ドロイドベル

ふりかけ大王

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第1章~レグヌム王国~

歓迎

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「では、モーリアを第七班に配属する。」

「承知いたしました。」

――闘技会から数日後。
スドルフは、エバンが指揮する第七部隊の騎士たちの前で彼女の配属を発表する。それを受けてモーリアは深々とお辞儀をした。

「分からないことがあったら、このエバン分隊長に聞きなさい。」

スドルフは横にいるエバンに視線を送る。

「よろしく願いします。エバン分隊長。」

「あぁ、こちらこそよろしく。」

パチパチと周りから拍手が起こる。

「誰かモーリアを案内してやれ。」

エバンは部下にモーリアを訓練場へ連れていくよう指示する。それを聞いた騎士たちが我先にとモーリアに駆け寄る。女性の騎士というだけでも珍しいが、闘技会の優勝者として騎士になる女性は初めてだ。それに加え小柄で顔つきも可愛らしく、短く整えた黒い髪が生えるような綺麗な色白の肌をしているから男性人気は高いだろう。

「さて。では私も行きますね。」

モーリアの後を追いかけるようにエバンも剣を持ちその場を立ち去ろうとした瞬間、スドルフがエバンに声をかける。

「エバン、彼女を頼んだぞ。」

「――はい。」

スドルフの声には表面上だけではない意味が込められていた。エバンもそれを察して控えめの声で答えた。

=====================================

訓練場に着くと、エバンはさっそくモーリアを部下たちに交えて模擬戦を行わせた。それなりに鍛えたと自負していた自分の部下だったが、モーリアの前では未熟さが出てしまった。面白いように負かされてしまう。本人たちはあまり把握できていないようだが、彼らが思っている以上の確固たる力量の差がそこにはあった。

「あー、やっぱりつえーな。」

「でも、女性だろ?力で押せば勝てるんじゃないのか?」

「ダメダメ。さっきやったけど、大振りになったスキを突かれて負けよ。」

休憩中に何人かの騎士が座ってモーリアとの模擬戦について話していた。

「モーリアが強くても戦場で敵として対峙したらそんなの言い訳にならないぞ。」

エバンは後ろからスッと彼らに釘を刺す。それに驚き同時に騎士たちは苦い顔をする。

「す、すいません、分隊長。しかし・・・本当にモーリアは強いですよ。」

言っている内容は正しいが、というような渋い顔つきで騎士は答えた。
――これではモーリアに示しがつかないな。
エバンは少し離れた位置で水を飲んでいたモーリアの元に向かった。

「やぁ、モーリア。訓練はどうだ?」

「はい、皆さんとても強くて非常にためになります。」

「そうか。それは良かった。」

モーリアは再び水筒の水を飲む。彼女は気をまわしてそう言っているが、汗をかかず息が上がっていないことからまだ余裕があるはずだ。

「なぁ、モーリア。ここでは恒例として新入りは俺と模擬戦することになっていてな。一戦どうかな?」

エバンからの提案にモーリアは手を止めてエバンを見る。

「今から分隊長とですか?」

「ああ、そうだ。」

「・・・分かりました。」

モーリアはそう言って腰かけていたベンチから立ち剣を取った。

=====================================

周りには第七騎士団だけではなく、他の部隊の騎士も集まっていた。それだけ皆この一戦に興味があるのだ。中にはこの試合を賭け事の格好の的にしている奴まで現れていた。

「どっちが勝つかな?」

「流石にエバンさんだろう。晩飯を賭けてもいいぞ。」

「なら俺はモーリアさんに賭けようかな。彼女ならたとえ負けても構わないさ。」

エバンやモーリアにもその声はもちろん届いていた。

「さぁ、そろそろ始めようか。」

「はい、お願いいたします。」

野次馬たちもこれ以上は待ちきれないだろう。2人はお互いに剣を構える。模擬戦といっても使うのは木刀などではなく真剣だ。それがより緊迫した空気を生み出している。

「では始めてください!」

審判役の騎士の合図で試合の火ぶたは切られた。実力者の戦いということもあり、互いにじりじりと様子を伺う。彼らはテリトリーがあり、その中にうかつに踏み入れると死――ここでは負けに直結することをよく知っているからだ。

(成程・・・こうして剣を交えると強さが分かるな。)

エバンは想定以上のモーリアの実力に驚いていた。だが、それはモーリアも同じようだった。

(噂には聞いていたけど・・・ここまでとはね。)

先程の訓練では汗一つ流さなかったモーリアの頬に一筋の汗が伝う。ほんの一瞬、モーリアがそれに気を取られた隙をエバンは見逃さなかった。低い姿勢から鋭く踏み込み、モーリアに迫る。

「―ーっ!」

風を引き裂くような鋭い攻撃にモーリアはとっさに反応するが、あの一瞬がエバンへの対応にわずかな遅れを作ってしまった。嵐のようなエバンの斬撃に対し、防戦一方になる。

(・・・このままじゃ押し切られる!)

モーリアは何とかエバンとの距離を開けるように動くが、あまりにも正確で重く速いエバンの攻撃に詰め寄られていた。

(――いける!)

モーリアの剣を上に弾いた刹那、エバンは低い姿勢から急所の脇腹に剣筋を走らせる。だが、それはモーリアの罠だった。彼女は後ろに仰け反った剣を小さく折りたたみエバンの攻撃を限定し見事に防いだ後、その力をうまく利用してエバンの頭上から細身の剣で襲い掛かる。

一本取ったかと思われたが、エバンは体をほんのわずかに横にずらすことでこれを回避する。それを見てモーリアはとっさに後ろに飛び退き距離を取った。

「・・・流石だ。」

「いえ、分隊長には敵いません。」

エバンが周りを見ると皆、口を開けて間の抜けた顔をしており、賭け事で盛り上がっていた彼らの姿はもはやそこにはなかった。それを見てエバンは剣を収める。

「よし、ここまでにしよう。」

「えっ?・・・はい。」

ふーっと長い息をついてモーリアも剣を収めた。

「す、すごい・・・。エバン分隊長の攻撃を凌いだ人を初めて見た。」

「俺もだよ。彼女かわいい顔してやっぱりとんでもねぇぞ。」

観戦していた人からざわめきが上がる。それを聞いたエバンは早く持ち場に戻るようにあしらう。

「そうだ、モーリア。食事は皆でとる。食堂の場所は分かるな?」

「大丈夫です。」

「なら俺は先に着替えてくる。またな。」

そう言ってエバンは宿舎へと戻っていった。モーリアは手の甲で頬の汗をぬぐい、その後ろ姿をずっと眺めていた。
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