【R18】根暗な私と、愛が重すぎる彼

夕日(夕日凪)

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番外編

君と一緒に6(誠也視点)

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「誠ちゃん、やりすぎ」

 ベットの上で力なくうつぶせになった美咲ちゃんが、ジト目で僕を睨みつける。そんな顔をしても可愛いばかりなんだけどな。

「ごめんね」

 謝って、手の甲で何度か優しく頬を撫でる。すると美咲ちゃんはジト目だけでなく、頬を膨らませて怒りを主張した。……可愛い。食べ物をいっぱい詰め込んだハムスターみたい。
 これでも、やりすぎたなって反省してるんだよ。あのあと何回も、無理させちゃったもんね。
 嫌だな……美咲ちゃんに嫌われたら。嫌われても手放す気はないけれど、やっぱり好かれた状態で側にいたい。
 そんなことを考えていると、眉尻が自然に下がってしまう。

「……ごめん」
「オレンジジュース」

 二度目の謝罪に、美咲ちゃんの言葉が重なった。

「それと、ピザ。アイスも欲しい」
「美咲ちゃん?」
「今なら、それで許すから」

 美咲ちゃんはそう言うと、よたよたとした動きで脱ぎ捨てられた僕のシャツを掴み、それを羽織ってお風呂へと向かおうとする。そして途中で――足をもつれさせて転んだ。ああ、可愛いお尻が丸見えに……!

「美咲ちゃん。お風呂、一緒に入ろう? そのあとにちゃんとピザは注文するから」

 うずくまっている美咲ちゃんを、慌てて抱き上げる。すると彼女は首を横に振った。

「いや。誠ちゃんとお風呂に入って、なにもされなかったことがないもん」
「今日はなにもしないから、ね」

 そんなへろへろじゃ、お風呂で溺れないか心配だ。僕はご機嫌を取ろうと、美咲ちゃんの顔中にキスをした。

「ごめんね、好き」

 謝罪と告白の言葉を混ぜ込みながらキスを続けると、美咲ちゃんの「鬱陶しいよ」と言わんばかりのお顔が少しずつゆるんでくる。そして彼女は、やっと少しだけ笑ってくれた。
 それを見てほっとした僕は、安心感から泣きそうになってしまう。

「好き、美咲ちゃん」
「……もう。そんな顔しないで」

 美咲ちゃんは困ったように言うと、小さな手を伸ばして僕の頭を撫でてくれた。

「ピザは、三丁目のイタリアンの宅配にして?」
「うん、わかった。あのお店の美味しいもんね」
「チェーン店と値段は変わらないのにすごいよね。オレンジジュースも手絞りだし。私、マルゲリータにルッコラと辛いサラミを足したのが食べたいな」
「そうだね、そうしよう」
「アイスはね、下のコンビニのがいいな。チョコモナカのヤツがいい。半分個にして食べようね?」
「うん、わかった」

 僕を安心させようとするかのように、彼女は矢継ぎ早に話しかけてくる。そんな美咲ちゃんが愛おしくて、僕はぷにぷにのほっぺに頬ずりをした。

「本当に、好き」
「誠ちゃんは本当に……変な人だよね」

 美咲ちゃんはそう言いながらも、少しだけ嬉しそうな顔で笑った。
 お出かけから帰ったらすぐに入ろうと思っていたので、お風呂はお湯張りをして保温してある。美咲ちゃんが纏っている僕のシャツを脱がせると、その体には数え切れないほどの情事の痕が残っていた。……歯型もいくつか濃く残ってるな。これは怒られても仕方がない。
 シャワーで体を軽く流したあとに、ボディソープをスポンジで泡立てて、自分と美咲ちゃんの体を丹念に洗う。美咲ちゃんは顔を真っ赤にして身を強張らせながら、僕のされるがままになっていた。

「誠ちゃん」
「なに?」
「……胸、そんなに洗わなくていいから」

 洗うフリをして、大きな胸を堪能していたのはあっさりバレてしまった。美咲ちゃんのじっとりとした視線が痛い。

「王子様みたいな顔してるのにね。中身はふつうの男の子だね、誠ちゃんは」

 美咲ちゃんはそう言うと、くすくすと笑った。
 ……その言葉は、どう捉えたらいいんだろうな。

「……王子様みたいなのが、いい?」

 それが、どんなものかはわからないけれど。
 もっとお行儀よくしていればいいのだろうか。それはなかなか難しいな。

「ううん、誠ちゃんがいい」

 そっと唇を合わせてから、美咲ちゃんは笑った。
 ――可愛い、また抱きたい。
 その衝動を必死で堪えながら、二人分の泡をシャワーで流す。
 そして美咲ちゃんを抱えてから、湯船へ身を沈めた。

「お風呂、気持ちいいね」

 美咲ちゃんはそう言うと、ふっと息を漏らした。ぺたりと黒髪が張り付いたうなじがとても色っぽい。そのうなじに、軽く触れるだけのキスを落とす。すると美咲ちゃんの体がびくりと震えた。

「誠ちゃん!」
「しないよ。ちょっと触れただけ」
「そういう悪戯も禁止!」

 ……怒られた。
 仕方がないので美咲ちゃんのお腹に手を回して、ぎゅっと抱きしめるだけにする。硬いものがお尻に当たったのか、美咲ちゃんがこちらに抗議の視線を向ける。それは生理現象だから、許して欲しいな。

「……幸せ」

 自然に、そんなつぶやきが漏れる。
 美咲ちゃんが僕の腕の中にいる。それが嬉しくて仕方がない。

「……変なの」
「美咲ちゃんが一緒にいてくれるのが、本当に嬉しい」

 長い、長い、片想いだった。ようやく両想いになれたのだから、この幸せを大事にしたい。

「ずっと、一緒にいようね」
「……ん」

 消えるような小声でだけれど、美咲ちゃんは僕の言葉に同意を示してくれた。
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