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第一話 唐突に訪れる恐怖
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ーーどうぞ、主人公に成り代わったという気持ちで読み、ラストの選択肢をお選びくださいーー
この世には忘れられないことと忘れなくてはならないことの二種類が存在する。そう悲しげに、瞳に涙を浮かべながら教えてくれたのは、自分を育て上げてくれた両親ではなく、ただ一人俺に愛することの意味を教えてくれた大切な人だった。
俺は友利智。大学一年の中場を過ぎて、ようやく新しい生活にも慣れてきたところだ。中学、高校とそつなく過ごして、過度な問題も起こさず、触れず、平凡な青春を送ってきた。かといって、今のところ大学生活で目立つような行動を取っているかといえばそうでもない。それどころか同じ学部、学科の人でさえ、ほぼ会話をしていない。ただ一人を除いて。
だから友人と呼べる存在はゼロに等しいぐらいだし、知り合いさえもほとんどいない。いたとしても顔見知り程度だろう。
それでも、学業はそこそこついていけるしーーだから少しランクが低い大学に入学したのだけれど、困ることはあまりなかった。高校のような課外活動は無いし、部活やサークルに強制的に入らされることもない。まさに、有り余る自由を謳歌していたのである。
自由を謳歌していた、と言えば聞こえはいいかもしれないけれど、実は友人を作ることに遠慮気味だったのは言い逃れできまい。他人と接することが苦手な俺は、他人が何を考えているのか把握することなんて皆目見当つかないほどで、気味悪がれたこともあった。たぶん、それが人間嫌いになった大きな理由なんだろうけど、もうどうでもよかったんだと思う。
てなわけでダラダラ自分のことを語っていても辛辣なことばかりで飽きてくる頃合いなので、言いたいことを先に言おう。
こんな俺でも彼女が出来た。
明るいとは到底言い難い性格。そんな自分を彼氏と受け入れる女性が存在していたのだ。そして、大学初日に付き合ってしまった。まったく、入学式が終わって、そそくさと帰宅しようとした俺を正門で引き留め、挙句の果てには付き合おうかと軽々しく提案されたのはいささか、面をくらったという感じだったけれど。それでも、今こうして二人で歩いている時にその一部始終を思い出しても悪い過去ではないと感じるし。まぁ、自分としては黒歴史とは程遠いものだと思っているようだから、よしとするか。
「ねっねっ!!今日はどこに行きたい?私はね、んと、この前グルナビで調べた『アッティモ』って喫茶店に行ってみたいんだけど」
過去を回想している最中にお構いなしで割り込み。まったく、この人はいつも思考をストップにかかろうとする。
「俺が提案したところで行先が変わった示しがないし、結局、今日もその『アッティモ』ってところに行くんだろ?」
「ぶーーーー、トモったらいつも同じ『俺が何を言っても結果は変わらない』ってあきらめてさ、たまには自分で違う場所を提案したらどう?」
身を屈めて不満そうに見つめてきたのは、千葉彩花。髪はショートでもロングでもないミディアムで、整えられた前髪。ちょうど前髪と後ろ髪の境目のところで髪が編み込まれていて、毛並みはストレートではなく、先が少し丸まっているのがチャーミーなところだ。寝起き顔がいかにも可愛気ある想像をさせるほどの丸まり具合である。
かといって凛々しい目に整った鼻の位置で真面目さを時折見せる表情を出すことも多々。それに、中学の頃は副生徒会長、高校は生徒会長とまさに俺とは真逆な華々しい学生生活を送ってきたらしい。
しかし、性格や人生観が全く異なった人と惹かれ合うなんてことも言われることがあるし、そんなところが今こうして二人で歩いている理由にもなったのだろう。
「だったらあのーー前言ったところなんてどうだ?いろんな種類のカヌレが食べれるところがあったじゃないか」
「カヌレの気分じゃなーーい。今はパンケーキ食べたい頃合いなのーー」
「ほら俺の言った通りになった」
「ぶーー。だって私の中の心がそう叫んでるんだもーーん」
いつも通りの見慣れた光景、変わらぬ下校風景。俺と千葉は二人とも家が大学に近いため、同じ帰宅ルートを歩いて通る。今日も、4時限目が終わり、さっそうと帰るつもりだったが、千葉の召集がかかったため、自宅とは逆方面へと向かっていた。
