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令嬢13歳・皆とわたくしの学園祭・前
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フィリップ王子、ベルリナ様、ミルカ王女、ゾフィー様、ハウンド、そしてわたくしとマクシミリアンという大所帯で学園祭を回っていると、学内、学外を問わずの人々の視線が容赦なく突き刺さった。
……分かっていたことだけれど、このメンバーは目立つのだ。主にフィリップ王子が。
キラキラというかギラギラというかな熱視線をフィリップ王子に向けるご令嬢の数の多さに改めて驚いてしまう。
その大量の熱い視線を受ける本人はそれを意にも介さず涼しい顔をしており、流石に慣れたものというかなんというか……。
この貴重な機会に接触をと考える他国の王族や大貴族のご令嬢は見つめるだけでなく行動に移し、熱を含んだ潤んだ目と薔薇色に染まった頬を隠しもせずご挨拶に来るものだから、わたくし達の歩みは牛歩と言ってもいい。
……うう……色々と見て回りたいんだけどなぁ……。
フィリップ王子が隣国の第三王女とお話ししている横で、思わず周囲の模擬店を横目でチラ見してしまう。
仮にも侯爵家の娘なのだし、ちゃんとしていないといけないのは分かっているんだけど……!
そんな落ち着かないわたくしの様子に気づいたフィリップ王子は優しくわたくしの手を握ると、すまなそうな顔で微笑んだ。
――いや、さりげなく手を握るのは止めてくれないかしら! マクシミリアンとベルリナ様が睨んでるし……!!
それに話しかけてきた隣国の王女様もなんだか微妙な顔だ……わたくし婚約者じゃありませんから、誤解しないで下さいね……!!
「ビアンカ、すまないな」
隣国の王女とのご挨拶を終えたフィリップ王子はその綺麗な形の眉を下げて小声で謝罪をしてきた。
……ちなみに手はまだ、繋いだままである。
指が長いし爪も美しく輝いてるし肌の肌理は細やかだし……何を食べたらこんな綺麗な手になるんだろう。
それに少年から男の人の手になってきているような……彼も大人になる途中なんだなぁ……。
繋がれた手を見つめながら思わずそんな事を考えてしまう。
「いいえ、大丈夫ですわ。それよりも手を離して下さいませ? 人前ですのよ」
「……じゃあ、人前じゃない時にまた繋ごう」
フィリップ王子はそう言いながら名残惜しそうに手を離してくれたけれど……いや、違う。そうじゃない。
「ねぇねぇ皆。これ買ってきたからどっかで食べよー?」
フィリップ王子がご挨拶をしている間姿を見ないと思っていたミルカ王女が両手いっぱいに模擬店で買ったらしい食べ物やらお菓子やらを抱えてこちらに駆け寄ってきた。
後ろに控えているハウンドも大量に色々抱えているけど……。7人居るとはいえそんなに沢山食べきれるのかしら。
横に居るベルリナ様もミルカ王女が抱えた食べ物の量に目を丸くしている。
……ミルカ王女は身動きが取れないわたくしを気遣って買ってきてくれたのだろうから、頑張って食べよう。
「わぁ! 美味しそうですわね!……でもその量で足りるかしら……?」
……ゾフィー様は目をキラキラさせながらわたくしとは真逆の心配をしていた。
ゾフィー様がいらっしゃるなら、きっと大丈夫ね。うん。
「では、中庭の芝生に布を敷いてピクニックのようにして食べませんか? お行儀は悪いですけど……今日はカフェテリアも食堂も人でいっぱいだと思いますの」
「……ビアンカ、本気で言っているの? フィリップ王子やミルカ王女がいらっしゃるのよ?」
わたくしが提案するとベルリナ様がそのアーモンド形の綺麗な瞳を半眼にしてこちらを睨んだ。
……だ……だめだったかな……。
「いや、楽しそうじゃないか、そうしよう。中庭だったら人も少なくて落ち着けそうだしな……」
軽く息を吐きながらフィリップ王子が言った。
……表情には出さないけれどひっきりなしに人に話しかけられて疲れない訳ないわよね。
今も話しかける機会を虎視眈々と狙っている令嬢達がいらっしゃるし……。
「フィ……フィリップ王子がそうおっしゃるのなら、そうしましょう!」
ベルリナ様はフィリップ王子の言葉に顔を頬を染めながらうんうんと首を縦に振った。
うん。分かりやすいわねベルリナ様……。恋する乙女はとても可愛い。
「ビアンカじゃないか」
「ミーニャ王子……!」
声をかけられ振り返ると、そこには猫耳と尻尾をふわふわと揺らしたミーニャ王子が立っていた。
相変わらず触り心地が良さそうなお耳と尻尾だわ……思わず目が釘付けになってしまう。
するとマクシミリアンの視線が背後から鋭く刺さるのを感じた。
うう……もう触りたいなんて言わないわよ……??
