王道を書いてみたい

ひこ

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一章 入学

大人との会話

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精神が落ち着いたので、保健室を出て現在廊下を先生と二人で歩いている。無駄な広さの廊下なので、教室まで行くのに時間かかりそうだ。暇なので、先生に質問でもしよう。

「あの、聞いていなかったのですが先生の名前なんですか?」

「あー、言ってなかったな。かりびとりんだ。漢字は草を刈るの刈と人と林の林で、刈人林な」

「刈人先生ですね。結構、珍しい名字ですね」

「うちの学校はそんな名字や名前が盛り沢山にいるからな。フルネームで覚えるの難しいぞ。俺なんて、一部しか覚えていないからな!!」

「……そこは自慢する所じゃありませんよ」

 俺の突っ込みをすると、先生は悪戯そうに「やっぱ、駄目か」と言って笑っている。大人のホストみたいな見た目にしているわりには、子供っぽい笑顔をしているよなぁ。

「お前は結構、しっかりしているよな。たしか、名前は境本敦だったよな。お前の友達が名前言っていたから覚えたわ」

「はい、境本敦で合っています。あと、別にしっかりなんてしていません。大人が苦手なので敬語らしい言葉を使っているだけで……あっ、先生は全然苦手じゃないですよ!!」

「ははっ、そこまで必死に言わなくても。まぁ、サンキューな。苦手とかじゃなくてよかった」

 普通の大人より器が大きそうな先生だなぁと思う。親以外な大人の人には関わると、気分が悪くなるときがある。嫌なそうな顔しているのは流石に駄目なので、敬語らしい言葉を使って距離を空けていく癖が昔からある。関わりたくないし、話したくもない。そんな俺が大人である先生と距離が近い状態で話すのは滅多にないことだ。良い意味で少し変な気分。

「うーん、あんまりよくはないけど。俺と二人だけの時は敬語使わなくてもいいぜ」

「えっ!? 先生には敬語を使うものですよ」

「お前の口ぶりからして、大人は結構苦手そうだし、俺で練習して慣れるべきだろう。俺も生徒と普通に話せるチャンスだしな」

「普通の生徒?」

「ほら、此処あれだし。よく、イケメンとか言われているんだよなぁ」

 先生は遠い目をして、溜め息を空に向けて吐いている。そういえば、男色家が多いんだけ。生徒会と違って、先生はダンディな大人の格好良さがある。まぁ、だから狙われるだろうな。

「えっと、それなら善処します。いや、分かりました? うん?……分かったぜ?」

「ははは、結構かわいいなお前」

「可愛くない!! 戸惑っているだけだから!!」

「そんな感じでいいよ。一応、俺と二人だけの時だけだからな」

 子供をあやす様に頭を撫でられると、少し恥ずかしそうになる。保健室のトラウマはあるけど、先生の撫で方は気持ち良い感じだ。それから、二人で語っているといつの間にか教室に着いていた。時間は結構かかったけど、此処が一年世話になる教室か。期待を込めて、先生と扉のなかに入る。
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