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第3章~エリカンテ王国~
アドラム
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「止まれ!止まらないと直ぐにでもその体を射貫くぞ!」
モーリアはその制止に耳を貸すことはなかった。弓矢部隊を指揮する上官がそれを見てチッと舌打ちをする。レギナはモーリアの行動に少々肝を冷やしたが、ハッとアドラムの言葉を思い出す。
『民衆のために君が来たと言いたくてね。』
――そうか、アドラムは私がこちらに嫁いできたという言い分が欲しいのだ。そのためには私を傷つけるわけにはいかない。それをモーリアさんは見透かしていたのか。
絶え間なく動き続けるモーリアの背中がここまで安心感をくれるとは。レギナはモーリアの足手まといにならないように戸惑うことなく精一杯足を走らせる。
敵は鬼神のごとく切り倒していくモーリアに段々と畏怖にも似た感情を抱きつつあった。威勢の良かった彼らの剣もその鳴りを潜めていく。
「このっ、なめやがってっ!!」
グイっとレギナは地面に引きずり込まれる。モーリアの手にもたれて膝を地面に叩きつける。
「いっ――。」
足元を見るとモーリアに切られた兵士がレギナの足首をつかんでいた。焦るレギナの表情とは対照的にしてやったりという表情を兵士は浮かべた。
「――放してください!!」
レギナは空いている片方の足で思いっきり地面に突っ伏す兵士の顔面を蹴りつける。硬いヒールが鼻を直撃する。
「うぐっ!!」
兵士はあまりの痛みに悶絶し手で顔を覆う。
「・・・お見事。」
モーリアはそれに驚きつつも、口元を緩める。レギナの腕を引っ張りあげると広間を共に抜けていった。
=====================================
「もう少しで外です!!」
レギナは息を切らしながら、足がもたれるのを懸命に耐えながらモーリアに食らいついていった。モーリアもそれ気づいてはいたが、かと言って足を止めるわけにはいかなかった。
広場を抜けると眼前には兵士に姿はほとんどいなかった。きっと近くにいた兵士はあの広間に集まっていたのだろう。
後ろから追いかけてくる兵士たちは鎧のせいで機動力は落ちている。モーリアの不安材料はレギナ様の体力が心配だが、彼女を見る限り何とか振り切れるだろう。
「っはぁ、っ、はぁ――。」
城の外にさえ出れば後は彼らに任せればいい。自分一人なら何とでもなる。最後の階段を下り、城の正門に続く扉の前をその眼にとらえる。
「・・・きゃ!――モーリアさん!?」
急に足を止め、勢いあまりレギナはモーリアの背中にぶつかる。強く握ぎられていた手が解かれる。何事かと思い、モーリアの見つめる先を見るとそこにはアドラムが立っていた。
「モーリア、まだ間に合うよ?」
「・・・。」
アドラムは微笑みを崩さずモーリアに呼びかける。前にはアドラム以外敵は見当たらない。だが、言葉にできない独特な嫌な雰囲気が漂っていた。
「モーリア、君は優秀だ。それに今までの仲もある。どうかな?」
「――お言葉ですが、陛下・・・。」
モーリアは最後までその答えを言わないで剣を構える。それを見てアドラムはモーリアの言わんとすることを知る。
「そう、残念だよ。」
カツンカツンと床を打つブーツの底の小気味よい音を立てながらアドラムは近づいてくる。そしてスッと腰に差す剣を抜いた。
(・・・。)
モーリアは一瞬、目を瞑る。レギナにはそれが何だか悲しく見えた。それでも次にモーリアが目を開くときには闘志の光が彼女の目に灯っていた。
「レギナ様、ここは私が何とかします!隙を見て向こうの扉から外に!」
モーリアはレギナの返事を聞く暇もなく、アドラムに向かって走り出した。黒い彼女の髪がマントが後ろになびく。
キンッーー!!
剣と剣がぶつかり合う甲高い金属音が鳴り響く。モーリアの鋭い一撃はアドラムの無駄のない洗練された動きで受け止められる。反撃を許さぬよう、またアドラムを扉から遠ざけるようにモーリアは持てる力をすべてぶつける。
「君の雪のように白いその肌を傷つけるのは僕も気が進まないんだけどね。」
モーリアの全力を受け止めてもなお、アドラムには余裕があるように見えた。それを埋めるようにモーリアはさらに斬撃を早める。
「今です!!」
アドラムがほんの少し体重を後ろにずらした刹那、モーリアは叫んだ。同時にレギナが戦うモーリアたちの横を走り抜ける。
「・・・僕は甘くないよ。」
モーリアの攻撃に押されていたはずのアドラムだったが、両手で持ってい剣を片手に持ち替え、空いた片手でモーリアの腹部に重い一撃を浴びせる。
「――っは。」
モーリアはその鈍い痛みに呼吸ができない感覚に襲われ、衝撃で後ろに体をくの時に吹き飛ばされる。同時にアドラムがモーリアを吹き飛ばしたその手で横をすり抜けるレギナの腕を掴もうと伸ばした。
ヒュンー―!!