「はいよ。なら行先は『アッティモ』でいいんだな?」
「イエーーーース、トモ!!」
「さらっとシャレを入れるの止めてくれない?」
「おお!!よく気付いたね、さすがトモだよ。やっぱり持つべきものはトモダチだね」
「もうどのトモが俺なのか、それとも友なのか、さっぱり分からない」
「いい突っ込みーー」と肘で俺の右腕をつついてくる。トモ、というのは千葉からの俺の呼び名である。
智という名前だが、さとし、という読み方の他に、とも、というのもあるらしい。千葉に呼ばれるまで一度たりとも本名以外の名前で呼ばれたことは無かったけれど、入学式で間違えて呼ばれたことを機会に、今なおその呼び方を続けている。いい加減、付き合っているのだから本名を読んでくれると嬉しいんだけど。
「そういえば、今日で大学も終わったね」
「その言い方だとまるで卒業したみたいなことに捉われかねないから。それにまだ終わってないし、ただ冬休みになるだけだからな」
「そんなムードのないこと言わないのーー」
そう、俺と千葉はまさにそんな関係だ。たとえ付き合っているのだとしても、体の付き合いだとかは全く無い。あるのは手を繋いだことくらいだ。その時も「ちょっとやってみようよ」なんて軽く提案してきたと思いきや「なんだ、あんまり何も感じないね」などと言われたのは本当にこの人は女子なのかと思い違いたほどだった。
だから、
「ムードが無いのはカナなんじゃねーのか?」
とおおっぴらに煽った。
「ああ!!またその名前使ったーー、はいもう怒ったもんねーー」
「わぁかったよ。使わなきゃいいんだろ。ったく俺の名前は間違えたままなのに、俺が呼ぶのはダメなんてことあるかよ」
べーーと片目を瞑りながら舌を出す千葉。相変わらず可愛さは天然ものだ。千葉、という氏を持っていながらも本人の故郷は神奈川県。だから俺はそれを分かったうえでからかっているのだが・・・
「それとこれとはべつーー。ダメったら駄目だかんねー」
どうしても許してくれないのが千葉の譲れない信条らしい。
タイル状だった地面が見えないほど枯れ葉が落ちている道路。電柱は無く、街灯がひたすらに続き、対を成すように葉を落とした裸木が点々としている。道幅はそこまで広くなく、車両一台が通れるほどの道である。
「その話なんだけど」
「その話ってなんだ?」
「だーーかーーら、さっきまでの流れで冬休み以外に思いつくの?」
「へいへい」と俺は頷くと、またもや不満そうにしながら。
「冬休み!!どっか行かないの?どうせ暇なんだから、一日ぐらい付き合ってくれてもいいでしょ・・・・クリスマスとかあるんだし・・」
「あ・・そういやそんな時期だったな忘れてたわ」
「うそでしょ!?付き合ってるのに24日のことが眼中になかったって、聞き捨て慣らないんですけど!!」
「あ、いやだって、普段こうして歩いてるし、あんまり付き合ってる感覚が無いもんでさ」
「なにそれーーひどい」と言いながら大股で早々と歩く千葉。流石に忘れてはいなかったけれど、こんな変わらぬ日常を過ごしていたら別に24日だとしても何事もなく過ぎるんじゃないかと思っても仕方なくないか。
でもまあ、彼氏としてそれは雑というか、塩対応すぎるというものだから、一つ男として提案することにしたのだった。
「なら・・・・イブにイルミネーションでも見に行くか・・?」
よくあるデート場所だけど、だからこそ定番は外れる心配もないし。
「なんだか・・・・ド定番だけど。それもトモらしいったらトモらしいからいいよ」
「嬉しいのか、そうじゃないのか曖昧な返事だな、そりゃあ!!」
でも・・自分から誘ったことはあまりなかったことだし、それを断られなかったことだけでも普通に嬉しい。なんだか、初心に戻ったような、付き合いたての頃に戻った感じで、当日何を着ていくか、もう考えている。
「ならさ!!」
瞬間。
突如前方から突入してきた大型トラックが視界に入った。トラックの挙動は不自然なぐらいにふらついていて、そもそも車両一台が通れるほどの道に入ってきていることが有り得ない光景だった。
猛スピードでこちらに向かってくるが、進行方向が読めない。周りは避けるほどの空間は無いし、壁で囲まれている。
右か左か。
どちらに突っ込んでくるのか。
しかし、そんな予想はまったくの無駄だった。
大股で歩いていた彼女、千葉彩花は俺から5m先にいて、
彼女は猛然と突進してくる巨体のあまりの恐ろしさに立ち尽くし、
