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第4章~青と白~
決別
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「忘れもしない、19歳の冬の夜だった。寒かったが雪が降っていて、とてもきれいな日だった。」
「アドラムが襲撃されてな。」
=====================================
『敵襲だ、敵襲だぁーー!!』
あたりは暗く、家の中から光がわずかに漏れるという夜に男の声が鳴り響いた。城の中にいたモーリアは剣を抜き、一目散に主のもとへ向かった。
途中、城の外から火薬の匂い漂い、爆発音がこだましていた。ただ事ではない事態にモーリアは焦っていた。幸いにも城の中には敵が侵入している様子はなく、交戦せずに済んだ。
「アドラム様!!」
「モーリア!これは一体どういうことだ!?」
部屋の中央で立ちすくんでいた主のもとにモーリアは向かう。
「分かりませんが、敵襲です。ここは――。」
モーリアがすべてを言い切る前に、すぐ近くで大きな爆発音がした。耳の鼓膜を破るかのような轟音と共に、扉がバキッという音を立てて割れて吹き飛んだ。
「――アドラム様、私の後ろに!!」
雪崩のように部屋に飛び込む敵を前にモーリアは叫ぶ。
それから敵はアドラムたちに迫ってきた。何処の者かもわからない、何のために自分らを襲っているのかもわからなかったが、モーリアにはアドラムをやつらから守ることだけを考え、剣を振るった。
「――はあっ、っはぁ――。」
無我夢中で戦った彼女の前には、おびただしい血だまりが染みわたり、返り血で彼女の髪や肌が汚れていた。肩で息をするたびに血で硬くなった髪が揺れる。
「モーリア、大丈夫か!?」
剣を杖代わりにして立っているのがやっとのモーリアにアドラムは声をかける。
「私は大丈夫です、それよりもここを出ましょう。」
モーリアはアドラムの手を引き、血だまりに片足をつけた、その瞬間――。
ドォオオーン!!
背後で今までとは比べ物にならない爆音が響き、砂埃が舞う。それに思わずモーリアは顔を腕で覆う。
「あ、アドラム様・・・!!」
アドラム手を握っていた腕が強く下に向かって引っ張られる。砂埃の外からは剣を天にかざす敵の姿が見えた。下に倒れるアドラムを見て、彼を掴んでいた手を放す。
(間に合って・・・!!)
「・・・っゴホッ、ッー―。モーリア・・・!?」
アドラムは背に強い痛みを感じ顔を上げた。前にいるはずのモーリアはおらず、後ろを確認する。
「――!!」
彼の目に移ったのは、敵の攻撃を背に受けたモーリアの姿だった。
痛みでモーリアの顔がゆがむ。呆然とするアドラムだったが、我に返りモーリアの名を叫ぶ。
「も、モーリア!!」
彼女の体を引き寄せた手にはべっとりと真っ赤な血がついていた。敵のではない、まぎれもない彼女の。
「――ア、ドラム、にげ、」
苦痛に顔をゆがめながらモーリアは彼の無事だけを思い、気を失った。
=====================================
「それからアドラムは変わった。今まで力を入れてなかった軍事に力を入れるようになった。まぁ、当たり前といえば当たり前だがな。」
「何故敵はエリカンテを襲ったんだ?」
エバンは眉間にしわを寄せながらフラティスに問うた。
「分からない。結局アドラムのは手を出さず何も要求もなく去っていった。そして襲撃はその一回だけだった。」
首を小さく横に振ってフラティスは答えた。
「ここからが大事だ。アドラムは異常なほどに軍事力を求めた。その結果、クラードとかいう魔導士に魅入られてな。」
「魔導士?」
ハーパーが聞いたこともないという感じで声に出した。それにステッドが応える。
「私も詳しくはないが、死体を操るとか、呪い殺すとか怪しい魔術を研究しているものだ。ただの気味の悪いやつらで、勿論そんなことはできないんだがな。」
「そう、一般的にはそうだ。しかし、クラードはどうやら違うようでな。」
「どういうことだ?」
エバンが腕を組んで言う。
「どうやら奴は多少の制限はあるものの、本当に死体を動かせるらしい。お前たちも化け物と交戦しただろう?」
エバンたちには脳裏に同じ光景がよぎった。フラティスの言葉だけでは信じられないが、自分たちの体験がその大きな証拠となり納得せざるを得なかった。
「話を戻そう。モーリアは2か月くらいして動けるようになった時には彼は隣国と戦争を始めると言い始めたんだ。」
「無論、俺もモーリアも大臣たちでさえ止めた、だが、アイツは聞く耳を持たないどころか俺たち以外の大臣たちを皆処刑した。」
あまりの衝撃にレギナは口元を手で覆う。
「ここ、青の王国は元々は戦争を仕掛けるはずの隣国さ。昔からの付き合いで俺やモーリア一部のエリカンテ国民を受け入れてくれた。しかも、王族がいないという理由で俺に政治を任せてくれている。」
