39 / 57
第39話 貿易開始
しおりを挟む
「――といった感じで、こちらの価格で『死地』で採れた野菜を買い取らせていただきたく思います」
「な、なるほど……」
俺はローアさんから渡された野菜類やお酒、チョコレートの買い取り額が書かれた紙を読みながら、むむっと唸っていた。
価格の他に運搬費などその他諸々の経費などが書かれており、結構な項目数があった。これ全部目を通すの時間かかるぞ。
「よろしければ、こちらにサインを」
「ふー……」
俺は手渡されたペンを持ちながら、小さくため息を漏らす。
マズいな。野菜の相場はラインさんたちから聞いてはいるが、『死地』で作った野菜の価値がこれで良いのか分からない。普通の野菜よりも高く買い取ってくれるみたいだけど、この額は適正なのかな?
「待って、ご主人様。ちょっとその紙貸して」
俺がそんな感じでしばらく唸っていると、俺の隣に座っているカグヤがトントンっと俺の方を叩いた。
そう言えば、さっきからカグヤも真剣に俺の持っている紙を見てたな。
そんなことを考えながら紙を渡すと、カグヤはしばらくその紙を読んでから顔を上げた。
「野菜の価格は問題ないけど、お酒と甘味の価格設定と運搬費とその他の経費は気になるかな」
カグヤはそう言うと、じろっとした目をローアさんに向ける。それから、カグヤは野菜の価格などが書かれた紙をテーブルに置くと、適宜書かれている項目に指をさしながら続ける。
「あと、お酒の甘味の価格設定が納得できないかな。このお酒って貴族御用達の中でもランクが低いやつでしょ? この前お土産に渡した奴が、このランクのお酒と一緒っていう気がしないんだけど?」
カグヤに矢継ぎ早に言われたローアさんは、少し言葉に詰まっていた。
俺はそんな頼もしいカグヤを見て感心して声を漏らす。
カグヤは俺が修行をしている間、グラン大国に視察に行ってもらっていた。そこで市場調査をしてもらっていたのだが、どうやらその効果がかなりあったみたいだ。
まさか、データを取ってくると言っていたけど、ここまで色々と知識を入れてきてくれるとは思わなかったな。
すると、さっきまで余裕の表情をしていたローアさんが眉を下げてから俺を見た。
「参りましたね。やはり、ただアストロメア家を追い出されただけの人ではないみたいだ」
あれ? 俺は何も言っていないのに、なんか俺の評価が上がった?
俺が首を傾げていると、ローアさんはその表情のまま笑みを浮かべて、鞄から別の資料を取り出した。
「すみません。ここが外交に対してどこまで知識があるのか試させてもらいました。本当の見積書はこちらになります」
ローアさんは頭を下げてから、さっきと同じような項目が書かれた紙を手渡してきた。その内容を覗いてみると、全体的に金額が上がっている。
なるほど……初めに引っ掛けに来たのか。
すると、カグヤがぴたりと俺の体に密着するようにして、俺が持っている紙を覗き込んできた。
「カグヤ。カグヤはこれを見てどう思う?」
「この運搬費を調整できれば、買い取り価格もっと上げられるよね? ポータブル冷蔵庫を使えば、もっとここの費用下げられるでしょ」
ローアさんはカグヤの言葉を聞くと、眼鏡の淵をスチャッと上げて続ける。
「ええ、可能ですよ。今回お預かりしたポータブル冷蔵庫を保管庫として貸していただけるのなら、対応できます。それはこっちの見積書になりますね」
すると、ローアさんはまた別の見積もり書を取り出して、それをカグヤに手渡した。カグヤはその見積書に目を通して、また何か交渉をし始めた。
ローアさん、一体何段階の見積もりを用意しているんだろうか?
俺は少しの疎外感を覚えながら、二人が交渉しているのを隣で見ることにした。
専門的なことを話す二人の会話に入っていけないし、黙っておくとしよう。
俺がそんなことを考えながらお茶を飲んでいると、俺と同じように静かにお茶を飲んでいるエミーさんと目が合った。
すると、エミーさんは何かを思い出したように小さく声を漏らす。
「そうだ。また別日に視察に来させて欲しいのだが、構わないだろうか?」
「もちろんですよ。エミーさんたちならいつでも歓迎です」
「そうか。それはよかったよ。商談もまとまりそうだし、ここは治安も悪くない。あの方を連れてきても問題ないだろう」
「あの方?」
俺は含みのある笑みを浮かべたエミーさんの言葉に首を傾げる。
一体、誰がこんな辺境の地にくるというのだろうか?
俺はそんなことを考えながら、カグヤとローアさんの商談が終わるのを静かに待つのだった。
「な、なるほど……」
俺はローアさんから渡された野菜類やお酒、チョコレートの買い取り額が書かれた紙を読みながら、むむっと唸っていた。
価格の他に運搬費などその他諸々の経費などが書かれており、結構な項目数があった。これ全部目を通すの時間かかるぞ。
「よろしければ、こちらにサインを」
「ふー……」
俺は手渡されたペンを持ちながら、小さくため息を漏らす。
マズいな。野菜の相場はラインさんたちから聞いてはいるが、『死地』で作った野菜の価値がこれで良いのか分からない。普通の野菜よりも高く買い取ってくれるみたいだけど、この額は適正なのかな?
