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第40話 一方ダーティside
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グラン大国とメビウスたちの商談が終わって数週間後、ラキストはダーティにまた屋敷に呼ばれていた。
「こ、今度は何ですか。父上」
まだメビウスを見つけられていないラキストは、そのことを詰められるのだろうと気が進まなかったが、半強制的に屋敷に連れてこられてしまったのだった。
しかし、機嫌が悪いだろうと思って顔を上げると、そこには興奮状態のダーティの姿があった。
「おい、『死地』に国があるというのは本当か⁉」
「『死地』に国ですか? い、いえ、聞いたことありませんけど」
アストロメア家のラキストが治める領地は、丘隆を挟んで『死地』の隣にある。すぐ隣の場所でそんな大掛かりなことが行われていたら、ラキストがそれに気づかないはずがなかった。
そもそも、『死地』に人が住める場所があるわけがない。
その考えが根幹にあるだけに、ラキストはダーティの言葉の意味が分からなかった。
「グラン大国に行き来している商人から聞いた話だから、この話は確実なはずなんだ!」
「そ、そうですか。まぁ、奇跡的に一部だけ住める場所があっても、おかしくはないかもしれませんね」
いつになくテンションが高いダーティを前に、ラキストは気圧されながら頷く。ラキストはここでダーティの言葉を否定して、ダーティにへそを曲げられる方が厄介だと思ったからだ。
すると、ダーティはそのまま前のめり気味で続ける。
「あそこでしか手に入らない野菜や酒などがあるみたいなんだ! 早くその味を確かめてみたい! なんとしてでも、手に入れてきてくれ!」
「そんなものがあるんですか? そうですね、本当にあるのなら興味はありますね」
ラキストは思ってもいなかった言葉に自然と食いつく。
貴族にとってまだ一般的に食べられていない物を食べるというのは、一つのステータスでもある。
それに、多く仕入れることができれば国王に献上することで、自分の名前を売ることができるかもしれない。
この国の中で一番『死地』に近い場所にいるというのを活かせるのは今回くらいしかないだろう。
ラキストはそう考えて、口元を緩ませた。
「父上。その野菜や酒、私が手に入れてきましょう」
「本当か⁉」
ラキストがそう言うと、ダーティは分かりやすく表情を柔らかくした。ラキストはそんなダーティの表情を見て、得意げに続ける。
「ええ。あの丘隆は地元のものでないと迷うかと思います。人を何人か回していただければ、編成を組んで『死地』に向かわせますよ」
「そうか! やはり、おまえならそう言ってくれると信じておったぞ!」
ラキストはいつになく上機嫌なダーティを見て、心の中で安どのため息を吐く。それと同時に、自分がなぜ屋敷に呼ばれたのかを察した。
ダーティはメビウスの件でずっと機嫌が悪く、ラキストに早くメビウスの死体を持ってこいという催促が多かった。
しかし、それがここ最近になってピタリとやんだ。
その理由が『死地』にあるとある国のことに考えが向いたからだった。
きっと、この件を上手いことこなせば、メビウスのことも考えることが減るはずだ。
そう考えたラキストは、以前の失敗を取り戻すためにもかなり張り切っていた。
すると、そんな様子のラキストを見たダーティは満足げに頷く。
「もしかしたら、私の後にこの家を継ぐのはお前かもしれんな」
「父上にそう言って頂けて、嬉しい限りですよ」
ダーティとラキストの間では、小国が自分たちと商売できるというチャンスを逃すはずがないから、『死地』にある国を見つけさえすれば、珍しい野菜や酒が手に入るものだと思っていた。
当然、この時の二人はその小国というのがメビウスが建てようとしている国だとは思いもしなかった。
「こ、今度は何ですか。父上」
まだメビウスを見つけられていないラキストは、そのことを詰められるのだろうと気が進まなかったが、半強制的に屋敷に連れてこられてしまったのだった。
しかし、機嫌が悪いだろうと思って顔を上げると、そこには興奮状態のダーティの姿があった。
「おい、『死地』に国があるというのは本当か⁉」
「『死地』に国ですか? い、いえ、聞いたことありませんけど」
アストロメア家のラキストが治める領地は、丘隆を挟んで『死地』の隣にある。すぐ隣の場所でそんな大掛かりなことが行われていたら、ラキストがそれに気づかないはずがなかった。
そもそも、『死地』に人が住める場所があるわけがない。
その考えが根幹にあるだけに、ラキストはダーティの言葉の意味が分からなかった。
「グラン大国に行き来している商人から聞いた話だから、この話は確実なはずなんだ!」
「そ、そうですか。まぁ、奇跡的に一部だけ住める場所があっても、おかしくはないかもしれませんね」
いつになくテンションが高いダーティを前に、ラキストは気圧されながら頷く。ラキストはここでダーティの言葉を否定して、ダーティにへそを曲げられる方が厄介だと思ったからだ。
すると、ダーティはそのまま前のめり気味で続ける。
「あそこでしか手に入らない野菜や酒などがあるみたいなんだ! 早くその味を確かめてみたい! なんとしてでも、手に入れてきてくれ!」
「そんなものがあるんですか? そうですね、本当にあるのなら興味はありますね」
ラキストは思ってもいなかった言葉に自然と食いつく。
貴族にとってまだ一般的に食べられていない物を食べるというのは、一つのステータスでもある。
それに、多く仕入れることができれば国王に献上することで、自分の名前を売ることができるかもしれない。
この国の中で一番『死地』に近い場所にいるというのを活かせるのは今回くらいしかないだろう。
ラキストはそう考えて、口元を緩ませた。
「父上。その野菜や酒、私が手に入れてきましょう」
「本当か⁉」
ラキストがそう言うと、ダーティは分かりやすく表情を柔らかくした。ラキストはそんなダーティの表情を見て、得意げに続ける。
「ええ。あの丘隆は地元のものでないと迷うかと思います。人を何人か回していただければ、編成を組んで『死地』に向かわせますよ」
「そうか! やはり、おまえならそう言ってくれると信じておったぞ!」
ラキストはいつになく上機嫌なダーティを見て、心の中で安どのため息を吐く。それと同時に、自分がなぜ屋敷に呼ばれたのかを察した。
ダーティはメビウスの件でずっと機嫌が悪く、ラキストに早くメビウスの死体を持ってこいという催促が多かった。
しかし、それがここ最近になってピタリとやんだ。
その理由が『死地』にあるとある国のことに考えが向いたからだった。
きっと、この件を上手いことこなせば、メビウスのことも考えることが減るはずだ。
そう考えたラキストは、以前の失敗を取り戻すためにもかなり張り切っていた。
すると、そんな様子のラキストを見たダーティは満足げに頷く。
「もしかしたら、私の後にこの家を継ぐのはお前かもしれんな」
「父上にそう言って頂けて、嬉しい限りですよ」
ダーティとラキストの間では、小国が自分たちと商売できるというチャンスを逃すはずがないから、『死地』にある国を見つけさえすれば、珍しい野菜や酒が手に入るものだと思っていた。
当然、この時の二人はその小国というのがメビウスが建てようとしている国だとは思いもしなかった。
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―・―・―・―・―・―・―・―
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※「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。
※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。
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