「・・・なるほどな。」
エバンは椅子に深くもたれた。
「アドラムが襲撃されてな。」
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『敵襲だ、敵襲だぁーー!!』
あたりは暗く、家の中から光がわずかに漏れるという夜に男の声が鳴り響いた。城の中にいたモーリアは剣を抜き、一目散に主のもとへ向かった。
途中、城の外から火薬の匂い漂い、爆発音がこだましていた。ただ事ではない事態にモーリアは焦っていた。幸いにも城の中には敵が侵入している様子はなく、交戦せずに済んだ。
「アドラム様!!」
「モーリア!これは一体どういうことだ!?」
部屋の中央で立ちすくんでいた主のもとにモーリアは向かう。
「分かりませんが、敵襲です。ここは――。」
モーリアがすべてを言い切る前に、すぐ近くで大きな爆発音がした。耳の鼓膜を破るかのような轟音と共に、扉がバキッという音を立てて割れて吹き飛んだ。
「――アドラム様、私の後ろに!!」
雪崩のように部屋に飛び込む敵を前にモーリアは叫ぶ。
それから敵はアドラムたちに迫ってきた。何処の者かもわからない、何のために自分らを襲っているのかもわからなかったが、モーリアにはアドラムをやつらから守ることだけを考え、剣を振るった。
「――はあっ、っはぁ――。」
無我夢中で戦った彼女の前には、おびただしい血だまりが染みわたり、返り血で彼女の髪や肌が汚れていた。肩で息をするたびに血で硬くなった髪が揺れる。
「モーリア、大丈夫か!?」
剣を杖代わりにして立っているのがやっとのモーリアにアドラムは声をかける。
「私は大丈夫です、それよりもここを出ましょう。」
モーリアはアドラムの手を引き、血だまりに片足をつけた、その瞬間――。
ドォオオーン!!
背後で今までとは比べ物にならない爆音が響き、砂埃が舞う。それに思わずモーリアは顔を腕で覆う。
「あ、アドラム様・・・!!」
アドラム手を握っていた腕が強く下に向かって引っ張られる。砂埃の外からは剣を天にかざす敵の姿が見えた。下に倒れるアドラムを見て、彼を掴んでいた手を放す。
(間に合って・・・!!)
「・・・っゴホッ、ッー―。モーリア・・・!?」
アドラムは背に強い痛みを感じ顔を上げた。前にいるはずのモーリアはおらず、後ろを確認する。
「――!!」
彼の目に移ったのは、敵の攻撃を背に受けたモーリアの姿だった。
痛みでモーリアの顔がゆがむ。呆然とするアドラムだったが、我に返りモーリアの名を叫ぶ。
「も、モーリア!!」
彼女の体を引き寄せた手にはべっとりと真っ赤な血がついていた。敵のではない、まぎれもない彼女の。
「――ア、ドラム、にげ、」
苦痛に顔をゆがめながらモーリアは彼の無事だけを思い、気を失った。
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「それからアドラムは変わった。今まで力を入れてなかった軍事に力を入れるようになった。まぁ、当たり前といえば当たり前だがな。」
「何故敵はエリカンテを襲ったんだ?」
エバンは眉間にしわを寄せながらフラティスに問うた。
「分からない。結局アドラムのは手を出さず何も要求もなく去っていった。そして襲撃はその一回だけだった。」
首を小さく横に振ってフラティスは答えた。
「ここからが大事だ。アドラムは異常なほどに軍事力を求めた。その結果、クラードとかいう魔導士に魅入られてな。」
「魔導士?」
ハーパーが聞いたこともないという感じで声に出した。それにステッドが応える。
「私も詳しくはないが、死体を操るとか、呪い殺すとか怪しい魔術を研究しているものだ。ただの気味の悪いやつらで、勿論そんなことはできないんだがな。」
「そう、一般的にはそうだ。しかし、クラードはどうやら違うようでな。」
「どういうことだ?」
エバンが腕を組んで言う。
「どうやら奴は多少の制限はあるものの、本当に死体を動かせるらしい。お前たちも化け物と交戦しただろう?」
エバンたちには脳裏に同じ光景がよぎった。フラティスの言葉だけでは信じられないが、自分たちの体験がその大きな証拠となり納得せざるを得なかった。
「話を戻そう。モーリアは2か月くらいして動けるようになった時には彼は隣国と戦争を始めると言い始めたんだ。」
「無論、俺もモーリアも大臣たちでさえ止めた、だが、アイツは聞く耳を持たないどころか俺たち以外の大臣たちを皆処刑した。」
あまりの衝撃にレギナは口元を手で覆う。
「ここ、青の王国は元々は戦争を仕掛けるはずの隣国さ。昔からの付き合いで俺やモーリア一部のエリカンテ国民を受け入れてくれた。しかも、王族がいないという理由で俺に政治を任せてくれている。」
「・・・なるほどな。」
エバンは椅子に深くもたれた。
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