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はじめての旅
さんじゅうさん
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「ルルは一応ララの兄ちゃんになるんだよね」
「まあそうだが」
「心配とかする?」
夕食後、ちょっと外で練習してくる!とやる気に満ちたララと百花を一応見守りながらルルに問いかける。
ルルは腹の上に寝た果穂を載せながらまた横になっている。
この男、筋トレとかしてるように見えないのに立派な筋肉をお持ちで人種の差を感じてしまう。
僕は筋トレ最近サボりがちなのもあって、ちょっと危機感を覚えてきた。
「俺の方が接近戦だからなあ、寧ろ心配されるのは俺の方では」
「心配されるのか?」
「されん」
「……」
「まああの性格だからなあ、余計な事に首突っ込んでいくもんだから、やらなくてもいいことで傷付いたりもしてるみたいだが」
「ああ……」
「でもお前達とは仲良くやってるし、楽しそうだから良かったよ」
「そっか」
そうだよな、僕達助けて貰ってばっかりだったけど、この世界に住んでる人はそれはそれで生活があって、色々なことがあったのだ。
僕達が向こうの世界でも悩みながら生きてきたのと一緒だ。
「まあ後は変な男に捕まらないことかな」
そう残すと、先に寝るわと果穂を連れて寝室に行ってしまった。
溜息が出る。
確かに頼りっぱなしで、王都に着いても頼る気しかなかった。
色々知ってて強くて、でもララもルルも何だかんだ優しくしてくれる。
僕達みたいな面倒くさいやつ、捨てられてもおかしくないわけで。
僕や百花が自分の頭がおかしくなったのかと思うのと同じように、こいつら頭おかしい奴だなと関わらない選択をされてもおかしくないのに。
「悠斗さーん!見て下さい!木の実採りました!」
「あれ、練習してたんじゃないの」
「ちゃんとしましたよ!だからほら、たくさん採れたんです!」
「暗いのによく採れたね」
「月明かりで反射するみたいで、探しやすかったです。味が桑の実に似てる気がして」
「へえ、僕桑の実食べたことないや」
「たくさん採れたから、ジャムにしたらおいしいかなって思って」
「いいじゃん、砂糖と瓶出そうか」
「レモンもほしいですー」
「ん、わかった」
どうやら分身して木の実を採ったらしい。なんて平和な特訓なんだ。
砂糖と瓶とレモンを出すと、百花はそれも抱えて嬉しそうにキッチンへと駆けていった。
「お疲れ様」
「これくらい、全然疲れてないわよ」
「木の実採ってたの?」
「元々そのつもりじゃなかったわよ、まずはモモカの状態を見たいと思ったんだけど、あの子目も良いのね、視力の方だけど……木の実を見るなり、これ食べれますかって訊くから大丈夫よって答えたらすぐに口に入れて、おいしい採って良いですかって」
「小さい割に食べるよな」
「まぁあの子の魔法は魔力使うからそれを補うのもあるんでしょうね」
「じゃあ結局何もわからなかったのかあ」
「そうでもないわよ、視力がいいのはわかったし、今日は明るいとはいえ夜の戦闘でも大丈夫そうね。手際もいいし、素直だから飲み込みもいい、水属性が苦手みたいだけど、風属性は得意みたいだからそこを伸ばすとモモカの魔法と相性いいんじゃないかしら」
「すごいな」
もうララが先生みたいだ。
「ララ達学園行く意味あるのか?」
「正直あたしたちもそう思うけど。でも結局あたしたちの知識なんて独学だからね。違う方からの知識も入れろって言われちゃった」
「なるほど」
「後はほんとに同年代との関わりが少なかったから、そこをどうにかして楽しんできなさいっていう村の心遣いかもね」
「ああ」
「そういう点では結構楽しみなのよ、あたしたちの知らない知識や魔法があるのかもしれない、ユート達みたいな不思議な人もいるかもしれないしね」
「なんか僕もまだいる気がしてきたよ」
「ふふ」
冷えてきたし戻りましょうか、と促されて中に戻ると、砂糖の甘いかおりが充満していた。
早速ジャム作りに励んでいたらしい。
「瓶も煮沸消毒するんだ」
「魔法で出されたものだししなくてもいいのかなって思ったんですけど、迷うくらいならやった方が確実だなって」
「あー」
「明日の朝食はパンにしようと思って!」
「パンも作れるの?」
「簡単なやつなら!」
生き生きしている。本当に料理が趣味だったんだな。
「お店開けばいいんじゃない?」
「それはだめだよ」
そうララに返すと、意外そうな表情をしている。
「こういうのは結局僕が魔法で出してるだけだし。そりゃ流通しても僕は構わないし何処でもおいしいご飯食べられたら嬉しいし、ダンジョンとか行くより店開く方が安全だろうけど。でも僕しか使えない魔法だし、そんな大勢に広められるものじゃないのがわかってるから中途半端に売り物にするのはなあって……忙しくなり過ぎて働き詰めも嫌だし、面倒ごとがあっても嫌だし、果穂のことがバレても困るし。身内で楽しめればいいかな」
「果穂ちゃんのこと?」
そういえば桃花には果穂のことは話さないでいたのだった。
一緒に暮らすなら、百花ならもう話しておいた方がいいかと思い、伝えておく。
ただ、聖女かもしれないということだけ伏せておいた。