「やった薬でウサギの獣人になってるのか。似合ってるな」
ミーニャ王子はフィリップ王子やミルカ王女と軽く挨拶を交わすと、わたくしに付いているうさ耳を見て楽しそうに笑った。
「ありがとうございます、ミーニャ王子」
なんだか照れくさいけれど似合っていると言われると、素直に嬉しい。
お礼を言って頭を下げると視界の隅でふわりとウサギの耳が揺れた。
「番とは、『それ』で楽しめたか?」
ニヤリと笑って言うミーニャ王子の言葉にわたくしは真っ青になった。
コスプレでのプレイを楽しむ変態カップルみたいに言わないで!!
いや……中らずといえども遠からず……かもしれないけど……!
「番……? くそ、マクシミリアンか」
フィリップ王子がマクシミリアンをちらりと見ながら舌打ちする。
王子、なんだかお口が悪いですよ……!
「ビアンカ、やらしいことしたの?」
ミルカ王女がニヤニヤしていらっしゃる……や……やらしいことなんてしてないもん!
「まぁ……!!! ビアンカ様が獣のお耳であんなことやそんなことを……!?」
ゾフィー様、更に紛らわしいことを言わないで!!!
「ビアンカ。貴女何か令嬢にあるまじき行為をしているの……??」
「し……してませんわ!!」
ベルリナ様の心底軽蔑した視線を受けて、わたくしは思わず『令嬢にあるまじき』絶叫をしてしまった。
……分かっていたことだけれど、このメンバーは目立つのだ。主にフィリップ王子が。
キラキラというかギラギラというかな熱視線をフィリップ王子に向けるご令嬢の数の多さに改めて驚いてしまう。
その大量の熱い視線を受ける本人はそれを意にも介さず涼しい顔をしており、流石に慣れたものというかなんというか……。
この貴重な機会に接触をと考える他国の王族や大貴族のご令嬢は見つめるだけでなく行動に移し、熱を含んだ潤んだ目と薔薇色に染まった頬を隠しもせずご挨拶に来るものだから、わたくし達の歩みは牛歩と言ってもいい。
……うう……色々と見て回りたいんだけどなぁ……。
フィリップ王子が隣国の第三王女とお話ししている横で、思わず周囲の模擬店を横目でチラ見してしまう。
仮にも侯爵家の娘なのだし、ちゃんとしていないといけないのは分かっているんだけど……!
そんな落ち着かないわたくしの様子に気づいたフィリップ王子は優しくわたくしの手を握ると、すまなそうな顔で微笑んだ。
――いや、さりげなく手を握るのは止めてくれないかしら! マクシミリアンとベルリナ様が睨んでるし……!!
それに話しかけてきた隣国の王女様もなんだか微妙な顔だ……わたくし婚約者じゃありませんから、誤解しないで下さいね……!!