そして。
俺の目の前を横切るように突っ込んだトラックは、
無惨にも彼女の全身を潰し、跡形もなく消え去ったのだった。
この世には忘れられないことと忘れなくてはならないことの二種類が存在する。そう悲しげに、瞳に涙を浮かべながら教えてくれたのは、自分を育て上げてくれた両親ではなく、ただ一人俺に愛することの意味を教えてくれた大切な人だった。
俺は友利智。大学一年の中場を過ぎて、ようやく新しい生活にも慣れてきたところだ。中学、高校とそつなく過ごして、過度な問題も起こさず、触れず、平凡な青春を送ってきた。かといって、今のところ大学生活で目立つような行動を取っているかといえばそうでもない。それどころか同じ学部、学科の人でさえ、ほぼ会話をしていない。ただ一人を除いて。
だから友人と呼べる存在はゼロに等しいぐらいだし、知り合いさえもほとんどいない。いたとしても顔見知り程度だろう。
それでも、学業はそこそこついていけるしーーだから少しランクが低い大学に入学したのだけれど、困ることはあまりなかった。高校のような課外活動は無いし、部活やサークルに強制的に入らされることもない。まさに、有り余る自由を謳歌していたのである。
自由を謳歌していた、と言えば聞こえはいいかもしれないけれど、実は友人を作ることに遠慮気味だったのは言い逃れできまい。他人と接することが苦手な俺は、他人が何を考えているのか把握することなんて皆目見当つかないほどで、気味悪がれたこともあった。たぶん、それが人間嫌いになった大きな理由なんだろうけど、もうどうでもよかったんだと思う。
てなわけでダラダラ自分のことを語っていても辛辣なことばかりで飽きてくる頃合いなので、言いたいことを先に言おう。
こんな俺でも彼女が出来た。
明るいとは到底言い難い性格。そんな自分を彼氏と受け入れる女性が存在していたのだ。そして、大学初日に付き合ってしまった。まったく、入学式が終わって、そそくさと帰宅しようとした俺を正門で引き留め、挙句の果てには付き合おうかと軽々しく提案されたのはいささか、面をくらったという感じだったけれど。それでも、今こうして二人で歩いている時にその一部始終を思い出しても悪い過去ではないと感じるし。まぁ、自分としては黒歴史とは程遠いものだと思っているようだから、よしとするか。
「ねっねっ!!今日はどこに行きたい?私はね、んと、この前グルナビで調べた『アッティモ』って喫茶店に行ってみたいんだけど」
過去を回想している最中にお構いなしで割り込み。まったく、この人はいつも思考をストップにかかろうとする。
「俺が提案したところで行先が変わった示しがないし、結局、今日もその『アッティモ』ってところに行くんだろ?」
「ぶーーーー、トモったらいつも同じ『俺が何を言っても結果は変わらない』ってあきらめてさ、たまには自分で違う場所を提案したらどう?」
身を屈めて不満そうに見つめてきたのは、千葉彩花。髪はショートでもロングでもないミディアムで、整えられた前髪。ちょうど前髪と後ろ髪の境目のところで髪が編み込まれていて、毛並みはストレートではなく、先が少し丸まっているのがチャーミーなところだ。寝起き顔がいかにも可愛気ある想像をさせるほどの丸まり具合である。
かといって凛々しい目に整った鼻の位置で真面目さを時折見せる表情を出すことも多々。それに、中学の頃は副生徒会長、高校は生徒会長とまさに俺とは真逆な華々しい学生生活を送ってきたらしい。
しかし、性格や人生観が全く異なった人と惹かれ合うなんてことも言われることがあるし、そんなところが今こうして二人で歩いている理由にもなったのだろう。
「だったらあのーー前言ったところなんてどうだ?いろんな種類のカヌレが食べれるところがあったじゃないか」
「カヌレの気分じゃなーーい。今はパンケーキ食べたい頃合いなのーー」
「ほら俺の言った通りになった」
「ぶーー。だって私の中の心がそう叫んでるんだもーーん」
いつも通りの見慣れた光景、変わらぬ下校風景。俺と千葉は二人とも家が大学に近いため、同じ帰宅ルートを歩いて通る。今日も、4時限目が終わり、さっそうと帰るつもりだったが、千葉の召集がかかったため、自宅とは逆方面へと向かっていた。
「はいよ。なら行先は『アッティモ』でいいんだな?」
「イエーーーース、トモ!!」
「さらっとシャレを入れるの止めてくれない?」
