公爵令嬢は優し過ぎる!

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第一章:二人の出会い

episode-5

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あの事件から一年が経ち、私は通っていた学園を無事卒業することが出来ました。事件があってからというもの、実を言うところ学園に行ったら腫れ物を触られるがごとく扱われるのかと思いきや、皆さん心配してくれて別段普通通りに学園生活を送り続けることが出来たのです。
やはり持つべきものは友人ですね。

「ハミィ様…これでお別れなんて寂しいですわ。」

「お姉様…また学園にあそびにいらして下さいね。」

「ハミィ嬢!」

「ハミィ様!!」

校門へと出口を進める道すがら、次々と贈られる優しい言葉たちにとうとう涙が溢れてしまいました。

「ありがとう、約束するわ!」

華々しい卒業式も終わり、一週間が経とうとしていました。

「姉様、本を読んで!」

コンコン、と扉を鳴らして入ってきたのはまだ五歳の私の弟、マルタでした。

「いいわよマルタ、さぁお姉ちゃんの横に座って。」

「はい!」

学生中は生徒会やライン・ブラット家の一員として働くことが多かったので、あまり構って挙げられませんでしたが、卒業してからというもの時間は寝ても余るほどあるので弟の相手をするうちに随分と仲が良くなりました。

「今日は何を読むのかしら?」

「精霊の本!この世界の精霊がぜーんぶ載ってるんです。」

少し興奮気味に説明してくれる弟を微笑ましく眺めながら、本を読んでいくことにした。

「シルフ、シルフは風を司る四代精霊の一角でその姿は清いものにしか見えない、ですって。」

「姉様は見たことありますか?」

「そうねぇ、あるかもしれないわ。」

秘密口調で話すとマルタに教えてとねだられましたが、そこは秘密の方が面白いでしょう。あえて黙りました。それから少し読み進めると、マルタがすぅすぅと寝息をたてているのに気が付きました。

「マルタ、マルタ」

呼びかけても起きる気配が無かったので、

「マチルダ、マルタは今日ここで寝かしてあげるとお母様に伝えてくれるかしら。」

乳母のマチルダに伝言を頼み、私も眠りにつくことにしました。 



「ハミィ、アナタハヤサシスギヨ。」

「そうかしら、そんなことは無いわ。」

「イイエソンナコトアルワヨ、ネェミンナ。」

「ソウダ」

「エエ、ホントソノトウリ!」

「あら、夜が明けるわ。ごめんなさい精霊さんたち、もう起きなくちゃ。」

「イツカ、ワタシタチノモリニキテネ。」

「ヤクソクヨ」

「ええ、約束する。」

「ジャア、バイバイ。」

「バイバーイ」

「えぇ、さようなら!」

今朝目を覚ますと夢の内容が気になりました。精霊と会話をするというとても不思議な夢を見ていたのです。それも妙に現実的で、まるで自分が起きて精霊さんたちと本当に話しているような感覚だったのです。きっと寝る前にマルタの本を読んだからでしょう。

「ふふっ、私ったら影響されやすいのね。」


その時は、何か大きなものが私に迫っていているなど夢にも思いませんでした。
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