「待って、ご主人様。ちょっとその紙貸して」
俺がそんな感じでしばらく唸っていると、俺の隣に座っているカグヤがトントンっと俺の方を叩いた。
そう言えば、さっきからカグヤも真剣に俺の持っている紙を見てたな。
そんなことを考えながら紙を渡すと、カグヤはしばらくその紙を読んでから顔を上げた。
「野菜の価格は問題ないけど、お酒と甘味の価格設定と運搬費とその他の経費は気になるかな」
カグヤはそう言うと、じろっとした目をローアさんに向ける。それから、カグヤは野菜の価格などが書かれた紙をテーブルに置くと、適宜書かれている項目に指をさしながら続ける。
「あと、お酒の甘味の価格設定が納得できないかな。このお酒って貴族御用達の中でもランクが低いやつでしょ? この前お土産に渡した奴が、このランクのお酒と一緒っていう気がしないんだけど?」
カグヤに矢継ぎ早に言われたローアさんは、少し言葉に詰まっていた。
俺はそんな頼もしいカグヤを見て感心して声を漏らす。
カグヤは俺が修行をしている間、グラン大国に視察に行ってもらっていた。そこで市場調査をしてもらっていたのだが、どうやらその効果がかなりあったみたいだ。
まさか、データを取ってくると言っていたけど、ここまで色々と知識を入れてきてくれるとは思わなかったな。
すると、さっきまで余裕の表情をしていたローアさんが眉を下げてから俺を見た。
「参りましたね。やはり、ただアストロメア家を追い出されただけの人ではないみたいだ」
あれ? 俺は何も言っていないのに、なんか俺の評価が上がった?
俺が首を傾げていると、ローアさんはその表情のまま笑みを浮かべて、鞄から別の資料を取り出した。
「すみません。ここが外交に対してどこまで知識があるのか試させてもらいました。本当の見積書はこちらになります」
ローアさんは頭を下げてから、さっきと同じような項目が書かれた紙を手渡してきた。その内容を覗いてみると、全体的に金額が上がっている。
なるほど……初めに引っ掛けに来たのか。
すると、カグヤがぴたりと俺の体に密着するようにして、俺が持っている紙を覗き込んできた。
「カグヤ。カグヤはこれを見てどう思う?」
「この運搬費を調整できれば、買い取り価格もっと上げられるよね? ポータブル冷蔵庫を使えば、もっとここの費用下げられるでしょ」
ローアさんはカグヤの言葉を聞くと、眼鏡の淵をスチャッと上げて続ける。
「ええ、可能ですよ。今回お預かりしたポータブル冷蔵庫を保管庫として貸していただけるのなら、対応できます。それはこっちの見積書になりますね」
すると、ローアさんはまた別の見積もり書を取り出して、それをカグヤに手渡した。カグヤはその見積書に目を通して、また何か交渉をし始めた。
ローアさん、一体何段階の見積もりを用意しているんだろうか?
俺は少しの疎外感を覚えながら、二人が交渉しているのを隣で見ることにした。
専門的なことを話す二人の会話に入っていけないし、黙っておくとしよう。
俺がそんなことを考えながらお茶を飲んでいると、俺と同じように静かにお茶を飲んでいるエミーさんと目が合った。
すると、エミーさんは何かを思い出したように小さく声を漏らす。
「そうだ。また別日に視察に来させて欲しいのだが、構わないだろうか?」
「もちろんですよ。エミーさんたちならいつでも歓迎です」
「そうか。それはよかったよ。商談もまとまりそうだし、ここは治安も悪くない。あの方を連れてきても問題ないだろう」
「あの方?」
俺は含みのある笑みを浮かべたエミーさんの言葉に首を傾げる。
一体、誰がこんな辺境の地にくるというのだろうか?
俺はそんなことを考えながら、カグヤとローアさんの商談が終わるのを静かに待つのだった。
92
あなたにおすすめの小説
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~
eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」
王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。
彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。
失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。
しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。
「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」
ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。
その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。
一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。
「ノエル! 戻ってきてくれ!」
「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」
これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので
eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」
勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。
しかし、勇者たちは気づいていなかった。
彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。
アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。
一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。
そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……?
一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。
「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」
これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ありふれた話 ~追放された錬金術師は、神スキル【物質創造】で辺境に楽園を築きます。今さら戻ってこいと言われても以下略
ゆきむらちひろ
ファンタジー
「追放」「ざまぁ」「実は最強」「生産チート」「スローライフ」「可愛いヒロイン」などなど、どこかで見たことがあるような設定を山盛りにして、ゆきむら的に書き殴っていく異世界ファンタジー。
■あらすじ
勇者パーティーで雑用兼ポーション生成係を務めていた錬金術師・アルト。
彼は勇者から「お前のスキルはもう限界だ。足手まといだ」と無一文で追放されてしまう。
失意のまま辺境の寂れた村に流れ着いたアルトだったが、
そこで自身のスキル【アイテム・クリエーション】が、
実はただのアイテム作成ではなく、
物質の構造を自在に組み替える神の御業【物質創造】であることに気づく。
それ以降、彼はその力で不毛の土地を肥沃な農地に変え、
枯れた川に清流を呼び戻し、
村人たちのために快適な家や温泉まで作り出していく。
さらに呪いに苦しむエルフの美少女を救い、
お人好しな商人、訳ありな獣人、腕利きのドワーフなどを取り入れ、
アルトは辺境を活気あふれる理想郷にしようと奮闘する。
一方、アルトを追放した勇者パーティーは、なぜかその活躍に陰りが見えてきて……。
―・―・―・―・―・―・―・―
タイトルを全部書くなら、
『追放された錬金術師は、神スキル【物質創造】で辺境に楽園を築きます ~今さら戻ってこいと泣きつかれても、もう遅い。周りには僕を信じてくれる仲間がいるので~』という感じ。ありそう。
※「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。
※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる