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転生王子は婚約者と幸せになりました
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「お二方、お茶のお替りはいがかですか?」
あれからまた二度ほど抱き合い、衣服を整え終えたタイミングで。ブリッツが東屋にやって来て、しゃあしゃあとそんなことを言った。
なんてぴったりなタイミングで来るんだコイツは。どこかで見てたんじゃないだろうな。
「そそそ、そうね。頂こうかしら」
ティアラ嬢……いや、ティアは声を上ずらせながら、ブリッツにそう返事をする。
「そうだな、もらおうか」
俺もそう言うとティアを抱え上げた。彼女は『ひゃ!?』という声を漏らしたが、もう俺を叩くことはなく大人しく抱えられてくれる。はじめてなのに沢山抱いてしまったのだ。体がつらいだろうから、身を委ねてくれてホッとした。
そんな俺たちを、ブリッツはなんだか生暖かい目で見つめている。
……コイツのおかげで両想いだとわかったとはいえ、やっぱりなにか腹が立つな。
俺はテーブルへと戻り、ティアを抱えたまま着席する。彼女は驚いたように俺を見つめたが、額を擦り合わせてから口づけをすると嬉しそうに笑ってくれた。
「父上が要らぬ手を回す前に、ティアとの仲は良好だとお伝えしないとな」
「……シオン様。その、ごめんなさい……」
「謝らないで。俺ももっと、はっきりと気持ちを伝えていれば良かった。これからはちゃんと愛してると言うから」
「シオン様……」
ティアの頬が真っ赤に染まる。恥ずかしそうにうなずく彼女が、愛おしくてたまらない。
「えーと。俺もいるんですけどねぇ」
ブリッツは温かな紅茶を淹れ終えると、一つため息をついてからまた庭園から出て行った。
「……この世界に生まれて良かったなぁ。ティアに会えたし」
「シオン様は大げさですよ」
「大げさじゃないよ」
ティアと出会えない世界に転生していた可能性もあるのだし。
頬ずりをすると、ティアがくすくすと笑う。
可愛い、好きだ。一生大事にしよう。
「そろそろ帰してあげないとね。もっと一緒にいたいけれど」
「シオン様……そうですね。残念ですけれど」
「明日は公務を休もうかな。ティア、俺とデートして?」
……たくさんの護衛付きだろうけど。両想いになったのだから、デートくらいはしたいよな。前世でできなかったことだし。
「し、します。デート、したいです」
ティアはそう言うと、ふわりと嬉しそうに笑った。
そしてティアの手を引いて庭園を出ると。少し困った顔のブリッツと、俺たちに土下座をしているピナがいた。
「……えーっと、ピナ嬢?」
「先日のパーティーではティアラ様のご不興の原因となってしまい、申し訳ありませんでした! お願いですので、殺さないでくださいませ!」
「殺さないよ!? というか君、土下座スタイルでの謝罪とか絶対に転生者だろ!」
「ふぇ! シオン王子もですかぁ!?」
鼻水を垂らしながらピナが顔を上げる。あああ、美少女顔が台無しだなぁ。
俺はピナに近づくと、仕方なく鼻水を拭いてやった。
「まぁ、転生云々の話は機会があれば……」
「ふぇい。そうれふね」
ピナと話していると、後ろから服が引っ張られた。
「シオン様。他の子と、あまり仲良くしないで」
甘えるような、拗ねたような可愛い声。振り返ると、そこには頬を膨らませたティアがいた。
「ティア、君以外見えないよ」
囁いて抱きしめると、ティアが嬉しそうに胸に頬を擦り寄せる。
その温かな体温に、俺は心からの幸せを感じた。
あれからまた二度ほど抱き合い、衣服を整え終えたタイミングで。ブリッツが東屋にやって来て、しゃあしゃあとそんなことを言った。
なんてぴったりなタイミングで来るんだコイツは。どこかで見てたんじゃないだろうな。
「そそそ、そうね。頂こうかしら」
ティアラ嬢……いや、ティアは声を上ずらせながら、ブリッツにそう返事をする。
「そうだな、もらおうか」
俺もそう言うとティアを抱え上げた。彼女は『ひゃ!?』という声を漏らしたが、もう俺を叩くことはなく大人しく抱えられてくれる。はじめてなのに沢山抱いてしまったのだ。体がつらいだろうから、身を委ねてくれてホッとした。
そんな俺たちを、ブリッツはなんだか生暖かい目で見つめている。
……コイツのおかげで両想いだとわかったとはいえ、やっぱりなにか腹が立つな。
俺はテーブルへと戻り、ティアを抱えたまま着席する。彼女は驚いたように俺を見つめたが、額を擦り合わせてから口づけをすると嬉しそうに笑ってくれた。
「父上が要らぬ手を回す前に、ティアとの仲は良好だとお伝えしないとな」
「……シオン様。その、ごめんなさい……」
「謝らないで。俺ももっと、はっきりと気持ちを伝えていれば良かった。これからはちゃんと愛してると言うから」
「シオン様……」
ティアの頬が真っ赤に染まる。恥ずかしそうにうなずく彼女が、愛おしくてたまらない。
「えーと。俺もいるんですけどねぇ」
ブリッツは温かな紅茶を淹れ終えると、一つため息をついてからまた庭園から出て行った。
「……この世界に生まれて良かったなぁ。ティアに会えたし」
「シオン様は大げさですよ」
「大げさじゃないよ」
ティアと出会えない世界に転生していた可能性もあるのだし。
頬ずりをすると、ティアがくすくすと笑う。
可愛い、好きだ。一生大事にしよう。
「そろそろ帰してあげないとね。もっと一緒にいたいけれど」
「シオン様……そうですね。残念ですけれど」
「明日は公務を休もうかな。ティア、俺とデートして?」
……たくさんの護衛付きだろうけど。両想いになったのだから、デートくらいはしたいよな。前世でできなかったことだし。
「し、します。デート、したいです」
ティアはそう言うと、ふわりと嬉しそうに笑った。
そしてティアの手を引いて庭園を出ると。少し困った顔のブリッツと、俺たちに土下座をしているピナがいた。
「……えーっと、ピナ嬢?」
「先日のパーティーではティアラ様のご不興の原因となってしまい、申し訳ありませんでした! お願いですので、殺さないでくださいませ!」
「殺さないよ!? というか君、土下座スタイルでの謝罪とか絶対に転生者だろ!」
「ふぇ! シオン王子もですかぁ!?」
鼻水を垂らしながらピナが顔を上げる。あああ、美少女顔が台無しだなぁ。
俺はピナに近づくと、仕方なく鼻水を拭いてやった。
「まぁ、転生云々の話は機会があれば……」
「ふぇい。そうれふね」
ピナと話していると、後ろから服が引っ張られた。
「シオン様。他の子と、あまり仲良くしないで」
甘えるような、拗ねたような可愛い声。振り返ると、そこには頬を膨らませたティアがいた。
「ティア、君以外見えないよ」
囁いて抱きしめると、ティアが嬉しそうに胸に頬を擦り寄せる。
その温かな体温に、俺は心からの幸せを感じた。
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