「ビアンカ、すまないな」
隣国の王女とのご挨拶を終えたフィリップ王子はその綺麗な形の眉を下げて小声で謝罪をしてきた。
……ちなみに手はまだ、繋いだままである。
指が長いし爪も美しく輝いてるし肌の肌理は細やかだし……何を食べたらこんな綺麗な手になるんだろう。
それに少年から男の人の手になってきているような……彼も大人になる途中なんだなぁ……。
繋がれた手を見つめながら思わずそんな事を考えてしまう。
「いいえ、大丈夫ですわ。それよりも手を離して下さいませ? 人前ですのよ」
「……じゃあ、人前じゃない時にまた繋ごう」
フィリップ王子はそう言いながら名残惜しそうに手を離してくれたけれど……いや、違う。そうじゃない。
「ねぇねぇ皆。これ買ってきたからどっかで食べよー?」
フィリップ王子がご挨拶をしている間姿を見ないと思っていたミルカ王女が両手いっぱいに模擬店で買ったらしい食べ物やらお菓子やらを抱えてこちらに駆け寄ってきた。
後ろに控えているハウンドも大量に色々抱えているけど……。7人居るとはいえそんなに沢山食べきれるのかしら。
横に居るベルリナ様もミルカ王女が抱えた食べ物の量に目を丸くしている。
……ミルカ王女は身動きが取れないわたくしを気遣って買ってきてくれたのだろうから、頑張って食べよう。
「わぁ! 美味しそうですわね!……でもその量で足りるかしら……?」
……ゾフィー様は目をキラキラさせながらわたくしとは真逆の心配をしていた。
ゾフィー様がいらっしゃるなら、きっと大丈夫ね。うん。
「では、中庭の芝生に布を敷いてピクニックのようにして食べませんか? お行儀は悪いですけど……今日はカフェテリアも食堂も人でいっぱいだと思いますの」
「……ビアンカ、本気で言っているの? フィリップ王子やミルカ王女がいらっしゃるのよ?」
わたくしが提案するとベルリナ様がそのアーモンド形の綺麗な瞳を半眼にしてこちらを睨んだ。
……だ……だめだったかな……。
「いや、楽しそうじゃないか、そうしよう。中庭だったら人も少なくて落ち着けそうだしな……」
軽く息を吐きながらフィリップ王子が言った。
……表情には出さないけれどひっきりなしに人に話しかけられて疲れない訳ないわよね。
今も話しかける機会を虎視眈々と狙っている令嬢達がいらっしゃるし……。
「フィ……フィリップ王子がそうおっしゃるのなら、そうしましょう!」
ベルリナ様はフィリップ王子の言葉に顔を頬を染めながらうんうんと首を縦に振った。
うん。分かりやすいわねベルリナ様……。恋する乙女はとても可愛い。
「ビアンカじゃないか」
「ミーニャ王子……!」
声をかけられ振り返ると、そこには猫耳と尻尾をふわふわと揺らしたミーニャ王子が立っていた。
相変わらず触り心地が良さそうなお耳と尻尾だわ……思わず目が釘付けになってしまう。
するとマクシミリアンの視線が背後から鋭く刺さるのを感じた。
うう……もう触りたいなんて言わないわよ……??
「やった薬でウサギの獣人になってるのか。似合ってるな」
ミーニャ王子はフィリップ王子やミルカ王女と軽く挨拶を交わすと、わたくしに付いているうさ耳を見て楽しそうに笑った。
「ありがとうございます、ミーニャ王子」
なんだか照れくさいけれど似合っていると言われると、素直に嬉しい。
お礼を言って頭を下げると視界の隅でふわりとウサギの耳が揺れた。
「番とは、『それ』で楽しめたか?」
ニヤリと笑って言うミーニャ王子の言葉にわたくしは真っ青になった。
コスプレでのプレイを楽しむ変態カップルみたいに言わないで!!
いや……中らずといえども遠からず……かもしれないけど……!
「番……? くそ、マクシミリアンか」
フィリップ王子がマクシミリアンをちらりと見ながら舌打ちする。
王子、なんだかお口が悪いですよ……!
「ビアンカ、やらしいことしたの?」
ミルカ王女がニヤニヤしていらっしゃる……や……やらしいことなんてしてないもん!
「まぁ……!!! ビアンカ様が獣のお耳であんなことやそんなことを……!?」
ゾフィー様、更に紛らわしいことを言わないで!!!
「ビアンカ。貴女何か令嬢にあるまじき行為をしているの……??」
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ベルリナ様の心底軽蔑した視線を受けて、わたくしは思わず『令嬢にあるまじき』絶叫をしてしまった。
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