のんびりまったりダンジョン村で人間の子供を育てるの巻

にじいろ♪

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人間の子供

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うちのダンジョン村の最下層17階には、勿論、ラストボス!!キマイラのマイティが1人だけ。

人件費削減。

マイティは強いから、一人で余裕で勇者御一行とか倒せるけど、宝箱の中身を持ち帰ってもらわないと、すぐにまた勇者来ちゃうから、適当に負けて、宝箱開けてもらってる。 

この宝箱の中身も、俺達が用意してるから、最初のうちはミスリルとか頑張ってたんだけど。
あんまり頑張ると、どんどん人間が押し寄せるって分かったから…

最近は、宝箱の中身も薬草のお徳用パックとかにしてる。
その方が、がっかりして勇者が来る頻度も減るから。


ぶっちゃけ、最近、人間達は平和らしい。
戦争も無いし、犯罪率も減ってるのだろう。
人間たちの負の感情から生まれる魔素、そして俺達。

人間の負の感情が減れば、この世界の魔素は減る一方。

そのおかげで、俺たちも、だんだんと新しい魔物が生まれる数が減って、先細り状態。
魔物の高齢化も進んできている。

まさに、ジリ貧状態。
ダンジョン内で魔素が吹き出しているうちは、死にはしないけど、新しい仲間が産まれるほどの濃さは無い。

その上、最近では、ぶっちゃけ食料の問題もある。
魔素がダンジョン内にたっぷりならば、俺達は空腹にはならないし、基本は不老不死だ。
だが、これくらいの魔素だと俺たちも腹減るから、人間と同じように食べ物も食べなきゃ生きていけない。
でもさ、街に買い物になんて、そうそう行けないでしょ。
俺達魔物だし。

そんなわけで、俺たちの日々の仕事のほとんどが食料を得る為の農作業になった。

人間、争ってくれねぇかなぁ。
マジ腹減るんだよー。 


あ、勇者達、やっと帰った。


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勇者御一行が帰ったところで、全階の代表が集まって会議が行われた。
民主主義大事。
みんなで力を合わせて生きて行く為にも、不満が溜まらない組織作りを目指してます。

場所は俺の住む15階の広場。
みんなで円を作って座る。
会議の進行は、もちろん、俺。
座長はキマイラのマイティ。

まずは、ゴホンと咳払いした俺から議題について話し出す。

「今回の勇者襲来で、何か問題点があれば挙げて欲しい」

3階代表のハーピィのピイが挙手をする。
いや、手じゃなくて羽か?

「勇者が来てから各階に知らせてを回るのが、いい加減きついんだけど。もっと簡単に知らせる方法無いかなー?17階までって、もう疲れるのよー」

みんな、それぞれ口々に意見を話し出す。
忌憚ない意見交換大事。

「確かにー!ハーピィとはいえ、辛いわよねぇ?あなたもそろそろ…いい年だし?」

2階代表、サキュバスのセイラが巨乳を揺らしながら口を挟む。
この二人は、顔を合わせるとこんな感じだ。
ピイはささやかな胸?胸肉?を隠しながらセイラに聞こえるように言い返す。

「うるせえ、色ボケババア」

セイラが鬼の形相で立ち上がる。

「なんだって!!たかが鳥の分際で!!焼き鳥にして食ってやろうか!!」

「ふん!!私よりずーっと年寄りのくせに若作りしやがって!その自慢の脂肪の塊なんて、焼いたら溶けて無くなるわ!!」

ピイもセイラも、言い合う姿はオーガの俺より鬼らしい。

「静かにしろ」

オークのヒグが2人を頭を掴んで、壁際に連れて行く。
何か小声で2人に耳打ちし、放り出された2人は、そっぽを向いて、大人しくなった。
なーにをヒグが言ったんだか知らないが、これでようやく落ち着いて会議が進行出来る。
さすがはオグ。

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会議は進み、ピイの意見について更に議論を重ねた。
結局、各階の端に、下の階と繋ぐ穴を掘ることになった。
大きめの誰でも通れる穴だ。
そこから、硬い木の実の殻をたくさんくくりつけた麻縄を下ろす。
縄をゆすれば、カラカラと音が響く。
これを1階から17階まで垂らした。
これが大きく鳴れば勇者到来。
あとは、その近くに住む住人が、音を聞いたらその階全体に大声で教えて周る。

これで、ハーピィの労力は随分減るだろ。
ハーピィだけでなく、高齢化に伴い、こういう工夫も必要になってくるなと実感する。
ちなみに穴は、正面の勇者たちが入ってくるのと反対側にあるダンジョンの裏口近くから下へ繋げるにした。

こっちの裏口は、外に出られる魔物の俺たちが
外へ出るための通用口。
こっちには川から引っ張って来た木製の水場もある。
いずれは、ここからダンジョン内に水を引き込むことも考えている。
更に、今回の穴に、水を流す計画もいいかもしれない。
ダンジョン村、マンパワーが無い分、頭使います。


