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1‐②
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ロズが出てから約三時間。私は騎士団全員のサンドウィッチを作り続け、やっと仕上げの作業に取り掛かっていました。
「そう言えばロズにお昼全員分あるって言っていなかったわ。どうしましょう」
サンドウィッチを詰め込みながら何気に重要なことに気づいたけれど、皆さんは仕事上沢山食べられるしまぁいっかと思い直す事にした。
「さて、出来たわ。パドお願い」
「かしこまりました。ですがお嬢様、こんなにお作りになって大丈夫なのですか?」
「それは私も思ったのよ。良かったらメイドたちの分に取って行ってくれないかしら」
「宜しいのですか?」
「逆にこちらがお願いしたいくらいよ、普段沢山働いてもらっているもの。もちろんパドも食べて頂戴ね」
「ありがとうございます。お嬢様、そろそろお時間では」
パドと長話をしている間にとっくにお昼前になっていたらしく、私は慌てて父から頼まれた書類とサンドウィッチを入れたボックスを馬車に積み込み、王都へと向かいました。
暫く馬車に揺られ、王都の大門に到着した頃にはすっかり正午になっていて、私は馬車の従者に帰るよう促します。
「もう大丈夫ですわ、ありがとうございます。」
「い、いいえ。では時間になったらお迎えに上がります。」
「分かったわ。」
門を通り街に入ると人々がごった返し、あちこちに開店された出店のような風体の店屋がずらりと並んでいて目もくらむような活気に溢れている。これまで二何度も来ているのに毎回同じでない人々の流れに身を任せて歩いていると、ドンッとぶつかってしまった。
「すみません」
咄嗟に謝りその場を通り過ぎようとするのに、腕を掴まれたようで前に進めなかった。
「おいおい、人にぶつかっといてえらく素っ気ないじゃねぇか。ぉお?嬢ちゃんその服装...貴族か?いいねぇ、俺ら一回貴族の『ご令嬢』と遊んでみたかったんだわ~」
見るからに悪役な三人の男たちがニタニタと嫌な笑いを浮かべてこちらにじりじりとにじり寄って来ます。
「っ...」
このような絡まれ方は一度もされたことがなかったので、声が上ずってまともにでない。三人から逃げるように裏路地へ逃げてきたけれど、いつ見つかるかもわからない絶望的な状況。しかもこちらは大量のサンドウィッチも持っている。後ろをふりかえりながらどうにか人通りの多い道へ行こうと角を曲がると―――
「静かに」
唐突に口を塞がれ、叫ぶ暇もなく呼吸が止まってしまった。けれど何処か聞き覚えのある声がして顔を上にあげると思った通りの顔がそこにあり、ひと安心しました。
「ロズ、何でここに..」
「それはこっちのセリフ、取り敢えず本部に行こう。」
凄く怖い顔をしていたので私は成されるがままロズに腕を引かれて歩きます。
「ねぇロズ―ー「あれぇ?さっきの嬢ちゃんじゃねぇか。ヒヒッ探したんだぜぇ」」
ロズに事情を言おうとすると、先ほどの厄介な人たちが私を見付けて囲んできたのです。
「なんだ?このヒョロヒョロな男はよぉ、ヒヒッこんな優男は嬢ちゃんには似合わねぇんじゃねぇのかぁ?」
「雑魚が、今ならまだ見逃してやる。消えろ」
「ひっ」
これまで穏やかな顔しか知らなかったロズの凶悪な一面を見た気がして、私は小さく悲鳴を漏らしてしまいました。
「なんだ兄ちゃんよぉ!舐めてんじやねぇぞ!」
雄叫びをあげながら三人が短剣を振りかざしてロズと私めがけて迫り、そのうちの1本が私の体に突き刺さるーーー前にロズが手を振りあげると竜巻が起こり、三人を宙に拘束しました。
「なっ、魔法使いか!?」
ロズが本当にただの雑魚だと思っていたようで、心底驚いたような顔をして喚き散らします。
「黙れ、耳障りだ。お前達はこの後騎士団が身柄を拘束する、罪にも問われるだろうな。」
冷ややかな視線を向け、「行こう」と再び私の手をひいて歩き出すロズの顔はもう凶悪さの欠片もなく。
「マリアナ、大丈夫だったか?荷物は持とう。何処か具合が悪いのならーー」
「ロズ、私は大丈夫ですわ」
「そうか、良かった。しかし一体何故大門の前で待っていなかったんだ。少し待っていてくれたら俺が迎えに行っていたのに。」
「早くサンドウィッチを持っていきたかったの。新鮮なうちに食べてもらいたかったのだけれど、待っていた方が良かったかもしれないわ。」
「今日はサンドウィッチなのか。」
「えぇ、あとこの間開発していた保温性のあるボトルが完成したのでそれにスープも入れてきましたわ。」
「それは美味しそうだ。早く食べたいな」
