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祖母の家、そして怪奇な現象1
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あの少女は、白昼夢だったのだろうか。それともーー真昼の幽霊か。
そんな恐ろしい考えに身を震わせているうちに、電車は湯田中駅へと停車した。
あの子のことは気になるけれど、考えていても仕方がない。というか考えたくない、怖くて死にそうになる。怖がりにあの現象は本当に酷だ。私は恐怖を打ち払うように頭をぶるぶると振ってから、駅のホームへと降り立った。
湯田中駅には線路を挟んで駅舎が二つ存在する。片方は昭和のはじめに建てられた古いもので今は駅舎としては使われておらず、展示施設になっている。たしか登録有形文化財にも指定されていたはずだ。
そのレトロで愛らしい外観を少し眺めてから、新駅舎の改札から駅の外に出る。
改札を出ると、東京とは違う広くて大きな空が広がっていた。
そうか、高い建物がないんだ。……そんなことを思いながら、私は周囲を見渡した。
秋の暖かな日差しと遠くに山が見える和やかな景色は、電車での恐怖を少しだけ溶かしてくれる。
「うん、夢。夢だよね」
まだ少女のことに及びそうだった思考を強制的に打ち切って、私は足を踏み出した。
祖母の家までは徒歩で十八分。少し遠いけれど、タクシーを使うほどの距離かというと微妙なところだ。
スマホで時間を確認すると、時刻は十五時を少し回ったくらいだった。まずは家に荷物を置いて、買い物に向かおうかな。祖母の家から十分くらいの距離に、小さな商店があったはずだ。
引っ越しの荷物は明後日届く。それまでは、置きっぱなしになっている祖母の家財道具を使って過ごすつもりである。だいぶ型が古いものだけれど、一通りの家具家電はあったと思う。
自分の荷物が着いてからは……それらはどうしようかな。祖母の形見ということもあり、捨てるのは忍びないので庭の倉庫に入れておくのもありかもしれない。
「よし」
しっかりと荷物を抱えて、私は祖母の家へと向かった。
……祖母から受け継いだのだから、もう『私の家』と表現するべきなんだろうけど。まだ、そんな気にはならないのだ。
記憶を辿りつつ歩くと、記憶の通りの風景が広がっていく。それは郷愁を心に湧き立たせた。歩きはじめてしばらくは、その感覚を楽しんでいたのだけれど……
……待って。
祖母の家までの道のりってこんなに坂だったっけ!?
昔は若さで気にならなかったのだろう祖母の家へと至る坂は、アラサー女にはすっかりこたえるものとなっていた。
ぜはぜはと息を切らせながら必死に歩くと、他の家から離れた場所にぽつんと建った平屋の古民家が見えてくる。その昔と変わらぬ佇まいを見て、私はほっと安堵の息を吐いた。
人が居ないと家はあっという間に荒れると聞く。だから家に着いたら、庭なども含めた大掃除だと覚悟をしていた。だけど……
祖母の家の庭木は綺麗に整えられて雑草はなく、落ち葉なども綺麗に掃き清められているように見える。もしかして、近所の人が手入れをしてくれてる? そうならお礼を言わないといけないけれど……他の家とは結構離れているのに、わざわざそんなことをする人がいるのだろうか。
首を傾げながら格子戸になっている玄関に行き、レトロなデザインの鍵を鍵穴に挿し込み捻る。するとカチャンと解錠される音がした。
そんな恐ろしい考えに身を震わせているうちに、電車は湯田中駅へと停車した。
あの子のことは気になるけれど、考えていても仕方がない。というか考えたくない、怖くて死にそうになる。怖がりにあの現象は本当に酷だ。私は恐怖を打ち払うように頭をぶるぶると振ってから、駅のホームへと降り立った。
湯田中駅には線路を挟んで駅舎が二つ存在する。片方は昭和のはじめに建てられた古いもので今は駅舎としては使われておらず、展示施設になっている。たしか登録有形文化財にも指定されていたはずだ。
そのレトロで愛らしい外観を少し眺めてから、新駅舎の改札から駅の外に出る。
改札を出ると、東京とは違う広くて大きな空が広がっていた。
そうか、高い建物がないんだ。……そんなことを思いながら、私は周囲を見渡した。
秋の暖かな日差しと遠くに山が見える和やかな景色は、電車での恐怖を少しだけ溶かしてくれる。
「うん、夢。夢だよね」
まだ少女のことに及びそうだった思考を強制的に打ち切って、私は足を踏み出した。
祖母の家までは徒歩で十八分。少し遠いけれど、タクシーを使うほどの距離かというと微妙なところだ。
スマホで時間を確認すると、時刻は十五時を少し回ったくらいだった。まずは家に荷物を置いて、買い物に向かおうかな。祖母の家から十分くらいの距離に、小さな商店があったはずだ。
引っ越しの荷物は明後日届く。それまでは、置きっぱなしになっている祖母の家財道具を使って過ごすつもりである。だいぶ型が古いものだけれど、一通りの家具家電はあったと思う。
自分の荷物が着いてからは……それらはどうしようかな。祖母の形見ということもあり、捨てるのは忍びないので庭の倉庫に入れておくのもありかもしれない。
「よし」
しっかりと荷物を抱えて、私は祖母の家へと向かった。
……祖母から受け継いだのだから、もう『私の家』と表現するべきなんだろうけど。まだ、そんな気にはならないのだ。
記憶を辿りつつ歩くと、記憶の通りの風景が広がっていく。それは郷愁を心に湧き立たせた。歩きはじめてしばらくは、その感覚を楽しんでいたのだけれど……
……待って。
祖母の家までの道のりってこんなに坂だったっけ!?
昔は若さで気にならなかったのだろう祖母の家へと至る坂は、アラサー女にはすっかりこたえるものとなっていた。
ぜはぜはと息を切らせながら必死に歩くと、他の家から離れた場所にぽつんと建った平屋の古民家が見えてくる。その昔と変わらぬ佇まいを見て、私はほっと安堵の息を吐いた。
人が居ないと家はあっという間に荒れると聞く。だから家に着いたら、庭なども含めた大掃除だと覚悟をしていた。だけど……
祖母の家の庭木は綺麗に整えられて雑草はなく、落ち葉なども綺麗に掃き清められているように見える。もしかして、近所の人が手入れをしてくれてる? そうならお礼を言わないといけないけれど……他の家とは結構離れているのに、わざわざそんなことをする人がいるのだろうか。
首を傾げながら格子戸になっている玄関に行き、レトロなデザインの鍵を鍵穴に挿し込み捻る。するとカチャンと解錠される音がした。
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