持ち
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びっくりした。
あんなこと、何もかも生まれて初めてで。
あれから…サルシンさんは気まずそうに僕に帰るよう促した。
僕なんかと、あんなことして後悔したのかも…
胸がズクン、と苦しくなる。
ドアを閉める時に
「…また来週も来い」
そう言われた気がしたけど。
僕が行っていいのかな…
なんだか、サルシンさん、とても具合も悪そうだった。
仕事が大変なのに、ただの街のパン屋である僕に会う時間まで作ってくれて。
申し訳なかったな。
それに、僕に、キ…
キ…
キスをっ…
あれは、夢じゃないよね?
唇を指でなぞると、まだサルシンさんの感触が残ってる気がした。
初めて見たサルシンさんは、噂以上に、ほんとに素敵な人だった。
あんなにかっこいい人、見たことない。
ううん、かっこいいじゃ足りない。
綺麗で、かっこよくて、良い匂いまでして、がっしりとした身体に程よく筋肉があって…
思わず抱きしめられた事まで思い出して赤面する。
あの魔術師のローブも良く似合っていて、背も高くて…
僕は、あれから、ずっとずっと、サルシンさんのことを考えていた。
「ーースっ、ムンス?おーい、ムンス?」
僕の顔の前で、父さんが手をひらひら振ってる。
「あっごめん!父さん、なんだっけ?」
ふぅ、とため息を吐いて、父さんは笑っている。
「余程、サルシンさんは素敵な人だったんだな」
「そうね、恋っていいものよね」
母さんも笑っている。
「え?こい?へ?な、なに?なんの話?」
僕の頭に??がたくさん浮かぶ。
「机の上を見てごらん」
そう言われて、僕がいる机を見ると、辺り一面、サルシンと書かれたパンで埋め尽くされていた。
サルシンさんの顔をかたどったパンまである。
ちょっと似てるけど、本物の方が1万倍かっこいい。
「えっ?なにこれ!どうしたの?」
母さんは苦笑してる。
「あなたが作ったのよ。この3日間、他のパンにも、全てサルシンて書くから作り直すのが大変だったわ」
僕は、見なくても自分の顔が真っ赤になってるのが分かった。
耳たぶも熱い。
「ところで、もう3日もサルシンさんにパンを届けていないけれど、いいのか?」
父さんの言葉に、あっ!と大切なことを思い出す。
また来いって言われてたんだ!
3日も経ってたなんて気付かなかった!
それに、パンを届ければ…またサルシンさんに会える。
「僕、行かなくちゃ!」
慌てる僕に、父さんと母さんは、笑いながら用意した焼き立てパンがたくさん詰まった袋を渡してくれる。
「そうだ!メッセージカード書かなくちゃ!」
どうしよう、緊張して手が震えて書けない。
何を書いたらいいのかも分からない。
思い出すのは、サルシンさんの体温ばかり。
「これは重症ね。うーん、直接言った方がいいかもね?会って下さるんでしょう?」
母さんは、ウインクしてる。
なんだか、サルシンさんと会うことを考えると胸がドキドキして、頭がふわふわする。
「うっうん!僕、行ってくるね!」
僕は、パンの袋を抱えて走り出す。
頭の中はサルシンさんでいっぱいで。
パンを潰さないようにしなきゃいけないのに、袋を持つ手に力が入っちゃう。
サルシンさん、早く会いたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アルジが来ない。
もう3日も。
確かに、また来週も来いって、俺は言ったのに。
俺、嫌われた?
あんなこと、したから…
でも、あんな、あんな、耐えられる訳無いだろ!
俺だって男なんだ!
でも、嫌われてたら…
いやいやいやいやいやいやいやいや
別に、別に嫌われたっていいし。
だって、俺に差し向けられた刺客だよ?
陥れようとしてるんだよ?
