【完結】幼い義妹が聖女なのは内緒でお願いします

ほんだし

文字の大きさ
27 / 66
はじめての旅

にじゅうなな

しおりを挟む
 スペース全体が凍らないよう、でもさっきより強く。
 魔力の塊の果穂を抱えてると、自分の魔力以上の力は出せるが、暴走しないようにするのが難しい。
 自分1人の時の力加減と感覚が違うのだ。

「出来た!」

 厚めの氷漬けにされたゴーレム。
 耳元で果穂がすごーい、ときゃっきゃ喜んでいる。
 後でじっくり褒めて貰いたい。

「ある程度回収出来た?動き出す前に外でちゃいましょ」
「モモカ大丈夫?」
「……あの……た、立てないです……」

 振り返ると泣きそうな声で、腰を抜かしたモモカがいた。
 ごめんなさいごめんなさいと謝る姿に心が痛む。
 俺でごめんな、とルルが抱えて出てくれることになったが、それにもずっと謝り続けている。

「大丈夫よ、モモカくらい軽いもんだわ、気にしないで」
「ゴーレムは前回出なかったのか?」
「ごめんなさい……あんなおっきいの、初めて見ました、自分達が入った部屋はもっと狭かったからかもしれません……」
「じゃあもしかしたらいいお宝あるかもしれないわね!後でゆっくり確認しましょうね」

 モモカの頭を撫でて、罪悪感を減らすように、ララがにっこり笑う。その配慮が有り難い。

「……でもおかしいんです、わたしたちの時、もっといっぱいこわいの、出たんです、こんなに出ないの初めてです」
「あー……それはまたおいおい話してあげるね」
「何か、そういう魔法があるんですか?」
「そんなところよ、でもそうやって気付けるのも大事だから、また違和感があったら教えてね」
「……はいっ」


 帰り道は迷うこともなかった。
 ララが先頭に立ち、モモカは僕達と話していた筈なのに、次は右です左ですと道を覚えてる。
 そう言えば行きの時も道を覚えてると言っていた。
 偉い。本当にモモカを置いてった奴は馬鹿だ。

「結構早く出れたわね」
「そうか?昼食う暇もなかったぞ」
「あんなじめじめしたところで食事も嫌じゃない?木陰で遅いけどさっと済ませましょ」

 そう言った瞬間、モモカのお腹が鳴った。
 またすみませんすみませんと謝るモモカにこっちこそ謝りたい。
 そうだよな、昨日荷物も持ってかれて、水すら飲めてなかったんだもんな、そりゃお腹空いてるよな。寧ろ3人もいてなんで気付かなかったんだ、申し訳ない。

「大丈夫大丈夫モモカも一緒に食べよ」
「すみません大丈夫ですすみません!」
「遠慮しなくていいから、ねっ」
「大丈夫です大丈夫です大丈夫です大丈夫ですすみません迷惑ばっかりすみません!」

 ぺこぺこぺこぺこ謝るモモカ。そんなことしたら余計体力使うだろうに。

「かほもおなかすいたあ、ももちゃんもいっしょたべよー」
「いえいえいえいえ申し訳ないです……!」
「かほもてつだったんだよ!おにぎりぎゅっぎゅしたんだよ!」
「……おにぎり」
「なかのもね、いっぱいあじちがうんだよ!」
「なかの……おにぎり」

 あー、おにぎりとかわからないよね、ララとルルも初めて食べたって言ってたし、果穂もそれを知らずに話すからモモカも混乱して……混乱して、泣いてる。

「えっ、どうしたどうした何で泣いてるの!?」
「ユートいじめたの!?えーっ大丈夫よお姉さんが怒っとくからね!」
「いじめるわけないだろ!」
「……おっ、おにぎりって、おにぎりって、お米ですか!?」
「えっ、お米……だけど、えっ知ってるの」

 食いついてきたモモカに少しびっくりした。

 ララとルルは知らなかったけど、モモカの住んでいたところにはあったんだろうか。向こうの世界でも国によっては食べないもんなあ。

「おにぎり、おにぎり食べたいです、おにぎり……」

 おにぎり言うだけのマシーンになってしまったモモカを座らせて、食べやすいようにラップで包んだおにぎりを渡す。
 おかずも一緒に入れた爆弾おにぎりだ、ダンジョンに来ることになるとは思わなかったけど、手軽で丁度よかった。

「おにぎり……」

 手のひらに乗せられたそれを見つめたまま、ぽろぽろと涙を流す。
 ラップの開き方はわかるだろうか。

「いいよ、食べて」

 少し開いてやると、躊躇した後、ぱくっと口に入れた。
 まだ泣いてる。
 おいしくない?と訊く果穂に、今度はおいしいおいしいと涙を流す。
 もしかして、この子……

「もしかしてモモカ日本から来た……?」

 そんなまさか。
 そんな、異世界に飛ばされる人が何人もいるとは……いや会ったことないだけでいてもおかしくない。
 お前達だけだと言われた訳でもないし、確かに僕達はこの世界に飛ばされたんだ、モモカがそうでもおかしくない。

「……ユートさんも、日本知ってるんですか……?」
「……うん、日本から来た」
「……!」

 素直に頷いていいものか一瞬迷ったが、この状態なら大丈夫だろう、と答えると、みるみるまたモモカの涙が溢れてきて、うわあんと泣き出した。
 ……もうそれが答えのようなものだった。

「僕は果穂と来たんだけど、モモカは1人で来たの?」

 こくりと頷く。

「……そっか、どれくらい経つの?」
「い、いちねん、くらい……」
「いちねん!?」

 大きな声が出た。
 1年もここで頑張ってきたのか。

「1人で1年かあ……僕達はまだここに来て数日なんだけど……頑張ったんだねえ」

 その言葉で、またモモカは泣き崩れてしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する

白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。 聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。

処理中です...