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そんな、のんびり牧歌的な村だが、自給自足っていうのは案外忙しい。
常にやることに追われている。
生きなきゃなんねぇからな。

今日は、外の畑を耕しに来た。
外に出れない魔物もいるから、外で活動出来る魔物は、外の畑を耕す担当になりやすい。
俺みたいに。
魔素が多かった頃にも趣味程度にダンジョン内で作物を作っていたが、その頃の作物は魔素の力で勝手にぐんぐん育って、魔物の俺たちが食べると力がみなぎるものだった。

今は、ダンジョン内の魔素がだいぶ減って、頑張って育てても、やっと普通の植物と同じくらいにしか育たないし、魔素もわずかしか含まれてねぇ。
裏口の水場から地下まで水を担いで降りて行くのはなかなかに大変で、各階層の分の水を運びは結構、疲れる。
たが、魔素の薄れた畑には毎日水やりもしないといけないから、ほんと一苦労だ。
早く地下への水路を作らないといけないが他の仕事もあって、なかなか手が回らない。

外の畑は、川から水を引いてるから、手入れもダンジョン内よりは随分と楽だ。
でも、外にそんなに長く居たら、人間に見つかるかもしれねぇ危険があるから、それ程、畑も大きく広げられない。
まあ、見つかっても俺は負けないけどな。

そんなこんなで、俺はダンジョンの裏口から鍬を持って外の畑へ来たわけだ。

ふぁー、種まきしなきゃなー。
しっかし、全然昨日の疲れが取れねぇなぁ…そろそろ年かな、俺も。

そんなことを考えながら、ぼんやりと畑を見て、うん~っ、と背伸びをする。
よし、生きるためだ!と自分に言い聞かせて、なんとかかんとか、ようやくやる気を出して畑に入る。
さーて、耕すかぁ…

ふと、目の端に、何かうつった。
木の影に、何か生き物がいる。
ん?野うさぎか?
食料なら、是非とも取って帰りたい。
何せ、あの大所帯だ。
食料は、野ウサギ一匹だろうと多めにあって困ることは無い。
一足飛びで、その木まで飛ぶ。
あ、足首痛え。
あとで薬草湿布貼ろう。

ズシン、と着地を見事に決めて野ウサギを捕まえようとしたが、木の根元にいたのは、震える人間の子供だった。

やべ、人間。
咄嗟に後ずさる。
人間の前では倒される振りをし続けて来たから、戸惑う。

それにしても…と観察する。
この子供、とんでもなくガリガリだな。
スケルトンか?っつうくらいに骨と皮だ。
いつもの勇者達は肉付き良かったから、普通の人間はあんなんだと思ってたんだが違うのか?

こりゃ…どうやっても食えねーな。

「なんだ人間、帰れ。そんなガリガリじゃ食えねえぞ」

それだけ言って、ズンズン歩いて畑に戻る。
今日は、この畑を全面耕して種まきして、収穫までには、大体3ヶ月か4ヶ月はかかるから…えーっと…

今の食料倉庫の在庫を考えながら、その次に撒く種のことを考える。
ほんとに忙しいよ、のんびり自給自足生活。

ふと見ると、さっきの人間の子供が俺の方へ、さっきより僅かに近付いて来ていた。

なんだ?
あいさつか?
いや、魔物にあいさつする人間なんていねぇよな。

「どーした?さっさと帰れ。ここはお前のような人間が来るとこじゃねえ。あ、見逃す代わりに、ここのことは人間には内緒にしろよ」

そう言って、俺はまた作業に戻る。

が…まだいる。
むしろ、少しずつ近付いて来ている。
なんだ、この子供。
畑が珍しいのか、俺がかっこいいからか?
…なわけねえよな。
オーガって言えば、泣く子も黙る鬼だ。
恐いに決まってる。

「なんだ、お前。なんか言いたいことあんなら、さっさと言え。俺は忙しいんだ」

少し強めに言うと、子供はビクッとしながらも、恐る恐る答えた。

「た、食べないって、ほんとう?」

「あ?」

またビビリながらも、そこから動かない。
なんなんだよ、この忙しい時に!

「お前のことは食わねーよ。だから、さっさと帰れって」

「僕、帰る家ないんだ」

子供は、ガリガリの身体に服と言えないようなボロ布を体に巻いていて、それを両手でギュッと握りしめて、か細い声で必死に訴える。

「はぁ?なんでだよ、お前ら人間は親とかいんだろ」

いつか聞いたことがある。
人間は男女二人で番になり、子をもうけ、愛し慈しみ育てるらしい。
魔素から生まれる魔物とは全く別の生き物だ。

子供は、ギュッと下を向いたまま震える声で話し始めた。

「ぼ、僕の家は…子供が多くて、食べ物が足りないんだ。僕は、その、真ん中だから、この森に、捨てられたんだ」

子供は泣いていた。
なんだそれ。
人間て、そんなもんなの?

「あー、そんじゃ、うち、くるか?」
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