【完結】幼い義妹が聖女なのは内緒でお願いします

ほんだし

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はじめての旅

さんじゅうよん

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「精霊の話は聞いたことあります、ギルドの受付のお姉さんが言ってました」
「百花は見えないの?」
「見えないですよ……でもあの、魔法を使う時、なんかぱちぱち光ったりはします」
「魔力が高い子はそういう子多いわね」
「じゃああれ精霊だったんですね!すごい!」

 絵本みたい、と無邪気に喜んでいる。
 ちょっと前まで小学生だった子はまだまだ純粋だな、と微笑ましい。

「でも果穂ちゃんすごい子だったんですね……ダンジョンでもこの旅でも殆どモンスター出てこないので不思議だな、そういう魔法でもあるのかなって思ってました……あっ、だからこの髪飾りも果穂ちゃんじゃなくてわたしにくれたんですね!」
「それもあるけど、単純にカホよりモモカに似合うのもあるわね」
「えへ……」
「多少は出てくれたら2人の練習に使えるんだけどね」
「便利なんですね~あっ便利なんて言い方失礼か」

 くつくつと沸騰する鍋の中身をかき混ぜながら、わかりました、誰にも言いません、と少しキリッとした表情で約束してくれた。

「約束のやつはしないの?」
「約束のやつ?」
「小指の」

 ララに言われて、以前ララと果穂が指切りをしたのを思い出して、小指を出す。
 百花もそれで察して指切りをした。果穂以外との指切りなんて幼稚園の時以来である。少し照れくさい。

「さ、ジャムも作れたならもう休みましょ、休むのも大事よ」

 いい時間になったところで、ララに締められて休むことになった。

 今日はララと百花が一緒に寝ると言うので、僕はルルが寝る部屋へと向かう。
 女の子同士でも仲良くしてるようでそれはそれで嬉しい。

「……こっちも仲良くやってくれてるけどな」

 ルルと果穂は2人仲良く大の字になって寝ていた。人間と飼い猫が同じ格好で寝てるようだ。こんなん笑っちゃうだろ。
 2人に布団を掛けて、自分もベッドに横になる。

 この部屋にまで甘いにおいが届いてる気がする。
 ……明日が楽しみだな、そう思って、この世界に順応してきた自分に気付いて、安心したような、そんな自分にちょっとゾッとしたような気持ちで目を閉じた。



 翌日も特に問題はない旅だった。
 王都が近いからか、やっと商人らしきグループとすれ違ったくらいだ。

「このペースだと夜には王都につきそうなんだけど、夜についても面倒だから今夜は外に泊まって、明日の朝王都に入ろうと思うんだけどどう?」
「賛成」
「それでいいと思う」
「はい!」

 正直僕としては宿よりロッジの方が綺麗で落ち着く。
 夜についてなんやかんやと済むわけがないから、やっぱり明日の早い時間に王都に入る方がいいだろう。

「明日からは忙しいわよ、あたしたちは学園へ手続きも行かないと行けないし、土地も買いに行かないといけないでしょ、ギルドにも行かなきゃ」
「王都がどういう感じかも確認しなきゃ」
「百花の件も報告しなきゃね」
「えっ」
「あんなところに小さい女の子が荷物取られて放置されたのよ、悪質だわ、次の被害者が出ないようにもしたいし何より」
「何より?」
「モモカにそんなことしたのが許せないわ」
「同感」
「そんな冒険者潰してよし」

 そこまでしないで大丈夫ですよお、と慌てる百花に、思い出して、とララが続ける。

「あたしたちがすれ違ったのは今日1組だけよね?別ルートもあるとはいえ、あの状態じゃ、あたしたちはたまたま気が変わってダンジョンを探したけど、それがなければモモカに会うことはなかったのよ」
「あっ」
「そしたらモモカはあんなとこでひとりだったの。耐えられる?」
「たえられない、です……」
「もうモモカみたいな子が出ないように、そんなクソ野郎はちゃんと報告しておくべきよ、何ならあたしが絞め落としたいくらいだわ」
「お前は本気で落としそうだからやめとけ」
「本気だもの」

 ああ、顔が怒ってる。仕方ない。僕も同じ気持ちだ。
 でもララに犯罪者になってもらっては困るので、手出しはさせないようにしなければ。

「ところで」
「はい」
「ひとつ確認なのですが」
「なによ」
「僕は土地を買って家を建てるけど、ララとルルはどうするんだろうと思って。一緒に住む気でいたけど、もしかして他のとこが決まってたりするのかなって」
「一緒に住めるものなら一緒に住みたいわよ、ふわふわのベッドもユートとモモカのご飯も最高だもの!」
「俺もそっちの方がありがてえなあ、確かに飯と寝床は大事だ」
「土地は少し外れの方で考えてたんだけど」
「まぁ急に建てたら目立っちゃうものね」
「学園から多少離れちゃうのかなって……まだ僕は王都に行ったことないからわからないんだけど」
「いいんじゃない?明日見てから考えていいと思うけど、外れた土地のほうが色々出来て安心かもしれないわね」

 僕達は多少調整出来るとして、果穂がなにしでかすかわからないのもあるからなあ。
 百花くらいになると色々理解してくれるが、あの子くらいに小さいと、自分の置かれてる立場もわからず、ついつい何かしてしまってもおかしくない。
 今ですら自分でよくわからないのに自然に魔法を発動している状態なのだ、自衛も必要なのである。
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