嫌われた方がいいに決まってる。
でも、嫌われたらと思うと、叫びたくなるくらいに辛い。
胸が苦しい。
これは、やはり新たな病原菌が…
アルジに会ってから、俺は謎の体調不良に苦しめられていた。
アルジのことを考えると、胸が苦しくて痛くて、全身が熱くなるという症状だ。
動悸も半端ない。
光魔法のヒールでも、全く治らない。
俺の魔法で治らないって、もう完全に不治の病だろう。
仕方なく、周りのススメで医者に診てもらったところ
「恋の病ですな」
とヘボ医者に鼻で笑われた。
はああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ???
俺が、恋の病?
そんなバカなことがあるか。
相手は失脚請負人だぞ?
付き添ってくれた秘書が下を向いて震えていた。
きっと、俺をこんな目に合わせた奴を憎んでいるのだろう。
だが、俺も同じ気持ちだ。
安心しろ、必ずや次は俺が勝ってみせる。
俺が、あんな奴…
アルジの瞳を思い出す。
俺を見上げる涙ぐんだ瞳。
唇、柔らかかったな…
良い匂いがして、零れた涙まで美味しくて…
あのうなじも、鎖骨も、美味しそうで、あの胸の薄ピンクが…
ハッと我に返ると、医者は既にいなかった。
「ーーね、かなり重症らしいので、治るまで自室で静養して下さい」
肩を震わせたケルビンに自室へ押し込まれた。
なんだ、俺は魔術課長官だぞ?
そう簡単に仕事を休めるか!!
雑に扱いやがって!!
時々、俺はこういう嫌がらせを受ける。
元孤児だからって、バカにしやがって!
ドスン、とベッドに腰掛ける。
天井を見上げて目を閉じる。
…でも、アルジは違った、と思い出す。
なんていうか、俺を見る目が優しくて、清らかで、潤んでて、綺麗で…
俺がパンを褒めただけで、あんなに美しくに笑ってくれた。
…はぁ、ダメだ。
次に会ったら、俺は心臓発作で死ぬかもしれない。
まだ、何もアルジの攻撃への対策が立てられていないから。
…でも、それでも。
アルジに会いたい。
あんなこと、何もかも生まれて初めてで。
あれから…サルシンさんは気まずそうに僕に帰るよう促した。
僕なんかと、あんなことして後悔したのかも…
胸がズクン、と苦しくなる。
ドアを閉める時に
「…また来週も来い」
そう言われた気がしたけど。
僕が行っていいのかな…
なんだか、サルシンさん、とても具合も悪そうだった。
仕事が大変なのに、ただの街のパン屋である僕に会う時間まで作ってくれて。
申し訳なかったな。
それに、僕に、キ…
キ…
キスをっ…
あれは、夢じゃないよね?
唇を指でなぞると、まだサルシンさんの感触が残ってる気がした。
初めて見たサルシンさんは、噂以上に、ほんとに素敵な人だった。
あんなにかっこいい人、見たことない。
ううん、かっこいいじゃ足りない。
綺麗で、かっこよくて、良い匂いまでして、がっしりとした身体に程よく筋肉があって…
思わず抱きしめられた事まで思い出して赤面する。
あの魔術師のローブも良く似合っていて、背も高くて…
僕は、あれから、ずっとずっと、サルシンさんのことを考えていた。
「ーースっ、ムンス?おーい、ムンス?」
僕の顔の前で、父さんが手をひらひら振ってる。
「あっごめん!父さん、なんだっけ?」
ふぅ、とため息を吐いて、父さんは笑っている。
「余程、サルシンさんは素敵な人だったんだな」
「そうね、恋っていいものよね」
母さんも笑っている。
「え?こい?へ?な、なに?なんの話?」
僕の頭に??がたくさん浮かぶ。
「机の上を見てごらん」
そう言われて、僕がいる机を見ると、辺り一面、サルシンと書かれたパンで埋め尽くされていた。
サルシンさんの顔をかたどったパンまである。
ちょっと似てるけど、本物の方が1万倍かっこいい。
「えっ?なにこれ!どうしたの?」
母さんは苦笑してる。
「あなたが作ったのよ。この3日間、他のパンにも、全てサルシンて書くから作り直すのが大変だったわ」
僕は、見なくても自分の顔が真っ赤になってるのが分かった。
耳たぶも熱い。
「ところで、もう3日もサルシンさんにパンを届けていないけれど、いいのか?」
父さんの言葉に、あっ!と大切なことを思い出す。
また来いって言われてたんだ!