だが、アドラムの腕はレギナを捉えることはできなかった。飛んできたナイフがレギナとアドラムの間を通り壁に当たる。カランと刃の欠けたナイフがアドラムの足元に落ちる。
「モーリア、やっぱり君は優秀だね。」
アドラムがむいた先には尻餅をついていたモーリアがいた。
モーリアはその制止に耳を貸すことはなかった。弓矢部隊を指揮する上官がそれを見てチッと舌打ちをする。レギナはモーリアの行動に少々肝を冷やしたが、ハッとアドラムの言葉を思い出す。
『民衆のために君が来たと言いたくてね。』
――そうか、アドラムは私がこちらに嫁いできたという言い分が欲しいのだ。そのためには私を傷つけるわけにはいかない。それをモーリアさんは見透かしていたのか。
絶え間なく動き続けるモーリアの背中がここまで安心感をくれるとは。レギナはモーリアの足手まといにならないように戸惑うことなく精一杯足を走らせる。
敵は鬼神のごとく切り倒していくモーリアに段々と畏怖にも似た感情を抱きつつあった。威勢の良かった彼らの剣もその鳴りを潜めていく。
「このっ、なめやがってっ!!」
グイっとレギナは地面に引きずり込まれる。モーリアの手にもたれて膝を地面に叩きつける。
「いっ――。」
足元を見るとモーリアに切られた兵士がレギナの足首をつかんでいた。焦るレギナの表情とは対照的にしてやったりという表情を兵士は浮かべた。
「――放してください!!」
レギナは空いている片方の足で思いっきり地面に突っ伏す兵士の顔面を蹴りつける。硬いヒールが鼻を直撃する。
「うぐっ!!」
兵士はあまりの痛みに悶絶し手で顔を覆う。
「・・・お見事。」
モーリアはそれに驚きつつも、口元を緩める。レギナの腕を引っ張りあげると広間を共に抜けていった。
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「もう少しで外です!!」
レギナは息を切らしながら、足がもたれるのを懸命に耐えながらモーリアに食らいついていった。モーリアもそれ気づいてはいたが、かと言って足を止めるわけにはいかなかった。
広場を抜けると眼前には兵士に姿はほとんどいなかった。きっと近くにいた兵士はあの広間に集まっていたのだろう。
後ろから追いかけてくる兵士たちは鎧のせいで機動力は落ちている。モーリアの不安材料はレギナ様の体力が心配だが、彼女を見る限り何とか振り切れるだろう。
「っはぁ、っ、はぁ――。」
城の外にさえ出れば後は彼らに任せればいい。自分一人なら何とでもなる。最後の階段を下り、城の正門に続く扉の前をその眼にとらえる。
「・・・きゃ!――モーリアさん!?」
急に足を止め、勢いあまりレギナはモーリアの背中にぶつかる。強く握ぎられていた手が解かれる。何事かと思い、モーリアの見つめる先を見るとそこにはアドラムが立っていた。
「モーリア、まだ間に合うよ?」
「・・・。」
アドラムは微笑みを崩さずモーリアに呼びかける。前にはアドラム以外敵は見当たらない。だが、言葉にできない独特な嫌な雰囲気が漂っていた。
「モーリア、君は優秀だ。それに今までの仲もある。どうかな?」
「――お言葉ですが、陛下・・・。」
モーリアは最後までその答えを言わないで剣を構える。それを見てアドラムはモーリアの言わんとすることを知る。
「そう、残念だよ。」
カツンカツンと床を打つブーツの底の小気味よい音を立てながらアドラムは近づいてくる。そしてスッと腰に差す剣を抜いた。
(・・・。)
モーリアは一瞬、目を瞑る。レギナにはそれが何だか悲しく見えた。それでも次にモーリアが目を開くときには闘志の光が彼女の目に灯っていた。
「レギナ様、ここは私が何とかします!隙を見て向こうの扉から外に!」
モーリアはレギナの返事を聞く暇もなく、アドラムに向かって走り出した。黒い彼女の髪がマントが後ろになびく。
キンッーー!!
剣と剣がぶつかり合う甲高い金属音が鳴り響く。モーリアの鋭い一撃はアドラムの無駄のない洗練された動きで受け止められる。反撃を許さぬよう、またアドラムを扉から遠ざけるようにモーリアは持てる力をすべてぶつける。
「君の雪のように白いその肌を傷つけるのは僕も気が進まないんだけどね。」
モーリアの全力を受け止めてもなお、アドラムには余裕があるように見えた。それを埋めるようにモーリアはさらに斬撃を早める。
「今です!!」
アドラムがほんの少し体重を後ろにずらした刹那、モーリアは叫んだ。同時にレギナが戦うモーリアたちの横を走り抜ける。
「・・・僕は甘くないよ。」
モーリアの攻撃に押されていたはずのアドラムだったが、両手で持ってい剣を片手に持ち替え、空いた片手でモーリアの腹部に重い一撃を浴びせる。
「――っは。」
モーリアはその鈍い痛みに呼吸ができない感覚に襲われ、衝撃で後ろに体をくの時に吹き飛ばされる。同時にアドラムがモーリアを吹き飛ばしたその手で横をすり抜けるレギナの腕を掴もうと伸ばした。
ヒュンー―!!
だが、アドラムの腕はレギナを捉えることはできなかった。飛んできたナイフがレギナとアドラムの間を通り壁に当たる。カランと刃の欠けたナイフがアドラムの足元に落ちる。
「モーリア、やっぱり君は優秀だね。」
アドラムがむいた先には尻餅をついていたモーリアがいた。
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