確定ではないし、百花も頭の悪い子ではない。もし王都で聖女の話を聞いても、察して果穂のことを話をしたりはしないだろう。
「まあそうだが」
「心配とかする?」
夕食後、ちょっと外で練習してくる!とやる気に満ちたララと百花を一応見守りながらルルに問いかける。
ルルは腹の上に寝た果穂を載せながらまた横になっている。
この男、筋トレとかしてるように見えないのに立派な筋肉をお持ちで人種の差を感じてしまう。
僕は筋トレ最近サボりがちなのもあって、ちょっと危機感を覚えてきた。
「俺の方が接近戦だからなあ、寧ろ心配されるのは俺の方では」
「心配されるのか?」
「されん」
「……」
「まああの性格だからなあ、余計な事に首突っ込んでいくもんだから、やらなくてもいいことで傷付いたりもしてるみたいだが」
「ああ……」
「でもお前達とは仲良くやってるし、楽しそうだから良かったよ」
「そっか」
そうだよな、僕達助けて貰ってばっかりだったけど、この世界に住んでる人はそれはそれで生活があって、色々なことがあったのだ。
僕達が向こうの世界でも悩みながら生きてきたのと一緒だ。
「まあ後は変な男に捕まらないことかな」
そう残すと、先に寝るわと果穂を連れて寝室に行ってしまった。
溜息が出る。
確かに頼りっぱなしで、王都に着いても頼る気しかなかった。
色々知ってて強くて、でもララもルルも何だかんだ優しくしてくれる。
僕達みたいな面倒くさいやつ、捨てられてもおかしくないわけで。
僕や百花が自分の頭がおかしくなったのかと思うのと同じように、こいつら頭おかしい奴だなと関わらない選択をされてもおかしくないのに。
「悠斗さーん!見て下さい!木の実採りました!」
「あれ、練習してたんじゃないの」
「ちゃんとしましたよ!だからほら、たくさん採れたんです!」
「暗いのによく採れたね」
「月明かりで反射するみたいで、探しやすかったです。味が桑の実に似てる気がして」
「へえ、僕桑の実食べたことないや」
「たくさん採れたから、ジャムにしたらおいしいかなって思って」
「いいじゃん、砂糖と瓶出そうか」
「レモンもほしいですー」
「ん、わかった」
どうやら分身して木の実を採ったらしい。なんて平和な特訓なんだ。
砂糖と瓶とレモンを出すと、百花はそれも抱えて嬉しそうにキッチンへと駆けていった。
「お疲れ様」
「これくらい、全然疲れてないわよ」
「木の実採ってたの?」
「元々そのつもりじゃなかったわよ、まずはモモカの状態を見たいと思ったんだけど、あの子目も良いのね、視力の方だけど……木の実を見るなり、これ食べれますかって訊くから大丈夫よって答えたらすぐに口に入れて、おいしい採って良いですかって」
「小さい割に食べるよな」
「まぁあの子の魔法は魔力使うからそれを補うのもあるんでしょうね」
「じゃあ結局何もわからなかったのかあ」
「そうでもないわよ、視力がいいのはわかったし、今日は明るいとはいえ夜の戦闘でも大丈夫そうね。手際もいいし、素直だから飲み込みもいい、水属性が苦手みたいだけど、風属性は得意みたいだからそこを伸ばすとモモカの魔法と相性いいんじゃないかしら」
「すごいな」
もうララが先生みたいだ。
「ララ達学園行く意味あるのか?」
「正直あたしたちもそう思うけど。でも結局あたしたちの知識なんて独学だからね。違う方からの知識も入れろって言われちゃった」
「なるほど」
「後はほんとに同年代との関わりが少なかったから、そこをどうにかして楽しんできなさいっていう村の心遣いかもね」
「ああ」
「そういう点では結構楽しみなのよ、あたしたちの知らない知識や魔法があるのかもしれない、ユート達みたいな不思議な人もいるかもしれないしね」
「なんか僕もまだいる気がしてきたよ」
「ふふ」
冷えてきたし戻りましょうか、と促されて中に戻ると、砂糖の甘いかおりが充満していた。
早速ジャム作りに励んでいたらしい。
「瓶も煮沸消毒するんだ」
「魔法で出されたものだししなくてもいいのかなって思ったんですけど、迷うくらいならやった方が確実だなって」
「あー」
「明日の朝食はパンにしようと思って!」
「パンも作れるの?」
「簡単なやつなら!」
生き生きしている。本当に料理が趣味だったんだな。
「お店開けばいいんじゃない?」
「それはだめだよ」
そうララに返すと、意外そうな表情をしている。
「こういうのは結局僕が魔法で出してるだけだし。そりゃ流通しても僕は構わないし何処でもおいしいご飯食べられたら嬉しいし、ダンジョンとか行くより店開く方が安全だろうけど。でも僕しか使えない魔法だし、そんな大勢に広められるものじゃないのがわかってるから中途半端に売り物にするのはなあって……忙しくなり過ぎて働き詰めも嫌だし、面倒ごとがあっても嫌だし、果穂のことがバレても困るし。身内で楽しめればいいかな」
「果穂ちゃんのこと?」
そういえば桃花には果穂のことは話さないでいたのだった。
一緒に暮らすなら、百花ならもう話しておいた方がいいかと思い、伝えておく。
ただ、聖女かもしれないということだけ伏せておいた。
確定ではないし、百花も頭の悪い子ではない。もし王都で聖女の話を聞いても、察して果穂のことを話をしたりはしないだろう。
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