「おお!!よく気付いたね、さすがトモだよ。やっぱり持つべきものはトモダチだね」
「もうどのトモが俺なのか、それとも友なのか、さっぱり分からない」
「いい突っ込みーー」と肘で俺の右腕をつついてくる。トモ、というのは千葉からの俺の呼び名である。
智という名前だが、さとし、という読み方の他に、とも、というのもあるらしい。千葉に呼ばれるまで一度たりとも本名以外の名前で呼ばれたことは無かったけれど、入学式で間違えて呼ばれたことを機会に、今なおその呼び方を続けている。いい加減、付き合っているのだから本名を読んでくれると嬉しいんだけど。
「そういえば、今日で大学も終わったね」
「その言い方だとまるで卒業したみたいなことに捉われかねないから。それにまだ終わってないし、ただ冬休みになるだけだからな」
「そんなムードのないこと言わないのーー」
そう、俺と千葉はまさにそんな関係だ。たとえ付き合っているのだとしても、体の付き合いだとかは全く無い。あるのは手を繋いだことくらいだ。その時も「ちょっとやってみようよ」なんて軽く提案してきたと思いきや「なんだ、あんまり何も感じないね」などと言われたのは本当にこの人は女子なのかと思い違いたほどだった。
だから、
「ムードが無いのはカナなんじゃねーのか?」
とおおっぴらに煽った。
「ああ!!またその名前使ったーー、はいもう怒ったもんねーー」
「わぁかったよ。使わなきゃいいんだろ。ったく俺の名前は間違えたままなのに、俺が呼ぶのはダメなんてことあるかよ」
べーーと片目を瞑りながら舌を出す千葉。相変わらず可愛さは天然ものだ。千葉、という氏を持っていながらも本人の故郷は神奈川県。だから俺はそれを分かったうえでからかっているのだが・・・
「それとこれとはべつーー。ダメったら駄目だかんねー」
どうしても許してくれないのが千葉の譲れない信条らしい。
タイル状だった地面が見えないほど枯れ葉が落ちている道路。電柱は無く、街灯がひたすらに続き、対を成すように葉を落とした裸木が点々としている。道幅はそこまで広くなく、車両一台が通れるほどの道である。
「その話なんだけど」
「その話ってなんだ?」
「だーーかーーら、さっきまでの流れで冬休み以外に思いつくの?」
「へいへい」と俺は頷くと、またもや不満そうにしながら。
「冬休み!!どっか行かないの?どうせ暇なんだから、一日ぐらい付き合ってくれてもいいでしょ・・・・クリスマスとかあるんだし・・」
「あ・・そういやそんな時期だったな忘れてたわ」
「うそでしょ!?付き合ってるのに24日のことが眼中になかったって、聞き捨て慣らないんですけど!!」
「あ、いやだって、普段こうして歩いてるし、あんまり付き合ってる感覚が無いもんでさ」
「なにそれーーひどい」と言いながら大股で早々と歩く千葉。流石に忘れてはいなかったけれど、こんな変わらぬ日常を過ごしていたら別に24日だとしても何事もなく過ぎるんじゃないかと思っても仕方なくないか。
でもまあ、彼氏としてそれは雑というか、塩対応すぎるというものだから、一つ男として提案することにしたのだった。
「なら・・・・イブにイルミネーションでも見に行くか・・?」
よくあるデート場所だけど、だからこそ定番は外れる心配もないし。
「なんだか・・・・ド定番だけど。それもトモらしいったらトモらしいからいいよ」
「嬉しいのか、そうじゃないのか曖昧な返事だな、そりゃあ!!」
でも・・自分から誘ったことはあまりなかったことだし、それを断られなかったことだけでも普通に嬉しい。なんだか、初心に戻ったような、付き合いたての頃に戻った感じで、当日何を着ていくか、もう考えている。
「ならさ!!」
瞬間。
突如前方から突入してきた大型トラックが視界に入った。トラックの挙動は不自然なぐらいにふらついていて、そもそも車両一台が通れるほどの道に入ってきていることが有り得ない光景だった。
猛スピードでこちらに向かってくるが、進行方向が読めない。周りは避けるほどの空間は無いし、壁で囲まれている。
右か左か。
どちらに突っ込んでくるのか。
しかし、そんな予想はまったくの無駄だった。
大股で歩いていた彼女、千葉彩花は俺から5m先にいて、
彼女は猛然と突進してくる巨体のあまりの恐ろしさに立ち尽くし、
そして。
俺の目の前を横切るように突っ込んだトラックは、
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