3日も経ってたなんて気付かなかった!
それに、パンを届ければ…またサルシンさんに会える。
「僕、行かなくちゃ!」
慌てる僕に、父さんと母さんは、笑いながら用意した焼き立てパンがたくさん詰まった袋を渡してくれる。
「そうだ!メッセージカード書かなくちゃ!」
どうしよう、緊張して手が震えて書けない。
何を書いたらいいのかも分からない。
思い出すのは、サルシンさんの体温ばかり。
「これは重症ね。うーん、直接言った方がいいかもね?会って下さるんでしょう?」
母さんは、ウインクしてる。
なんだか、サルシンさんと会うことを考えると胸がドキドキして、頭がふわふわする。
「うっうん!僕、行ってくるね!」
僕は、パンの袋を抱えて走り出す。
頭の中はサルシンさんでいっぱいで。
パンを潰さないようにしなきゃいけないのに、袋を持つ手に力が入っちゃう。
サルシンさん、早く会いたい。
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アルジが来ない。
もう3日も。
確かに、また来週も来いって、俺は言ったのに。
俺、嫌われた?
あんなこと、したから…
でも、あんな、あんな、耐えられる訳無いだろ!
俺だって男なんだ!
でも、嫌われてたら…
いやいやいやいやいやいやいやいや
別に、別に嫌われたっていいし。
だって、俺に差し向けられた刺客だよ?
陥れようとしてるんだよ?
嫌われた方がいいに決まってる。
でも、嫌われたらと思うと、叫びたくなるくらいに辛い。
胸が苦しい。
これは、やはり新たな病原菌が…
アルジに会ってから、俺は謎の体調不良に苦しめられていた。
アルジのことを考えると、胸が苦しくて痛くて、全身が熱くなるという症状だ。
動悸も半端ない。
光魔法のヒールでも、全く治らない。
俺の魔法で治らないって、もう完全に不治の病だろう。
仕方なく、周りのススメで医者に診てもらったところ
「恋の病ですな」
とヘボ医者に鼻で笑われた。
はああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ???
俺が、恋の病?
そんなバカなことがあるか。
相手は失脚請負人だぞ?
付き添ってくれた秘書が下を向いて震えていた。
きっと、俺をこんな目に合わせた奴を憎んでいるのだろう。
だが、俺も同じ気持ちだ。
安心しろ、必ずや次は俺が勝ってみせる。
俺が、あんな奴…
アルジの瞳を思い出す。
俺を見上げる涙ぐんだ瞳。
唇、柔らかかったな…
良い匂いがして、零れた涙まで美味しくて…
あのうなじも、鎖骨も、美味しそうで、あの胸の薄ピンクが…
ハッと我に返ると、医者は既にいなかった。
「ーーね、かなり重症らしいので、治るまで自室で静養して下さい」
肩を震わせたケルビンに自室へ押し込まれた。
なんだ、俺は魔術課長官だぞ?
そう簡単に仕事を休めるか!!
雑に扱いやがって!!
時々、俺はこういう嫌がらせを受ける。
元孤児だからって、バカにしやがって!
ドスン、とベッドに腰掛ける。
天井を見上げて目を閉じる。
…でも、アルジは違った、と思い出す。
なんていうか、俺を見る目が優しくて、清らかで、潤んでて、綺麗で…
俺がパンを褒めただけで、あんなに美しくに笑ってくれた。
…はぁ、ダメだ。
次に会ったら、俺は心臓発作で死ぬかもしれない。
まだ、何もアルジの攻撃への対策が立てられていないから。
…でも、それでも。
アルジに会いたい。
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