異世界で姪が勇者になったけれど、俺はのんびり料理屋を開く

夕日(夕日凪)

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パルメダという男2

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「私が拾い物……でございますか」
「そう言っている」

 わけがわからないという顔をしている私に、アリリオ殿下は少し苛立ったように言う。
 この王子、少しばかり忍耐力が足りないらしい。

「……殿下、少しばかりご説明が足りていないかと」

 私たちの様子を見かねたのだろう。従者がこそりとアリリオ殿下に耳打ちをする。
 するとアリリオ殿下は「ふむ」と小さくつぶやいてから、私の目の前へとやってきた。彼は大きな瞳で、じっとこちらを見つめる。
 ──なんだか、居心地が悪いな。
 まっすぐな視線を受けて、私は少し身じろぎする。この家では皆、私と視線を合わせない。だからこんなふうに見つめられることに慣れていないのだ。

「さっきお前は、三属性の魔法を使っていたな?」
「は、はい」
「ふつうの人間が使えるのは二属性までだ。それ以上使えるのは天才だ。そして僕は四属性使える」
「……なるほど」

 殿下自身の自慢を差し挟まれてしまったので、自分がどの程度『すごい』と言われているのがいまいちわからなくなってしまった。
 ……それはともかくとして、アリリオ殿下は私を評価してくださっているのだろう。

「パルメダ。王宮に来て魔道士にならないか?」
「魔道士に、ですか?」

 思ってもみない申し出に、私は虚を衝かれる。
 王宮に勤める魔道士なんて、極一部の人間しかなれないエリート職じゃないか。
 そんな名誉な職に、殿下は私を誘ってくださるのか。
 胸の内に喜びと……黒い靄が湧き上がる。その靄の招待がなにかわからず、私は首を傾げた。

「ああ、パルメダはきっと優れた魔道士になれる。僕が保証する」
「ありがたいお申し出ですが。ですが私は、騎士に──」

 口を衝いて出たのは、そんな往生際の悪い言葉だった。それは完全に無意識なことで、言葉を発した自分自身それに驚く。
 なにが兄の領地経営を手伝うだ、なにが文官になるだ。私は未だに騎士に未練たらたらじゃないか。そのことに、今さらながらに気づかされる。

「ふむ、そうか。カイネ伯爵家の者なら、そのような考えになるのも仕方ないか。しかし惜しいな」

 アリリオ殿下はそう言いながら腕を組み、眉間に皺を寄せつつ「ふぅむ」と小さく唸る。しかししばらくすると『いいことを思いついた』というお顔になった。

「では、魔法騎士になって王宮で働けばいい!」
「魔法騎士、ですか」

 得意顔で聞いたことのない役職を言われ、私は首を傾げた。

「うむ。魔法を使える騎士はいるが、三属性となると王宮にだって存在しない。この国初の魔法騎士の役職をパルメダが拝命するといい」

 なるほど、これはアリリオ殿下が思いつきで考えた役職なのか。なんとも自由なお方だ。

「それだけの才能を埋もれさせるのは惜しいからな。僕と一緒に来てほしい」

 小さな手が、こちらに差し出される。私はその手を、まじまじと見つめてしまった。
 ──この手を取れば。思った形とは違うが、騎士になれるのか。
 そう思いつつ視線を上げれば、意志の強い瞳と視線が交わる。
 きちんと私を見つめ、認めてくれる……主君の瞳だ。
 私は小さな主君の前に、膝をつく。そしてその手を取った。

「……お仕えさせてください。マイロード」
「うむ、よろしく頼む」

 私の承諾を耳にして、アリリオ殿下は嬉しそうに笑う。
 その日から私は、念願の騎士となったのだ。
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