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転生王子と婚約披露パーティー4
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来賓たちを前にして俺がティアラ嬢との婚約を宣言すると、会場は大きな拍手で包まれた。
彼らの内心はどうであれ、パーティーは恙なくはじまったのだ。
ティアたんは俺の隣であきらかに安心したような息を漏らす。握った手に優しく力を込めると、彼女はこちらを向いて小さく笑みを漏らした。
――可愛い。ティアたんは本当に可愛い。
どれだけ嫌われていようと、婚約者が最高に可愛いことには変わりがない。また褒め言葉を尽くしそうになって、俺はぐっと我慢する。ティアたんは俺に褒められたりするのが、嫌なようだから。これ以上ティアたんに嫌われたくはない。
俺はティアラ嬢の微笑みに少しだけうなずいてみせる。……だけど笑みを返す心の余裕は俺にはなかった。
「……王子?」
ティアラ嬢が俺を呼ぶ。その声と表情が少し不安そうに思えたので、その理由を訊ねようとした時。筆頭公爵夫妻がこちらへ向かって来るのが見えた。しばらくは来賓たちの応対で忙しくなるだろう。
繋いでいた手を放すと、名残惜しい温もりが手から零れていく。
ティアラ嬢も、俺の温もりが名残惜しいと思ってくれればいいのに。そんなあり得ないことを考えてしまい、俺は小さく首を振った。
「公爵、公爵夫人。よくいらしてくれましたね」
公爵夫妻によそ行き顔で挨拶をし、会話を交わしながらちらりと隣を見ると。
ティアラ嬢の顔色はなんだか冴えないものとなっていた。気分でも悪いのだろうか……とても心配だ。
「ティアラ嬢。疲れたのなら少し休もうか」
周囲にいた貴族にある程度挨拶をした後にそっと耳打ちすると、ティアラ嬢はこくりとうなずく。手を差し出すと素直に小さな手を乗せてくれたので、俺は内心ほっとした。椅子に座らせ、隣に自分も腰を下ろす。そして給仕を呼び止めて、果実水を二つ受け取った。ティアラ嬢にそれを渡すと、彼女は小さな声で礼を言ってからグラスに口を付けた。
「人が多いから、疲れるね」
そう言って俺も果実水を口にする。魔法で冷やされているそれは、前世で飲んだ缶ジュースのようにひんやりとしている。しゃべることに少し疲れてしまったので、この冷たさが喉に心地いい。
「……お気遣いをさせてしまって申し訳ありません」
「俺はティアラ嬢の、婚約者だからね」
本当は『君のことが好きだからね』と言いたい。
しかしそれを言うと、たぶんティアたんはまた嫌がる。そして俺の頬でも叩きかねない。晴れの場でそれをやったら、本格的に破談だなんだという話に発展するだろう。彼女に恋をしている俺はそれだけは困るのだ。
「あ」
人波の中にピンク色の頭を見つけて、俺は小さく声を上げた。
パーティーは王宮で催されている。あのピンク頭のメイド……ピナも、給仕として駆り出されているのだろう。
――さすがに会場だと逃げられまい。
俺とブリッツの妙な噂が広がる前に、ピナに口止めをしないと。ティアたんの好みを教えてくれた礼も改めて言いたいし。
「知り合いを見つけたので、少し挨拶をしてくる」
「あ、では私も……」
「ティアラ嬢は休んでいて。ブリッツ、彼女の護衛を」
一緒に立ち上がろうとしていた彼女をそっと座らせる。そしてブリッツに護衛を任せてから、俺はピンクの頭の方へと向かった。
彼らの内心はどうであれ、パーティーは恙なくはじまったのだ。
ティアたんは俺の隣であきらかに安心したような息を漏らす。握った手に優しく力を込めると、彼女はこちらを向いて小さく笑みを漏らした。
――可愛い。ティアたんは本当に可愛い。
どれだけ嫌われていようと、婚約者が最高に可愛いことには変わりがない。また褒め言葉を尽くしそうになって、俺はぐっと我慢する。ティアたんは俺に褒められたりするのが、嫌なようだから。これ以上ティアたんに嫌われたくはない。
俺はティアラ嬢の微笑みに少しだけうなずいてみせる。……だけど笑みを返す心の余裕は俺にはなかった。
「……王子?」
ティアラ嬢が俺を呼ぶ。その声と表情が少し不安そうに思えたので、その理由を訊ねようとした時。筆頭公爵夫妻がこちらへ向かって来るのが見えた。しばらくは来賓たちの応対で忙しくなるだろう。
繋いでいた手を放すと、名残惜しい温もりが手から零れていく。
ティアラ嬢も、俺の温もりが名残惜しいと思ってくれればいいのに。そんなあり得ないことを考えてしまい、俺は小さく首を振った。
「公爵、公爵夫人。よくいらしてくれましたね」
公爵夫妻によそ行き顔で挨拶をし、会話を交わしながらちらりと隣を見ると。
ティアラ嬢の顔色はなんだか冴えないものとなっていた。気分でも悪いのだろうか……とても心配だ。
「ティアラ嬢。疲れたのなら少し休もうか」
周囲にいた貴族にある程度挨拶をした後にそっと耳打ちすると、ティアラ嬢はこくりとうなずく。手を差し出すと素直に小さな手を乗せてくれたので、俺は内心ほっとした。椅子に座らせ、隣に自分も腰を下ろす。そして給仕を呼び止めて、果実水を二つ受け取った。ティアラ嬢にそれを渡すと、彼女は小さな声で礼を言ってからグラスに口を付けた。
「人が多いから、疲れるね」
そう言って俺も果実水を口にする。魔法で冷やされているそれは、前世で飲んだ缶ジュースのようにひんやりとしている。しゃべることに少し疲れてしまったので、この冷たさが喉に心地いい。
「……お気遣いをさせてしまって申し訳ありません」
「俺はティアラ嬢の、婚約者だからね」
本当は『君のことが好きだからね』と言いたい。
しかしそれを言うと、たぶんティアたんはまた嫌がる。そして俺の頬でも叩きかねない。晴れの場でそれをやったら、本格的に破談だなんだという話に発展するだろう。彼女に恋をしている俺はそれだけは困るのだ。
「あ」
人波の中にピンク色の頭を見つけて、俺は小さく声を上げた。
パーティーは王宮で催されている。あのピンク頭のメイド……ピナも、給仕として駆り出されているのだろう。
――さすがに会場だと逃げられまい。
俺とブリッツの妙な噂が広がる前に、ピナに口止めをしないと。ティアたんの好みを教えてくれた礼も改めて言いたいし。
「知り合いを見つけたので、少し挨拶をしてくる」
「あ、では私も……」
「ティアラ嬢は休んでいて。ブリッツ、彼女の護衛を」
一緒に立ち上がろうとしていた彼女をそっと座らせる。そしてブリッツに護衛を任せてから、俺はピンクの頭の方へと向かった。
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