「ついたらすぐ用意いたしますね。」
「ああ。」
それ以上は何も言わず、私達は静かに本部まで向かいました。
「そう言えばロズにお昼全員分あるって言っていなかったわ。どうしましょう」
サンドウィッチを詰め込みながら何気に重要なことに気づいたけれど、皆さんは仕事上沢山食べられるしまぁいっかと思い直す事にした。
「さて、出来たわ。パドお願い」
「かしこまりました。ですがお嬢様、こんなにお作りになって大丈夫なのですか?」
「それは私も思ったのよ。良かったらメイドたちの分に取って行ってくれないかしら」
「宜しいのですか?」
「逆にこちらがお願いしたいくらいよ、普段沢山働いてもらっているもの。もちろんパドも食べて頂戴ね」
「ありがとうございます。お嬢様、そろそろお時間では」
パドと長話をしている間にとっくにお昼前になっていたらしく、私は慌てて父から頼まれた書類とサンドウィッチを入れたボックスを馬車に積み込み、王都へと向かいました。
暫く馬車に揺られ、王都の大門に到着した頃にはすっかり正午になっていて、私は馬車の従者に帰るよう促します。
「もう大丈夫ですわ、ありがとうございます。」
「い、いいえ。では時間になったらお迎えに上がります。」
「分かったわ。」
門を通り街に入ると人々がごった返し、あちこちに開店された出店のような風体の店屋がずらりと並んでいて目もくらむような活気に溢れている。これまで二何度も来ているのに毎回同じでない人々の流れに身を任せて歩いていると、ドンッとぶつかってしまった。
「すみません」
咄嗟に謝りその場を通り過ぎようとするのに、腕を掴まれたようで前に進めなかった。
「おいおい、人にぶつかっといてえらく素っ気ないじゃねぇか。ぉお?嬢ちゃんその服装...貴族か?いいねぇ、俺ら一回貴族の『ご令嬢』と遊んでみたかったんだわ~」
見るからに悪役な三人の男たちがニタニタと嫌な笑いを浮かべてこちらにじりじりとにじり寄って来ます。
「っ...」
このような絡まれ方は一度もされたことがなかったので、声が上ずってまともにでない。三人から逃げるように裏路地へ逃げてきたけれど、いつ見つかるかもわからない絶望的な状況。しかもこちらは大量のサンドウィッチも持っている。後ろをふりかえりながらどうにか人通りの多い道へ行こうと角を曲がると―――
「静かに」
唐突に口を塞がれ、叫ぶ暇もなく呼吸が止まってしまった。けれど何処か聞き覚えのある声がして顔を上にあげると思った通りの顔がそこにあり、ひと安心しました。
「ロズ、何でここに..」
「それはこっちのセリフ、取り敢えず本部に行こう。」
凄く怖い顔をしていたので私は成されるがままロズに腕を引かれて歩きます。
「ねぇロズ―ー「あれぇ?さっきの嬢ちゃんじゃねぇか。ヒヒッ探したんだぜぇ」」
ロズに事情を言おうとすると、先ほどの厄介な人たちが私を見付けて囲んできたのです。
「なんだ?このヒョロヒョロな男はよぉ、ヒヒッこんな優男は嬢ちゃんには似合わねぇんじゃねぇのかぁ?」
「雑魚が、今ならまだ見逃してやる。消えろ」
「ひっ」
これまで穏やかな顔しか知らなかったロズの凶悪な一面を見た気がして、私は小さく悲鳴を漏らしてしまいました。
「なんだ兄ちゃんよぉ!舐めてんじやねぇぞ!」
雄叫びをあげながら三人が短剣を振りかざしてロズと私めがけて迫り、そのうちの1本が私の体に突き刺さるーーー前にロズが手を振りあげると竜巻が起こり、三人を宙に拘束しました。
「なっ、魔法使いか!?」
ロズが本当にただの雑魚だと思っていたようで、心底驚いたような顔をして喚き散らします。
「黙れ、耳障りだ。お前達はこの後騎士団が身柄を拘束する、罪にも問われるだろうな。」
冷ややかな視線を向け、「行こう」と再び私の手をひいて歩き出すロズの顔はもう凶悪さの欠片もなく。
「マリアナ、大丈夫だったか?荷物は持とう。何処か具合が悪いのならーー」
「ロズ、私は大丈夫ですわ」
「そうか、良かった。しかし一体何故大門の前で待っていなかったんだ。少し待っていてくれたら俺が迎えに行っていたのに。」
「早くサンドウィッチを持っていきたかったの。新鮮なうちに食べてもらいたかったのだけれど、待っていた方が良かったかもしれないわ。」
「今日はサンドウィッチなのか。」
「えぇ、あとこの間開発していた保温性のあるボトルが完成したのでそれにスープも入れてきましたわ。」
「それは美味しそうだ。早く食べたいな」
「ついたらすぐ用意いたしますね。」
「ああ。」
それ以上は何も言わず、私達は静かに本部まで向かいました。
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