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閑話19・短編まとめ6

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活動報告にちょこちょこ上げている短編のまとめその6です。
今回はマクシミリアンとビアンカがイチャイチャしているお話と使用人達の無駄口。

『冬の寒い日に』(学園入学前。侯爵家での一幕)
『マクシミリアンからの恋文』(120話のデート回後)
『使用人達の午後』(学園入学後。使用人達のくだらないおしゃべり)

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『冬の寒い日に』

「マクシミリアン、寝る前に温かいものが飲みたいの」

 ナイトドレスを着たお嬢様は、寝台に腰をかけ素足を少しパタパタと前後に揺らしながらそう言った。
 白くて奇麗な足。小さな指には桜貝のように可愛らしい爪が付いている。
 ……素足では、体が冷えるんじゃないか? 後で何か毛糸の靴下のようなものを持ってこよう。

「紅茶をお淹れしましょうか?」
「……もっと甘いのがいいわ」

 上目遣いで私を見ながら甘えるような口調で言うお嬢様に『可愛いです、お嬢様!!』と心の中で拍手をしながら喝采を送る。

「ではミルクをたっぷり入れてお砂糖を多めに入れた紅茶か、ココアのどちらかにしましょうか。どちらがいいですか?」

 私が訊くとお嬢様は少しの間、悩む顔をした。

「ココアに、マシュマロを入れて欲しいわ。それでね、マクシミリアンも一緒に飲むの」

 お嬢様はそう言いながら寝台からぽふり、と降りるともこもことしたルームシューズを履いた。

「お嬢様?」
「台所でマクシミリアンがココアを作るとこ、見ていてもいいかしら?」
「お風邪を召されますので上掛けを被ってお待ち下さい。すぐにお持ちしますので」
「むぅ……」

 唇を尖らせるお嬢様の頭をなでてから寝台に少し強引に押し込むと、私はココアを作りに台所へと行った。
 火の魔石を使ったコンロで沸騰しすぎてしまわないように注意しながら牛乳を温め、ココアパウダーを大きめのカップに入れる。このパウダーは割と甘さ控えめだから……お嬢様の分だけ砂糖を足してしまおうか。
 お嬢様のお好みに配慮しながらココアを淹れ、上からマシュマロを落とす。
 それを持ってお嬢様の部屋に戻るとお嬢様は嬉しそうにニコニコと笑った。

「とってもいい香りがする!」

 そう言って部屋にある小さなテーブルの椅子に座ろうとするお嬢様に、私は首を振った。
 テーブルの上にココアを2つ置き、椅子に腰かけ。
 ぽんぽん、と膝を叩いてみせる。
 するとお嬢様の眉間に薄く皺が寄った。

「……お膝?」
「ええ、今日は寒いですからね」

 私がそう言うとお嬢様はなんだか腑に落ちないという表情で、それでも私の膝へと乗ってくださった。……お嬢様は警戒心が足りない小動物のようだ。
 私は片手でお嬢様の腰を固定して、片手で自分のココアを手に取りそれを口にした。
 ……甘いな。砂糖を足さなくても私には甘すぎる味に少しだけ眉を顰め唇を舐めると、唇まで甘い味がして私は少し辟易してしまった。

「ふふ。美味しい、あったかい!」

 だけどお膝の上のお嬢様が大変ご機嫌のようなので。
 甘いココアも嫌いじゃない、ということにしておこう。

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『マクシミリアンからの恋文』

 以前デートで恋文をくれるとマクシミリアンは約束してくれたのだけど。
 今日、彼はその約束の恋文をわたくしに手渡してくれた。

「お嬢様、お約束の恋文です。必要でしたら言葉でも愛を伝えますが」
「ありがとう、マクシミリアン。えーっと……言葉は後で……」
「愛しています、お嬢様。一生お側に置いてください」
「後でって言ったのに!!」

 突然の愛の言葉にわたくしが顔を真っ赤にして反応すると、マクシミリアンにそっと額にキスをされ、次に唇も塞がれた。
 愛おしそうに見つめられ、続けて三度キスをされる。
 ……うちの執事の糖度が高い……。
 わたくしはマクシミリアンから恋文を受け取ると、少しにまにまとしてしまった。
 わぁ、すごい! 人生初のラブレターよ!
 しかも前世の推しで、現在の……とても大好きな人からの。
 手紙はピンク色の可愛らしい封筒に入っていて、マクシミリアンがわたくしの好みを考えながらこれを買ったんだ、と思うとなんだか微笑ましい気持ちになってしまう。
 わたくしは手紙の封を切ろうとして……。

「……どうしよう。嬉しすぎて開けるのがもったいないわ」

と眉を下げてしまった。

「ふふ。開けずに取っていてもいいんですよ?」

 わたくしが手紙を持ってうんうん悩んでいるとマクシミリアンが悪戯っぽく笑う。
 結局悩みに悩んだわたくしは、鍵のかかる机の中にそっと手紙をしまったのだった。
 ……シュレディンガーの恋文になってしまったわ……。

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『使用人達の午後』

 使用人サロンの高位貴族の使用人に用意された部屋で、私はだらだらとしていた。
 お嬢様を次にお迎えに行くまで約三時間。
 現在生活必需品に足りないものもないし、寮の部屋も奇麗に片づけてある。
 シュラット侯爵に頼まれていた書類仕事も先ほど終わらせた。
 ……つまりは仕事が何もないのだ。
 ネクタイに指を通し軽く緩め、長椅子に深く腰掛けて足を組んでリラックスする。
 テーブルの上のベルを鳴らすとサロンに配属されているページボーイが駆けつけてきたので、飲み物を頼んでからチップを渡した。

「……仮眠でもするかな。いや……」

 以前ここで仮眠をしていた時。
 気配を感じて目を開けると他所の家のメイドが私の上に乗ろうとしており、思わず蹴り飛ばしてしまったことがあった。
 ……正直、あれは怖かった。肉食にもほどがあるだろう。
 暗殺者ならともかく一般人を『犬』に噛み千切らせるわけにもいかないしな……。
 話を嗅ぎつけたジョアンナには爆笑されるし、本当に散々だった。
 ――仮眠は、止めておこう。

「マックス~いたいた。暇でしょ?」

 相変わらずノックもせずにジョアンナが部屋へと入ってきた。
 手には何か箱を持っている……ボードゲームの類か。
 当たり前だが、私が暇な時はコイツも暇だ。

「ボードゲームしようぜ、マックス」

 にしし、と笑ってジョアンナがテーブルの上にゲームをセッティングしていく。
 色とりどりのタイルを使った陣取りゲームのようだ……コイツ、自分の得意なヤツを持ってきたな。子供か、この女は。

「……それとも、仮眠したい? また襲われちゃう?」

 意地悪げに言うジョアンナに向けてテーブルの上にあったオレンジを投げつけると、彼女のおでこに少し痛そうな音を立てて当たった。

「痛いわよ! マックス!」
「うるさい。そっちが悪い」

 ……人のトラウマをほじくるからだ。
 その後ハウンドも参加し、のんびりとした午後は過ぎていった。
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