【R18】夫に離縁されましたが、十歳年下の獅子公爵令息に求愛されています

夕日(夕日凪)

文字の大きさ
21 / 24

19(オスカー視点)

しおりを挟む
 オスカーがマリーンのもとを訪れるようになってから、二年が過ぎようとしていた。
 オスカーは十四歳になり、マリーンと出会った頃よりも『獅子』らしくなった。
 背は伸びて体には頑強な筋肉がつき、大人と間違われることも増えた。もともとはっきりとした顔立ちだったが、それをさらに強調するように顔の彫りの深みが増した。
 世間からの評価は『美少年』から『美丈夫』というものに変化していき、それに比例して──以前からうるさかった令嬢たちがさらにうるさくなった。
 獣人の令嬢たちにまとわりつかれることほど鬱陶しく無意味なことはないとオスカーは思う。
 番に出会っていない今は否定するだろうが、彼女たちは番と出会った瞬間にオスカーへの気持ちなど忘れてしまう。令嬢たちがオスカーに向けているのは、『仮初め』の気持ちなのだ。
 番と出会い一瞬にして惹かれてしまったオスカーだからこそ、それが確信できる。
 とはいえ、人生で番に出会えない可能性は当然ある。令嬢たちがよき婚姻相手を見つけることに必死になる気持ちも、受け入れることはできないが理解できなくはないのだ。
『番がいる』と断っても、彼女たちはその言葉を自身の気持ちを断る建前だと思って引かない。
 それは、オスカーが自分の番がマリーンであることを世間に公言していないからだった。
 獣人は番を見つけると、番べったりになる。常に番を側に置き、四六時中離さない。しかしオスカーは番を側に置いていない……どころかそれがどこの誰かも公言していないのだ。
 だから皆が『番がいる』を方便と思うのも当然のことではあった。
 すぐにでも『マリーンが俺の番なのだ』と叫び出したいオスカーだったが、そういうわけにもいかない。
 ──マリーンは、未だに消えない世間の噂に晒されて苦しんでいるのだ。
 そんなマリーンに『十も年下の獣人に言い寄られている女』というさらに世間の興味を引く噂を加えてしまうことを、オスカーは絶対に避けたかった。
 
 *

 オスカーはペンバートン公爵家の屋敷の自室で、マリーンのところに顔を出しに行く準備をしていた。その時、部屋の扉がノックされコリンがひょいと顔を出した。
「オスカー坊っちゃん、お耳に入れたいことが」
 返事をする前に扉を開けるな、許可をする前に話をはじめるな──など言いたいことはいろいろある。
 しかし、一番言いたいことは……。
「……コリン。僕はもう十四歳だ。坊っちゃんはやめろ」
 見目も大人に近づき、『坊っちゃん』という響きに外見がそぐわなくなってきている。にも拘わらず、コリンはオスカーを『坊っちゃん』と呼び続ける。オスカーはそれが不満だった。
「そう言われても、坊っちゃんは坊っちゃんですからねぇ」
 コリンはそう言いながらへらりと笑う。八つ年上のコリンは、オスカーのようを子ども扱いしている──というよりも弟のように思っている節がある。それが嬉しくないわけではないが、そろそろ大人のように扱ってほしいものだとオスカーは拗ねた気持ちになるのだ。
「まぁいい。話せ」
 ふっと息を吐いてから、オスカーは話の先を促す。
 するとコリンは、その表情を引き締めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

番ではなくなった私たち

拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。 ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。 ──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。 アンとラルフの恋の行方は……? ※全5話の短編です。

処理中です...