公爵令嬢は優し過ぎる!

neo

文字の大きさ
16 / 30
第一章:二人の出会い

episode-17

しおりを挟む
「ツイタヨ」

「ありがとう」

前にエドと来た場所の筈なのに、そこは全然違う風景に見えました。

湖面の真上に禍々まがまがしく黒を帯びた球体が浮遊していました。

「アレガマリョクサイガイノカクダヨ。」

「ハミィ、アレニフレテ。アノカタマリノコエヲキイテ。」

ゆっくりと、私はソレに近づき側面に触れました。すると冷水に包まれる感覚におそわれ、辺りはひたすらな闇となっていたのです。

「ここは、、」

見回すと、そこに一人見覚えのある小さな背中がうずくまって泣いていました。

「っマルク!」

その方に触れこちらに向かすと、マルクの目は空洞で。真っ黒な涙を流していました。

「ボクハ、チガウ。」

「あなた、、あなたはもしかして。」

「ソウ、ボクハヤミ。キミハイトシゴ、、」

「マルクは、マルクは大丈夫なの。」

「コレハボクノウツワ、モウボクノモノ。」

「駄目よ、マルクは私の大切な家族なの、返して。」

フルフルと首を降り、闇はそれ以降何も言おうとはしませんでした。

「…分かったわ。それなら、あなたの器は私が成りましょう。マルクの魔力より、私の魔力の方が遥かに多い、それはあなたも感じるでしょう。だから弟を使って私を呼び寄せたのでしょう?ならば私に入りなさい。」

すると闇はニタァ、と気持ちの悪い笑顔をしながら弟の口から出てきました。

「ハヤク、ハヤク。」

弟が元の姿に戻ったのを確認してから、私は闇に向かって言いました。

「さぁ、入るといいわ。」

ドンッ!体全体が吹っ飛びそうな衝撃が体を突き抜けましたが、それに耐えると頭の中から私の意志とは違う声が響き渡りました。
悲しい叫びや憎しみの声、この世のあらゆる負の感情が一気に私の中で爆発します。それは私にとって理性を失いそうなくらい、私自身も狂ってしまいそうなくらいなものでした。ですが私は狂っている暇などないのです。

この闇に触れた以上、マルクも精神に限界が来ているはず、私は必死に自分の中の闇を押さえ付けながらマルクを抱き抱え、精霊にマルクを頼みました。

「精霊、、さん。マルクを、マルクをお母様の所まで連れていってあげて。。」

「ハミィ!ナンデボクタチニネガワナカッタノ!?」

闇の球体から出てきた私の姿は、金髪碧眼きんぱつへきがんから真っ黒な髪に真っ黒な瞳となっていて、着ていた白い服まで黒に染まっていました。私の体の血管も黒く浮かび上がり、もはや人間のそれではありません。

「ごめんなさい、、弟を助けるにはこれしか無かったの。」

「ハミィ、、」

「あなたたちも急いでここを離れた方がいいわ、もう私の正気も保てそうにないの、、。さっきから頭の中がガンガンして、、もう、、。だから、早く逃げなさい。」

私の気に圧されてか、精霊はマルクを連れて屋敷へと向かってくれました。

「良かったわ、、これでもう、、ボクノモノダ。」

体を得た闇は器の強大な魔力をより増幅させ、負の魔力を体に纏い、次々と生あるものを殺していきました。自分より強きものに出会うまで、それは止まることはないのです。




しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

転生令嬢はやんちゃする

ナギ
恋愛
【完結しました!】 猫を助けてぐしゃっといって。 そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。 木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。 でも私は私、まいぺぇす。 2017年5月18日 完結しました。 わぁいながい! お付き合いいただきありがとうございました! でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。 いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。 【感謝】 感想ありがとうございます! 楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。 完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。 与太話、中身なくて、楽しい。 最近息子ちゃんをいじってます。 息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。 が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。 ひとくぎりがつくまでは。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

処理中です...